幕間 狭間で嗤う【奇術師】
成層圏よりも遥か上空。空と宇宙の狭間。
そこに白いスーツに身を包んだ男が佇んでいた。
白いシルクハットから覗くブロンドの長髪がユラユラと揺れている。
常人はもとい一流の魔術師でも生存不可能な高度。
しかしその男は生身で立っている。それが男の異常さを際立たせていた。
男は心底嬉しそうな笑みを浮かべながら眼下の島を睥睨する。
「ククッ! ここからの視線でも気付きますか! なんともまぁ成長したものです!」
男の視線は遥か先にいる人物をしっかりと捉えていた。
自らの手で神を降ろし、半身となった少年を――。
「ここまで成長しているとは予想外でした。流石と言わざるを得ませんね」
男の視線が霊峰富士を捉え、目を細める。
「あの時は退くしかありませんでしたが……。どうやら目的は同じになったと見るべきですかね? いや、それは早計か。……なにはともあれ、創神計画は失敗かと思いましたが、これは少々計画の変更を考えなくてはなりませんねぇ」
男は空中で脚を組んで座り思考に没頭する。
丁度そこに地上から打ち上げられたロケットが通りかかった。ジェットエンジンから轟く大音量にさしもの男も眉を顰める。
「うるさい」
一言。そう呟いた瞬間、ロケットが爆発四散した。
背後で爆発するロケットを男は気にも止めない。やがてなにかを閃いたとばかりに、パチンと指を鳴らした。
「良いことを思い付きました。計画を合流させてみましょうか。さて貴方は動きますかねぇ?」
男は嗤う。無邪気に邪悪に。
心の底からの嗤みを――。




