八章 エピローグ
「刀至くん……! 刀至くん……!」
黒い帯が刀至くんを包み込んでいく。
その様子を私は見ていることしかできなかった。
対神封印術式。いつの間にか刀至くんの指に嵌められていた指輪から聞こえた言葉。
そこから推測するに、刀至くんに宿った神を封じるための術式。決して悪いものではない……はずだ。
そう信じて待つしかなかった。
「……」
黒い繭のようになってしまった刀至くんから目を離さず、待つこと数分。
繭が一度大きく胎動し、黒い帯が解けていく。
すると同時に太陽を覆っていた月が消失した。
空に青が戻る。
帯の中から現れた刀至くんはそのまま地面に倒れ込んだ。
私は急いで抱き止め、声をかける。
「刀至くん! 聞こえていますか!? 刀至くん!」
しかし何度呼びかけても反応がない。
「……ッ!」
嫌な予感がして、私は刀至くんの胸に耳を当てた。
……鼓動が……ない!
完全に鼓動が止まっていた。
サァッと血の気が引いていく。胸が締め付けられるように苦しい。
溢れ出る涙が止まらない。
……ダメ! また……こんな……!
知らない記憶と今の状況が重なる。きっとこれが昨日、刀至くんが言っていた過去の出来事なのだとなんとなくわかった。
……だけどこのままでは!
再び同じ結末を辿ってしまう。
それだけはダメだ。そうなったら何のために――。
……あれ? 私は何を……?
思い出せない。何か重要なことを掴みかけたような気がするが、煙のように消えてしまった。
……いえ、今はそんなことどうでもいい……です。
私は魔術式を記述する。
とにかく刀至くんを死なせないために行動しなければならない。
だけど途中で激しい頭痛が襲ってきた。
当然だ。私の魔力はとうに魔力が枯渇している。
魔術式が記述できない。
……そうだ! 心臓マッサージ!
普段魔術に頼っているせいで初歩的なことを忘れていた。心臓マッサージと人工呼吸。一般的な心肺蘇生法だ。
刀至くんを仰向けに寝かせ、すぐに心臓マッサージを開始する。
胸に手を当て、リズム良く心臓を圧迫。
しかし鼓動は依然として止まったままだ。変化はない。
「……ごめんなさい刀至くん!」
こんな形でしたくなかった。だけどそんなことを言っている場合ではない。
頭部の角度を調整し、気道を確保。私は人工呼吸を――。
その瞬間、刀至くんの影が蠢いた。そして地面に広がっていく。
「なに……!?」
影が盛り上がり、形を成していく。
そうして姿を現したのは濡羽色のローブを纏った一人の女性だった。その手には身の丈を超える杖が握られている。
「アラトニスさ……ま?」
「とんでもない気配を感じて来てみれば……。真白。状況は?」
「ぁ……。はい。二本角の鬼人が出現しました。刀至くんが討伐しましたが、三人が致命傷を負っています。その後、【奇術師】が……」
神城くんと東條くんの二人には小夜さんが回復魔術を掛け続けている。しかし状況は芳しくない。
先ほどよりも明らかに顔色が悪くなっている。このままでは時間の問題だ。
「回復魔術はあまり得意ではないんだがな。……ともあれまずは応急処置からか」
倒れている三人を一瞥し、アラトニス様が杖を一振り。すると即座に立体魔術式が三つ現れ、発光して消えた。
神城くんと東條くんの顔色が目に見えて良くなる。
……すごい。あんな簡単に……。
立体魔術式とは複数の魔術式を記述し、組み合わせる超高等技術だ。一級魔術師でも使える者はごく僅か。
特級に近い者にしか扱えないとされている。
なにせ複数の魔術式を並行して記述するだけでも至難の業なのだ。その上、立体魔術式は並行記述した魔術式を維持、適切に組み合わせる必要がある。
もはや神業だ。アラトニス様はそんな神業を同時に三つもやってのけた。
一つの立体魔術式ですら失敗してしまった私には到底手の届かない領域だ。
「ひとまずはこれで良し。けれど【奇術師】……。ヒュー・デル・アガルトか。ということは結界だな。まさか私が気付けないほど、とはな」
アラトニス様が周囲を見回す。すると、ある一点で視線が止まった。
「……待て。どうして御霊島に星の墓所がある?」
視線の先、少し遠く。そこには柱に囲まれ、円柱状の構造物が聳え立っていた。
……あれは。
おそらく刀至くんの力で御霊島が更地になった結果、遺跡の螺旋階段部分が浮き上がった物だ。
「……やってくれましたね、始祖様。ということはあちらははったりか。となると……いや。今はそれどころではないな」
アラトニス様が私たちを順に見た。
神城くんと東條くんも顔色は良くなったが、依然として傷はひどい。
そして刀至くんも目を瞑ったままだ。
「余裕はなさそうだな。……転移する」
アラトニス様が杖を地面に突き立てる。
すると影が広がり、私たちを呑み込んだ。
そして視界が晴れた時には、すでに別の場所にいた。
……これは、転移魔術?
超高難易度の魔術だ。それこそ立体魔術式なんて比べ物にならないほどの。
「楓はいるか!? 緊急だ!」
アラトニス様が声を張り上げる。
転移した先は近代的なビルの中。
日本魔術協会。その一階ロビーだ。
小さい頃、父に会いにくるために何度か来たことがある。
そこでは魔術協会の軍服を纏った魔術師たちが忙しなく行き来していた。
それがアラトニス様の一声でより慌ただしくなる。
「誰か楓様のいる場所を知っているか!?」
「たしか今日は研究室だった気が――。あっ!」
「ここにいますよ。……ひさしぶり真白ちゃん」
中央階段から現れたのは長身の女性だった。
濡羽色の軍服をロングコートに改造している。そしてその肩には階級章が付いていない。
それが許されるのは魔術師のトップとして君臨する特級魔術師のみ。
「楓さん……!」
神宮寺楓。
特級魔術師、第十席。
【不沈】の二つ名を冠する日本最高峰の魔術師。その一人だ。
そしてお父様、【剣星】星宮修司の弟子でもある。
「お願いします! 楓さん! みんなを……!」
「わ、わたしからもおねがいします!」
小夜さんと一緒に頭を下げる。
二つ名から勘違いされがちだが、楓さんは自他共に認める回復魔術の天才だ。
どんな負傷でも死んでいなければ治せると言われているほどに。
今ここに楓さんがいたことは幸運中の幸運だった。
「とりあえず診せてもらうわね……」
長いポニーテールを揺らしながら刀至くんの元へ向かう。すると一目診るなり、顔を顰めた。
「ごめん。真白ちゃん」
楓さんがそう断ってからアラトニス様に向き直る。
「……アラトニス様。これは……なんですか? 私でも流石に治せませんよ。回復魔術の範疇ではありません」
「ぇ……。そんな……」
小さく声が漏れる。私は自分の耳を疑った。
……楓さんでも治せない……?
私の知る限り、楓さんは最高の回復魔術師だ。
その腕は他国を合わせても一位を争うと言われている。
回復魔術だけで言えば世界最高峰。
そんな楓さんが治せないのなら、他の誰にも治せない。
あんまりな真実に胸が締め付けられる。溢れる涙が止められなかった。
「やはりか。薄々そんな気はしていた」
「あの……刀至くんはどうなるんですか?」
「ああ。心配しなくていい。なにもこのまま目を覚さないってわけじゃない」
「……え? でも……心臓が止まっているんです……よ?」
「あーっと。……私からは詳しく言えないんだ。わるいな」
その反応から私はアラトニス様が刀至くんの事情を知っていると確信した。
「半神のことですか? それなら刀至くんから聞いています」
私の言葉にアラトニス様は大きく目を見開いた。
「驚いたな。まさか、話したのか?」
「はい。おそらく、みんなにも話すつもりです」
「……なるほどな。では……誰か! この二人を運んでくれ!」
アラトニスが呼びかけると、タンカーを持った数人の魔術師が駆け寄ってくる。
「……ぇ。でも治療は……二人とも傷がひどくて……」
「もう治しているよ」
小夜さんの言葉に楓さんはそう返した。
見れば神城くんも東條くんも失ったはずの部位が再生している。
いつ魔術を使ったのかすらわからなかった。
小夜さんもまんまると目を見開いている。
「……ぁ。すみません! ありがとうございます!」
小夜さんが深々と頭を下げた。私も続いて頭を下げる。
「ありがとうございます。楓さん」
「いえいえ。これぐらいはお安い御用だよ。確か小夜ちゃんだったね? キミは二人に付いていてあげて。きっとその方がいい」
「わ、わかりました!」
再び深くお辞儀をして、小夜さんは運ばれていく二人を追いかけて行った。
「アラトニス様。ちゃんと説明してくれますよね?」
そして楓さんが剣呑さすら感じさせる瞳でアラトニス様を見る。およそ上司に向ける目ではないが、楓さんは昔からこういう人だ。
言うべきことは言う。たとえ相手が誰であろうと。
「ああ。だけどその前に」
アラトニス様が杖で床を叩く。するとまたもや影が蠢き、景色が変わった。
窓一つない閉じた部屋。置かれているのは一つの円卓と十二の椅子。
不思議なのは入り口がどこにもないと言うことだ。
「ここを使うとは。アラトニス様。これは特級案件ですか?」
「そうだ。この件を知るのは私と修司しかいない」
「あの……ここは?」
「【逆説領域】。始祖様の力で作り出した存在しない部屋だ」
「存在しない部屋……ですか?」
「始祖様の力は私たち特級でも理解が及ばないから考えるだけ無駄だよ。真白ちゃん」
「楓の言う通りだ。同じことができるのは【戦乙女】と【機械翁】だけだろうな」
「――領域に至っては爺に分があるがな。オレのはアイツの真似事にすぎん」
唐突に、第三者の声がした。
その瞬間、アラトニス様と楓さんが膝を突く。
「お久しぶりです。――始祖様」
楓さんの言葉で私は慌てて膝を突いた。
気配なく現れたのは人影。そうとしか表現できない人物だった。
人相も体格もよくわからない。空間が切り取られたかのように黒い影がそこにはあった。
……この方が……始祖様。
本来、特級魔術師でしか会うことのできない存在。一般の魔術師にとっては雲の上の人物だ。
いくら御三家の私でもそれは例外ではない……はずだった。
「久しいな。楓。また腕を上げたか?」
「ありがとうございます」
楓さんが恭しく頭を下げた。
「さて……」
始祖様はそう呟くと私の方を向いた。
影なため、目はない。だけどなんとなくわかる。
「ここは初めましてと言っておこうか。星宮真白」
「初めまして始祖様。星宮家、次期当主の星宮真白です」
言い回しに違和感を抱いたが、問うような真似はしない。
「こんな姿で悪いな。まだお前の前に姿を晒すわけにはいかないんでね」
「いえ……」
「ひとまず刀至のことはオレに任せてくれ。責任を持って治療しよう」
「あの……大丈夫なんですよね?」
「ああ。流石にここまで早いのは想定外だったが、封印を解除すること自体は想定していた。だから問題ない」
私はホッと胸を撫で下ろした。
始祖様が言うのだから本当に大丈夫なのだろう。
「それだけお前たち、特に真白の存在が大きかったんだろうよ。まあそれはさもありなんって感じだな」
始祖様は音もなく刀至くんに近付くと、「よっと」と声を出して肩に担いだ。その姿は妙に人間臭かった。
「んじゃオレはこれで……」
「お待ちください。ご説明いただけますよね?」
そのまま去ろうとした始祖様の肩をアラトニス様が掴んだ。笑顔が怖い。
位が高いはずの始祖様もタジタジになっていた。
「あ、ああ」
「なぜ御霊島に星の墓所があるのですか? 霊峰ではなかったのですか?」
「あれはウソだ。敵を騙すにはまず味方からって言うだろ?」
「……せめて私には伝えておいてください」
アラトニス様が始祖様に半眼を向けた。もはや睨んでいるといっても過言ではない視線だ。
始祖様のことは勝手に超然的な人物だと思っていた。だけどもしかすると意外と親しみやすい人物なのかもしれない。
「わかったわかった」
始祖様がお手上げだとばかりに両手を上げる。
「ほかに隠していることはありませんよね?」
「ねぇ……よ?」
「本当ですか?」
始祖に詰め寄る始祖代理。これではどちらが上かわからない。
やがて始祖様は視線を逸らした。なんともわかりやすい。
「……あ・り・ま・す・ね?」
「あー……。いや、これは話しておくべきか? そうだな。いい機会か」
アラトニス様と楓さんが同時に顔を顰めた。
嫌な予感がする。そう顔に書いてある。
「ようやく筋書きが見えてきた。おそらく、そう遠くない未来に黎明大戦が再開される」
黎明大戦。
その言葉に一瞬ドキッと肩が跳ねた。
それは昨日、刀至くんから聞いた言葉。神代に勃発した大戦だ。
だけど始祖様は神代から生きる人物だ。ということは当事者でもある。
知っていて当然だ。
「預言……ですか?」
「そうだ。ようやくピースが揃ったしな」
「あの守りを突破できるとは到底思えませんが……。いや、あの……始祖様? もしかしてルウラの頂とファアナの地下神殿ももしかしてウソ……とかありませんよね?」
「安心しろ。【戦乙女】と【機械翁】の爺が守ってるあの二つは本物だ。ブラフは御霊島だけだよ」
アラトニス様がホッと胸を撫で下ろした。
いつも泰然としているアラトニス様でもこんな表情をするんだな。なんて意外に思った。
「あの……星の墓所というのはなんなのですか? あっ……その前に、私が聞いてもいい話ですか?」
ルウラの頂。そしてファアナの地下神殿。
この二つは有名だ。魔術師ならば誰もが知っている常識だ。
霊峰富士と並ぶ特級終域。
それがルウラの頂とファアナの地下神殿だ。
しかしこの二つを超越者が守っているなんて話は聞いたことがない。初耳だ。
「封印だよ。かつて世界を滅ぼしかけた存在、【星喰い】のな」
「始祖様!? ……いいのですか?」
「いい。どうせいずれ知る。真白。今の話、そしてこれから話すことはコイツに伝えていい。というよりら伝えてくれ」
始祖様が肩に担いだ刀至くんを顎で示した。
「いいか真白? これは本来特級魔術師にのみ伝えられる話だ。くれぐれも他言無用で頼む。でないと混乱が起きる」
背筋が伸びる。
これから何を話されるのかはわからないが、聞いてしまったら戻れない。そんな気がした。
引き返すなら今だ。だけどその選択肢はない。
私は全てを承知の上で頷いた。
「はい」
きっと中心にいるのは刀至くんだ。
そんな予感があった。ならばその隣には私/私が居なければならない。
「いい表情だ。流石だな。まず、星の墓所は【星喰い】の封印だ。ルウラの頂に脳、ファアナの地下神殿に眼。そして御霊島に心臓を封印してある。まあ他にも色々と点在しているが、重要なのはこの三か所だ。そしてこの全ての封印が解かれたら【星喰い】が復活する。黎明大戦ってのは神代に起きた人類対【星喰い】の戦争だ」
「ではその……預言というのは?」
「それはお前も無関係じゃない。星宮家が神代から続く家系ってのは知っているな?」
「はい」
「あの時はまだ星宮ではなく、星詠みの一族って呼ばれてたんだが、その時の一人が特殊でな。星の終わりを詠んだんだ」
「星の終わり……ですか?」
星の終わり。即ち――星の死。
人の死を視る私の星詠みとどこか似たようなものを感じる。
「遠い未来、【星喰い】が復活し、星は終わる。そんな預言を知ったオレたちは【星喰い】の討伐は神代では不可能だと判断した。だから封印することにしたんだ」
「ま、待ってください。神代の魔術師でも討伐できなかったんですか……?」
「ああ。オレや【戦乙女】、【機械翁】の爺のような超越者が何千といて無理だった。生き残ったのがオレたち三人だ」
「そんな……それでは……」
超越者が何千。俄には信じられないがそれが神代ということだろう。
ならば現代の魔術師が総出で掛かっても【星喰い】は倒せない。
なにせ現代には超越者が五人しかいない。特級魔術師が何人居たところで超越者一人に勝てない以上、焼け石に水だ。
ならば【星喰い】が復活した瞬間、この星は終焉を迎える。
アラトニス様が、混乱が起きると言った理由がよくわかった。
「だからこそ、オレはコイツが鍵だと思っている」
始祖様が刀至くんに視線を向けた。
「無論、お前もだ。真白」
「……え? 私……ですか?」
「詳しくはまだ話せない。だけど心当たりはあるんじゃないか?」
始祖様の言葉に私はハッとした。
前世の記憶。始祖様が言っているのはそのことだと理解した。
「……知っているのですか?」
「さあな。だが刀至といればじきにわかる。オレから話せるのはここまでだ。アラトニス。特級に今の話を共有しておいてくれ。願わくば、誰かが超越者に至ることを祈っている」
「わかりました」
「ありがとうございます」
「あっ、ありがとうございました!」
アラトニス様と楓さんに続き、頭を下げる。
「じゃあまたな」
闇に解けるようにして、始祖様は去っていった。刀至くんを連れて。
「ひとまず真白。今日のところは……いや一週間ぐらいは休んでいい。刀至に関してはまた連絡する」
「は、はい。よろしくお願いします」
アラトニス様が杖を鳴らす。するといつの間にか、私は家の前にいた。
いきなり齎された大量の情報に理解が追いついていかない。ただ危機感だけが募る。
【星喰い】、それに預言。
封印が解かれれば、世界は終焉を迎える。
だけど始祖様は解かれると確信していた。
黎明大戦の再来。そんなことになったら一体どれほどの被害が出るのか。検討もつかない。
「……すこし、整理しないといけませんね」
だけど一つだけはっきりしていることがある。
……このままではいられません。
弱いままでいれば、座して死を待つだけだ。早急に強くなる必要がある。
……もう守られるだけなんてイヤです。
刀至くんが戦っている間、何もできなかった。身体が動かなかった。
私はただ見ていただけ。ただ救われただけ。
私は何もしていない。
全て解決したのは刀至くんだ。
そんな自分が情けなくて仕方がない。
私は、刀至くんの隣に居たい。
これは紛れもなく私の感情だ。しかし同時に私の感情でもある。
感情は一致している。
ならばこそ、私は強くならなければならない。
「あれ? 真白? アラトニス様の気配がしたけど……。それに、長引くって……。……刀至くんは?」
玄関から顔を出したお父様に私は深く頭を下げた。
「お父様。私にお父様の師匠を紹介してもらえませんか?」
「……」
無言の返答に顔を上げる。
するとお父様は厳しい視線で私を見ていた。
いつも纏っている柔らかな雰囲気が消えている。その姿は別人かと思うほどに、普段の姿からはかけ離れていた。
「冗談で言っているわけではないんだね?」
そこにいたのは父ではなかった。
特級魔術師、第一席【剣星】がそこにはいた。
だけど気圧されるわけにはいかない。私は視線を逸らさずに頷き返す。
「はい」
お父様の師匠。それは刀至くんの師匠でもある。
その厳しさは刀至くんから聞いた通り。
弟子を霊峰に入れるなんて正気の沙汰ではない。だけど今の自分にはその厳しさが必要だ。
……それに、お父様が耐えられたのです。
ならば血を受け継ぐ私が耐えられないはずはない。耐えなければならない。
「……なにが、あったんだい?」
「始祖様に全て、聞きました」
それだけで伝わったのだろう。お父様は大きく目を見開いた。
「驚いたな……。ひとまず入りなさい。話を聞かせてもらえるかい?」
「はい」
お父様と共に家の中へ入る。
きっとこれが始まり。ここから事態は動いていく。
……なら、私は――!
こうして私たちの御霊島調査任務は終了した。
多くの謎と傷痕を残して――。
二章、御霊島編完結!
いかがでしたか?
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続きも書け次第投稿予定ですが、別作品等も色々書いているので気長にお待ちいただければと思います。
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ではまた続きでお会いしましょう!
平原誠也




