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5-1.骨折とかダサ過ぎワロタ

 


「冴桐君、骨折して入院だって!」


 また翌朝。

 教室に着くなりなんか周りが騒がしいなぁと思ったらこれだった。


(ざwまwぁw)


 アイツ、骨折したってw

 バチでも当たったんじゃないの?m9(^Д^)プギャーwww


 こんな事ってある?因果応報、まさにそれみたいな。


 せっかくだし、学校終わったら見舞いに行ってやろうかな?

 どんな顔してるか見るの、ちょっと楽しみだし。




「先生!私、今からお見舞いに行くので早退します!」

「私も!」「私も早退で!」「早退します!」


 教室内で女子が次々と早退宣言していく。

 なんか聞き覚えのある声だと思って顔を見たら、ファンクラブの子達だった。いつも冴桐の周りでワサワサしてる、あの方々。


「駄目です!こら、席に戻りなさい!」


 先生の声。思った通りのリアクションだった。


「そういうのは授業が終わってから行きなさい!」

「今すぐ行かなきゃいけないんです!」

「授業の方が大事でしょう!」

「冴桐君の方が大事に決まってるじゃないですか!」


 授業の方が大事に決まってるじゃないですか。

 学費払ってる訳だし。


「命より大事なんです!生きるための糧なんです!」

「……」


 先生、ドン引き過ぎて何も言えず。

 いや、まともな人ならそうなるよそりゃ。


「という訳で、帰ります!さようなら!」

「ああ、うん……」


(流石ガチ勢、本気度が違うぜ……!)


 先生すら振り切って突き進んでいくその勢い……その意志の強さだけは見習いたい。




 とはいえ、そういった変な出来事はあったけど……それ以外は奴がいないおかげで平穏そのもの。

 放課後まで一切なんの事件もなく過ぎていった。







「……よし、ここか」


 クラスの人に教えてもらい、奴の病室へ。


 わざと遅く教室を出たから、私が病室に着くまでに何人もの女子とすれ違った。

 その中には見たことある顔ぶれもいて、見舞いに行ったクラスメイト達も終わって帰ってきてるんだろう。


 別にそれがどうって訳じゃないけど、ゾロゾロ次から次へと歩いてきてくれたおかげで道に迷わずに済んだ。




「お邪魔します……」


 個室の番号を確認し、扉を開ける。


「……」


 返事はなかった。リアクションとかも一切なし。


(え、無視?)


 まるで私がいないかのような、ノーリアクション。


 ベッドの方を見ると、石像が項垂れていた。

 肩は動いてるから呼吸はしてるっぽいけど、全然動かない。


 下半身は布団の中、布団を捲り上半身だけ起こした状態でじっとしている……


(ふ〜ん。でも、軽傷かぁ)


 もっとこう、包帯ぐるぐる巻きで長い管に繋がれてて……みたいな状況を想像して来たんだけど、実際ただ布団で寝てるだけだった。

 見る感じ結構軽そう。チッ。


(おお、山盛り……)


 ベット脇のサイドテーブルには案の定、溢れ落ちそうなくらいの大量のフルーツと花束がみっちりと。




「みんな、もう帰っちゃったの?」

「……」


 無視すんなってば。


「お〜い、返事」

「……ああ、帰ったよ」

「へ〜」

「……」

「……」

「なにしょっぱい顔してんのさ?」

「分かるかい?」

「分かるもなにも」


 露骨にしょげてるんだもん。


 その背後に、ギャグ漫画とかでよく見るあのウネウネしたトーンが見えてくるくらいに。

 ズーン……とかズモモモモ……みたいな効果音付きで。




「怪我、したんだって?」

「ああ……家の階段から落ちてしまって……」


 m9(^Д^)


「足の骨に少し……ヒビが入ってしまった……」

「手術とかしたの?」

「いや、親に言われて念のため入院してるってだけで……別に何かした訳じゃない」

「そっか」


 その程度かぁ、なんだ残念。


(おっと、本音が)


 しかし、それにしたってヒビくらいで入院って。結構過保護なタイプの親なのね。


 いや、むしろそういう家なのか……紙で指切っただけで大騒ぎするとかそういう系かもしれない。




「ふ〜ん。まぁ、その程度で済んでよかったね」

「そうだな。折れなかっただけまだマシかな」

「でも、どうしたの?」

「いや……昨日の夜、あまり寝れなくて寝不足で……」


 ああ、昨日のあれ?

 なんかびっくりしてたやつ、まだ気にしてたの?


「昨日の……その、君の発言が……」

「発言が?」


 次の瞬間、ブンッ!と効果音がつきそうなほど思いっきり向こうを向いた。なんだなんだ。


「な……なんでもないっ!」


 そしてこの謎の逆ギレである。全くもって意味不明。


「君に教える義理はない!」

「ああ、うん……」

「それより!」


 キレた勢いのまま、話を続ける冴桐。


「大変な事になった……!僕は……とうとう不完全になってしまった……!」

「は?」


 何言ってんだコイツ。


「これまで完全無欠を貫いてきたというのに、ここでまさか怪我するなんて……!」

「完全、無欠……?」

「この僕に、欠点など……!許せるはずがない!」


 久々の、んぼぉく……だからそれキツいんだって。


 あとこっち見んな。わざわざ顔あげなくていいから。


「欠点って……そんな、言うほど?」

「それじゃあ、まるで……僕が弱い人間みたいじゃないか!」

「はぁ???」




 え、なん、何……?


 僕が弱いみたいじゃないかって……そんなキレられても……


 元々そんな屈強なタイプでもなんでもないし、どちらかというと細い方だし……少なくとも強くはない……


 ってか、そもそもそんな事気にしてたっけコイツ?

 どちらかというといつも自信満々で、むしろ『僕は生まれた時から最強なんだ』くらいに勝手に自惚れてそうなくらいの……自信過剰な感じだったような……


(あ……もしかして、そういう事?)


 はは〜ん。さては……入院して弱気になってるな?

 それなら説明がつく。


 入院っていう非日常の世界、それに加えて足の痛み(どれくらい痛いんだか知らないけど)……そのせいで精神的に弱ってるんだ。


 あんな常に余裕綽々な奴でもちゃんと(?)不安になるんだ、へぇ〜。




「弱い人間になってしまう……この僕が……」


 まだ言ってるよこの人。


「いや、そりゃ誰だって怪我くらいするでしょ普通」

「そうだけど……」

「でしょ?」

「でも、そうやってファンの子達からは慰めの言葉をもらったけど……あんまり嬉しくなくて」

「……」

「むしろ、なんか腹が立って」

「え?心配してくれてんのに?」

「うん……僕自身もよく分からない。でも、なんだか不完全な僕を責めてるように聞こえて……」

「……」

「『誰だって怪我するし、どんな冴桐君でも好きだから』なんて言われても、なんか妙にイライラして……」


 相手の子は怪我してても好き、要は常に大好きって言いたかったんだろうけど……それが今のいじけモードの奴には悪い意味で聞こえてしまったと。


 悪い意味も何も、今の奴には何言っても同じ結果だろうけど。


『お腹すいた!』なんて言ってもきっと『いいなぁ君は。僕は入院してるから、家のご飯は食べられないんだ(メソメソ)』ってくるだろうし……

『今日は良い天気!』って言ったら今度は『僕は外に出られないけどな(メソメソメソ)』みたいな。


(めんどくさ……)


 まぁ、ともかく。状況はなんとなく分かった。

 変なところだけやたらナイーブなんだな、コイツ。


 あとその根底に当たり前のように存在する、自分大好きの気持ちもなんか……うん。

 なんていうか、ブレないね。良くも悪くも。



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