8-2.割れ鍋に綴じ蓋
うん、決まった。というか、今決めた。
言おう、あの言葉を。
「あの、私……!」「あ、そうそう」
被っちゃった。
「あ……先、いいよ」
「いいのか?」
「い、いいよ……」
(わ〜ん、私の馬鹿!)
私の悪い癖が出てしまった。
話が被った時にすぐ譲る、悪い癖。
本当は流れ的にすぐ答えるのがベストだったんだろうけど、つい譲ってしまった。
「そうそう、言い忘れてたんだけど……この先僕と付き合うつもりなら、もう少し愛想良くする事だね」
「愛想?」
「いずれ僕は会社を継ぐ……だから、君にはうまく立ち回ってもらわないと」
「え?なにそれ?」
「気の利いた事とかおもてなしとか……そういうのができないと、色々困るからね」
(はぁ〜???)
思わずぽか〜ん。
いやいやいや。
何言ってるか、全然分かんないんですけど。
「そういうのも一応仕事の一部だからさ、しっかりやってくれよ?」
「は?なんの事……?」
「その間抜けヅラ、やめてくれないか。品がない……」
イラッ⭐︎
(アンタが変な事言い出すからでしょ〜が!)
これまでの綺麗な流れが、パーになった瞬間だった。
「惚けないでくれ、この先と言ったら……結婚に決まってるじゃないか」
結婚……!!!???
「はぁ!?私が、アンタと……!?」
「ああ」
「結婚……!?」
「なんだ?違ったかい?」
「冗談じゃない!ふざけんな、断る!」
「おや?『この先一緒』ってそういう意味だと僕は取ったけど」
「無理よ!こんなナルシストボンボン野郎と同じ空間で過ごすなんて!」
「は?」
彼の顔がまた赤く染まっていく。
おそらくさっきとは違う意味で。
「今……君、なんて言った?」
「『ナルシストボンボン勘違い俺様上から目線野郎』!」
おまけにちょっと色々付け足しといた。
「あ〜無理無理!毎日アンタの顔見なきゃいけないとか絶対無理!」
「お、お前……!」
「一日すら無理!いや、一時間もキツい!なんなら一分も!」
「言わせてもらうけど!僕だって、それは同じだよ!」
「アンタの方がひどいでしょ〜が!」
「君だって!口は悪いしガサツだし、三歩下がってどころか前にしゃしゃり出てくる!僕の方が無理だよ!」
「じゃあなんで結婚とか言ったのよ!?」
「君が言ったんだろう!?」
「言ってない!そっちの勘違い!」
「言い出したのは君じゃないか!」
あ〜!腹立ってきた!
「あ〜もう!分かった!とにかく、付き合えばいいんでしょ!好きじゃないけど、付き合ってあげる!」
「ああそうかい!」
「せっかくだから、次の彼氏見つかるまでの繋ぎにしてあげる!ありがたく思ってよね!」
「僕だって!君は姫崎さんと付き合うための練習台なんだからな!」
そう言い切った後、一瞬あっしまった!という顔をしたけど……私と目が合った途端何かを察したらしく、また元の腹立つ表情に戻っていった。
(それはそれでムカつく)
「いくら優しい姫崎さんだって、流石にこんな男と付き合う趣味はないと思うけど!」
「そんなこと言って……君の方こそ僕の魅力に気づいて、ベタ惚れしてしまうかもしれないよ!」
「ないない!絶対そんなのないから!」
(……!)
おずおずと、奴の方から手が伸びてきた。
言葉と行動があまりにチグハグで……何が起きてるのか判断するのに時間かかっちゃったけど……
(え、これって……)
繋げって?このタイミングで?
(ムードもへったくれもない……)
仕方ない、繋いであげよう。そんなに私の事好きだと言うなら。
「い……一応!言わせてもらうけどな!」
うわ、会話まだ続いてた。
「何よ、まだなんか!?」
「これでも僕、告白された回数は学校一だからな!」
「それがどうしたっていうのよ!」
「学校一だよ、学校一!学年一じゃない……それがどう言う意味か、思い知るといいさ!」
急にこれまた何の脈絡もなく、捨て台詞みたいな事言い出した。
(これ、もしや……照れてんな?)
現在進行形で、繋がれた手がめちゃくちゃ熱い。
ホッカイロでも間に挟んでるのかってくらい。
熱過ぎてなんだか手がじんわり蒸し焼きにされてる気分……
(ん?蒸し焼き……?)
わ、手汗だ……!汗かいてる!
なんか湿り気を感じると思ったら、汗……!
え……私、こんな汗かくタイプだったっけ?
いや……やっぱり違うな。熱いけど、私が汗かいてる感じはしない。
(って事は、これ……もしかして……)
彼の方も見るも、顔を逸らされてしまった。
(……)
繋いだ手も、これまた微妙にズレてんだよな。
恋人繋ぎとかじゃなくて普通の繋ぎ方なんだけど、ちょっとだけ位置がズレてて落ち着かない感じ。
普通ならすぐにささっと直して終わりなんだろうけど、今の奴にその余裕があるとは思えない……
というか、ズレてる事自体も多分これ気づいてないな……
「……」
「……」
お互い黙ると、なんだか気まずい空気に。
(な、なんか……!なんか言わなきゃ……!)
「そ、そこまで言うなら!」
「なんだよ!」
「そこまで言うなら!アンタがもう一度、本気で告白したくなるくらいの女になってやろうじゃないの!」
「いいよ、いくらでも待っててあげよう!まぁその日が来るとは思えないけど!」
繋いだ手はまだそのまま。言葉と行動がまるで合ってない。
「……」
「……」
熱いし手汗すごいけど、離す気はないらしい。
「と……とりあえず、だ!」
「なによ今度は!」
「こんなところで立ち話してないで、カフェでも寄ろうじゃないか!話の続きはそこでする!」
「望むところよ!」
「「ふん!」」
そのまま鼻息荒くカフェに突撃していく私達であった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
え?この後カフェでなんの話したかって?
ううん、あの後すぐ本格的な喧嘩になって……頼んだコーヒーをガーッと一気飲みして、サッサと店出ちゃった。
お互い、顔も見たくない!って。
せっかく恋人同士なのに?
いや、まだ私認めたつもりないし。向こうも多分そう。
そのくせ別れ際に『明日も放課後暇だろ?』とか言って……どうせ一緒に帰ろうって事でしょ?
(ほんっと、馬鹿な奴……)
へ!?笑ってない!笑ってないってば!
別に、なんていうか馬鹿な奴だなって思っただけで……!
ちょっとニヤってしただけで、別に嬉しくなんか……!
も、もう!アイツのせいで調子が狂う……!
ここで終わり!はい、以上!
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
誰がって訳じゃないけど、一昔前とかによくいたキザ系男子成分って、たまに摂取したくなるよね。
あと、ケンカップル可愛いよね。ね?(知るか)




