10 一緒に
20×7年4月、湊斗は通信制高校に転入学した。
陽向と心春は引き続き、光学園高校に在籍する。
湊斗は転入学して以降も勉学に励むだけでなく、SNSで校則について発信していた。この情報が世間に広まる頃、光学園高校ではない別の高校での対応を問題視するニュースも広まっていた。それは、髪が茶色の生徒に対して教師が黒染めするよう強要し、結果的に裁判まで発展したニュース。テレビでも多く取り上げられ、広い世代で賛否両論が相次いだ。
光学園高校はこのまま安泰ではなかった。
湊斗と同じ世代が卒業する次の年度以降、国際系に特化した学科が新設される予定なのだが、多様性を重んじていくうえで校則は現状のままなのか保護者の声が上がる。また、これまで学校の校則によって精神的被害を受けた生徒や元生徒、湊斗の情報、陽向がこれまで生徒指導との会話で記録していた内容などが徐々に公となり、この高校が世間に注目を浴びるのはまだ少し先の話。湊斗や陽向、心春の行動は、決して無駄ではなかった。
〇
高校生らしい姿とはなんなのか。
思い浮かべる姿は人それぞれ違うだろう。
髪型髪色にルールを厳しくしたい意見があれば、自由でもいいのではという意見もある。
全日制高校のように制服を着て毎日のように学校へ通うのが合う生徒もいれば、通信制高校のように私服で自分に合ったスケジュールで動くのが良いという生徒もいるだろう。
世代や人によって常識や考えはさまざま。時代が進むにつれて、つい最近まで当たり前だったことがそうではなくなっていることが出てくるだろう。
個性がより尊重される世の中であり続けてほしいと願う。
〇
20×9年3月、湊斗は通信制高校で卒業を迎えた。
通信制高校のキャンパスは自宅のある市内の駅から電車で約40分ほどの距離にある。地元の中心部よりさらにビルが立ち並ぶ地域。
卒業式の会場となったのはキャンパスの入っている建物からバスで20分ほど進んだ先にある体育館。
式が終わって、湊斗は高校の最寄り駅まで向かう。
そこには数日前に卒業式を終えた陽向と心春の姿があった。
「お、久しぶり。本当に来てくれたんだね」
「そりゃもちろん。卒業おめでとう」
「卒業おめでとー」
「ありがとう。2人とも卒業おめでとう」
事前に連絡していたとはいえ、わざわざ駅まで迎えに来てくれた幼なじみ2人の姿をみて湊斗は終始感動していた。
「高校まで同じとはいかなかったけど、2人のおかげもあって無事高校卒業できたよ」
「そんなもういいって。ここにいる時点で3人一緒に卒業したもんよ!ね、心春」
「っ……」
「心春?」
「心春、もしかして、泣いてる?」
「うるさい!」
「あ……、心春の泣いてる姿初めて見た」
「うるさい!」
心春は初めて湊斗の目の前で涙を流した。
3人で同じ高校を卒業だなんて、それは数年前までの軽い約束。今はそんなのどうでもいい。3人とも無事に高校を卒業したことがなにより。この日を迎えられることが、3人にとっての大きな目標だった。
人生においてひとつの通過点に過ぎないかもしれないが、3人にとっては大きな通過点となった。




