2 帰り道
私立の光学園高等学校の生徒数は約900名。
市内の中心部に位置する高校のひとつで、電車、バス、自転車や徒歩など登校手段は生徒それぞれ。
3人とも同じ総合学科だが、クラスは別々になる。
週明けから授業が始まった。
火曜日の3限目、地理の授業を終えた。
田上は生徒指導の担当でもある古賀先生に声をかけられ、廊下に呼び出された。
「田上さぁ、ちょっと思ったんだけどなぁんか髪茶色すぎるよねぇ」
「地毛です。昨日の地毛証明書に関する説明会も出席してます」
「いやぁ出席してるからいいとかではなくて。なんか染めてない?」
「え、染めてません。地毛ですよ。担任も把握してますし」
「まぁあとでいいや。とりあえず担任に確認しておくから」
髪を染めているんじゃないかと怪しまれた。
嫌な予感がする。
正直、髪色に関しては地毛とはいえ、周りの目線が気にならないというわけでもない。
それともうひとつ気になることが、この高校で髪が黒色以外の生徒を男女問わずあまり見かけないということ。入学式で同学年の生徒は少なからず見かけたが、2、3年生では見かけない。まだ授業始まって数日で自分の気にしすぎかもしれない。
ひとまず帰りのホームルーム後、担任の浦野に確認してみることにする。
「浦野先生、頭髪の件で少しお時間いただきたいんですけど……」
「あー、その件ね。それは問題ないよ。生徒指導の担当に伝えてるから気にしなくていいよ」
「あ、そうだったんですね。わかりました」
担任が問題ないと言ってるから大丈夫だろう。自分の考えすぎかもしれない。今日はもう帰るだけで、ゆっくりしよう。
学校が終わり、下校時はいつもの3人で帰る。
中学のときまでは徒歩だったけど、高校では自転車通学。高校から自分たちの住む地域までは自転車で約20分ほど。
安心できる幼なじみとの帰り道。だけど頭の中は頭髪のことばかりで、2人に話してみることにした。
「あの、今日の授業後に気になることがあって」
「うん?なになにー?恋愛相談か!?」
「ほら心春。湊斗どうしたん?さっきから元気ないようにもみえるけど」
「地理の授業が終わったあと、生徒指導でもある古賀先生に頭髪のことで声かけられてね。『染めてない?』って言われたんよ」
「え?湊斗は地毛だよ」
「うん。地毛であることも、地毛証明書の説明会受けて証明書申請のことも伝えたんよ。そしたら担任に確認するといって今日は終わったけど、嫌な予感するなーと思ってね」
「そうなん?でも担任も事情は知ってるでしょ?」
「もちろん知ってる」
「だったら問題ないと思えるけどなー。自分のクラスも一度あの先生の授業受けたけど、今のところ変わったことはないかな」
「私も地理はその先生で授業受けたけど、特に……。でも湊斗の気にしすぎなところもあるんじゃない?」
「……そうかな」
「ま、自分たちまだ入学式終わってそんなに日は経ってないし、不安抱えてしまうのも仕方ないよ。ひとまずその件は担任が把握して対処してるんだったら問題ないと思うよ」
「そうよね。自分の考えすぎか」
自分の考えすぎであってほしい──、そう心から願った。




