5 中間考査
5月中旬。気温は温かくなり、半袖姿の生徒が多くみられる時期となった。
高校に入学して最初のテスト期間。生徒それぞれテスト勉強に励む。
「じゃ、来週から中間考査だから、みなさん頑張ってください」
担任の挨拶とともに、帰りのホームルームが終わった。
「なぁ湊斗、同じタイミングで帰れるのもテスト期間くらいだよな!たまには一緒に帰ろうぜー」
「全然良いけど、家帰る方角違ったような」
「200mくらいは一緒じゃーん」
声をかけてくれたのは颯介と、近くの席でテニス部の水岡理玖。この2人は同じ中学校で、高校から話し始めるようになったらしい。
最近は1人で帰ることが多く、むしろ気楽で良いかもなんて思っていたけど、たまにはクラスメイトと帰るのも良い。ちなみに自分の帰る同じ方角の生徒はクラスメイトでほぼいない。街の中心部から少し離れている地域に住んでいるが、他は中心部の生徒や、スクールバスや電車で来ている生徒が多い印象。
陽向と心春の3人で帰るときは事前に連絡することなく、自然と3人になっていた。幼なじみだからタイミングが分かっているのかもしれない。
学校敷地内にある駐輪場に向かい、颯介と理玖の3人で途中まで帰る。
特に校則の話をすることなく、部活やテストの話で盛り上がった。教室でも普段通り話す仲だけど、なぜか新鮮な気持ち。
学校出て約200m先の交差点で別れる。
「じゃな!湊斗」
「うん。また来週ね」
「寂しくて泣くなよ!来週またハグしてやるから」
ここからは1人で帰る。と思いきや、しばらく向かった先にあの2人の姿が。
「久しぶりー」
「待ってたよー。最近元気?」
「お、陽向と心春?!なんでここに?」
「ここに?って帰る方向一緒じゃん。教室にまだいたの知ってから先に向かって待ち伏せしてたんよ」
「嬉しい?」
「そういうことね。そぉ、そんな嬉しいほどでも」
「うそつけ」
パンッと心春に肩を叩かれる。
「よし、帰るか」
久しぶりの幼なじみ3人で帰る。
「2人とも部活してるから、一緒に帰れるのテスト期間くらいになったね」
「うーん。湊斗は部活しないの?今までばりばり運動してたじゃん」
「部活はもう中学まででいいや」
「そういや言ってたもんなー」
「湊斗そういえば、その、最近は大丈夫になったのかなーって。前に話してた髪のこととか……」
「あー、それはね……。もう気にしなくていいよ」
「ほんと?なんか他のクラスメイトのこととかも心配で」
「うん。みんないつも通り授業受けてるよ」
「そっか。最近、あんまり話してなかったらちょっと気になった」
「心春は優しいから、心配しすぎなところもあるんよ。湊斗の元気な姿が一番だから、何かあったらすぐ連絡してね」
「うん。ありがとう」
「そういえば、テストの範囲でさ──」
久しぶりにこんな平和な時間を過ごせている気がする。普段の教室でも、もちろんクラスのみんなは優しいから、休み時間なんかは居心地の良さを感じる。この2人とも廊下で軽く話す機会はある。だけど今日は一段と違う気がする。こんな平和な時間が続けばいいな、なんて考えは甘いだろうか。
テストが終わって、自分のこれまでとは違った姿になっても、こんな平和な時間を過ごせるのかな。
いつもの分かれ道で、陽向と心春の2人と離れる。
「湊斗また来週!」
「テスト頑張ろうねー」
「うん」
「陽向、なかなか触れられない内容だったんだけど気づいているよね」
「もうわかってるよ。何が言いたいのかもわかる」
「私のクラスはもうみんな黒髪の生徒ばかり。だから湊斗もそうなるのかなって怖くて、でも声かけようにもかけられなくて」
「1人、学校辞めた生徒いる」
「え?」
「真面目な人だった。その生徒は髪色が少し茶色で、もともと薄くて細い眉毛の個性あるクラスメイトの1人だった。学校に来なくなる直前だったかな、様子がおかしかったから勇気出して声かけてみたんよ。そしたら、校則に耐えられなくて辞めようかと思っているって。結果的に何もしてあげられなかった」
「もしかして、その人も何か先生に指導されたとか……」
「わからない。だから湊斗は絶対に辞めさせない。テスト明けはしばらく勉強落ち着くと思うし、時間を取って湊斗と直接話そうと思う」
「私もそうする」
〇
週が明けて、5日間の中間考査を終えた。
学校は午前中に終わるが、静かに勉強を続ける生徒や1人で帰宅する生徒がいつもより多くみられる。
クラスは温かい空気のままだがそのクラスメイトでさえ気軽に話せる気持ちでもなく、この週はとにかく1人で過ごすように意識した。
テスト中はなんとか問題に集中した。
テストが終わった金曜日、髪を黒色に染めた。




