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詩
郵便受けの中で、まだ届いていない手紙がゆっくり熟している
差出人は未来のわたしらしく、消印はなぜか水たまりの形をしている
それを開こうとすると、指先が少しだけ透明になって
中身の言葉が外に逃げていく
逃げた言葉は廊下を曲がり、観葉植物の葉の裏で息を潜める
キッチンでは時計が逆さに吊るされていて
秒針だけが床に落ち、規則正しく跳ね続けている
踏むと小さく「まだだよ」と鳴る
冷蔵庫を開けると、季節がひとつ余っていて
誰のものでもない冬が、棚の奥で静かに凍っている
しかたがないのでコップに水を注ぎ、少しだけ時間を溶かして飲む
味は思い出に似ていて、最後の一口だけやけに重たい




