3 風紀検査
4月下旬。1限目に各教室ごと風紀検査が行われる。
担任ではない教師が生徒1人ひとり見て回るのだが、自分のクラスでは運の悪いことに、あの生徒指導担当の古賀が対応する。
自分の番が回ってきた。目の前に古賀。
「次は田上か。うーんやっぱりねー。髪型も守れてないね」
「どういうことですか。地毛ですし、髪型もだめなんですか。校則に違反しないよう切ってますよ?」
「ちょっといろいろね、理由があるんよねぇ。じゃ田上は来週再検査ね」
「え」
髪色について何か言われるだろうと覚悟していたが、髪型まで言われるとは想定外だった。校則に違反しないような短髪なのに、何がだめなのだろうか。
風紀検査が終わって休み時間中、右斜め前の席で野球部の丸颯介に声をかけられる。
「湊斗も引っかかったんかー。俺は服装でだめだったよー」
「そうなんよー。担任に事情伝えてもらってるはずなのに何が校則違反なんかなぁ」
「湊斗は何も知らないん?」
「え、なにが?」
「他の先輩方とかさ、なんか黒髪以外の生徒は厳しくされてるらしい。頭髪のことで指導受けて病んで学校休んだり、黒染め強要させられたりとかそういう生徒いるって。同じ野球部の友だちからさっき知ったばかり」
「黒染め……?」
「そうそう。古賀先生が今の生徒指導の主任になって一気に厳しくなってるらしい。湊斗もおかしく思わない?先輩方みんな黒髪ばっかりだなーって。野球部の先輩に詳しく聞こうとしたけど、なんか事情で言えないらしくてねー」
「え、それが本当なら自分もいずれは……」
「わからんよー。俺も友だちとしてできる限りのことはしたいけど、特待で入ってきてるから動きづらいしなぁ」
自分は特に人脈が広いわけではないので話せる生徒は同じクラスメイトくらいだったけど、そんな情報はまだ知らなかった。
古賀が生徒指導の主任になってより一層厳しくなった?黒染め強要?颯介の言う通り実際に起きているのであれば、いずれ自分のもとに厳しく指導されるに違いない。すでに授業始まった早々、古賀に頭髪のことで目をつけられている。
高校生活始まってまだ1か月も経ってないのに、自分はどうなるのか──。
学校が終わって、いつもの3人で帰宅する。
「あー、やっと金曜日終わって土日お休み!今週もお疲れだね」
「おー」
「うん」
「湊斗元気ないよー?」
「元気ないよもう。陽向と心春もなんか学校に対して違和感ない?」
「違和感?」
「今日あった風紀検査のこととか」
「あぁ、風紀検査ね。特に自分は問題なかったけど、何人かは服装とかで引っかかった人いたね」
「私は前髪ぎりぎりだねって言われたけど、それ以外は特に、ないかな。湊斗は、もしかして髪のことでなにか問題あった……ってことだよね。その表情みれば」
「髪のこともそうだけど……。いや、風紀検査の担当が古賀だったから何かあるかなって不安が大きくて、そんなところ」
「湊斗、もういろいろと頭抱えてるってわかるよ。ここで吐き出そう」
「そういえば湊斗、検査は大丈夫だったの?」
「いやいや全然大丈夫。担任通して事情は知ってもらってるから」
「ほんと?」
「うん。今日はもう早めに帰るね」
田上は一足先に自宅へと帰っていく。
「え、別に急がなくてもいつもの分かれ道で」
「あ、いっそいで駆け抜けちゃった……」
「陽向は何か詳しいこと知ってる?さっきのタイミングで湊斗には伝えづらかったけど、私のクラスにも何人か茶髪の子やくせ毛のある子がいてね。地毛証明書を提出してるんだけど生徒指導からいろいろ言われてるらしくて。実はすでに学校休んでる生徒もいる」
「もちろん自分のクラスでもすでにあってるよ。でも湊斗には言えない。変に刺激するかもしれないし」
「やっぱり陽向のところもだったんだ。でも親は学校側になんて言ってるんだろうね。だんだん怖くなってきた」
「それは心春以上に湊斗も感じてると思うよ。ただ、昔から知ってる湊斗だからこそ気を遣ってしまう部分もある。心春もいろいろ考えてくれてると思うけど、自分もどう対応するべきか悩むところよ」
「そうだよね……」
しばらく経って陽向と心春もそれぞれ自宅へと自転車を走らせる。




