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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

病嬌

「またお前か」


うんざりした様な顔で君は僕を視下ろすが、その実、君の足は僕に向けて歩き始めている

居城には、相変わらず生きているものの気配が無い


今日に関しては、僕のせいなのだが



君の欲求の大きさを様々想像する

表現出来ない程の昂揚が頭蓋の内側に撒き散らされ、気が変になりそうだった



「でも」


「欲しがってますよね」


自分よりも更に幼そうな君に、僕が丁寧な言葉遣いで話すのには理由が有る


僕は視たままの通りの「ただの子供」に過ぎないが、君は『千年を生きる』とされる、吸血種の直系だ

実際には、僕の親より永く生きているらしかった



「お前の血は好まない」 


「───あんなに狂おしく求めていたのに、ですか?」


君は視線を僕から逸らしたが、僕は君の眼の向かう先に回り込むと、ギラついた眼で上眼遣いに、君の瞳を覗き込む

君は一瞬だけ悔しげな顔を浮かべると、僕を冷たい床に押し倒した



「無論、望み通りにする事も出来るぞ」


躰重を乗せて、君が僕の首を両手で絞める

僕は唾液を零しながらえへへと嗤いを浮かべたが、喋る事が出来ないのだけは面倒だった



喉が圧迫され過ぎて眼が視えなくなり始めた頃、君が肩で息をしながら手を離した


僕は()せながら君を視上げる

君は熱病の様に額に汗を浮かべながら、つらそうな呼吸を繰り返していた



「早く飲まないと」


「死んじゃいますよ………?」



知っている


彼は乙女の血しか飲まないという誓いを立て、永い時をそうやって生きてきたのだ


しかし、僕は彼に牙を立てられた幾度かの夜が忘れられなかった


感染とか眷属化とか、そういうものでは無い

彼の鋭い歯が肩の皮膚を破る瞬間の悦びに、僕は取り憑かれてしまったのだ



君はそれでも僕を拒むのか、僕から眼を逸らそうとする


痺れを切らした僕はポケットから出したナイフで自分の腕を深く突き刺し抉ると、君の顔の前に差し出した



「………いい匂いだと思いませんか?」


君が固く眼を閉じて、「やめろ」と弱々しく呟く


こんなに強情だとは思わなかった

僕は最後の手段として、『本当の事』を話す事にした



「その弱った躰でも、まだ女の子を捕まえれば甦れると思ってるんですね」


「…………無理ですよ?」


君が、視開いた眼で僕を視る



「実は僕、大人たちにこの城の場所を教えちゃって……」


「………そしたら大人たちが、城への道を壊して封鎖しちゃったんですよね」


  

「もう、この城には未来永劫誰も入る事も、そして出る事も出来ないんですよ」



どさり、と音がした

君が力無く膝を突く音だった


顔を両手で覆っている

声を上げずに泣き始めてしまったようだ


最後の一押しが必要だと僕は感じた



「ここまで来る途中、何人か女の子を視ました」


「多分、封鎖を抜けてまで血を与えたかったんだと思います」



「だから全部殺して、谷に捨てておきましたよ」



崩折れた君の肩を抱いて、僕は耳元で囁いた

「僕が居れば、あんなの要らないですからね」




事ここに至っても、君は泣きながら抵抗した


でも数日後には諦めて、僕の血だけを飲んで生きる事を宣誓してくれた

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