第2話「猫くんの初ドラ」
猫くん、第2話でついに魔法を使う!
真夜中に拾った子猫の中には、300歳の大魔法使い!軽め、短めのローファンタジーです。お気楽に是非。
ぶーん。
ママが運転する黒いボックスカーは、雨の中を走ってる。
ゲリラ豪雨って言うのかな。まさかこんなに降るとは。傘持ってなかった。
なので、電話してみたら、ママが学校まで来てくれた。
こういう時、帰宅部である事がラッキー。帰りの時間が判り易いからね。
更に嬉しいのは、ママが猫くんを連れて来たこと。
猫くん、初ドライブ。
わたしの胸に抱かれている猫くんは、さっきからキョロキョロ。
見慣れぬ景色に驚いてるんだねー!かわいー!
…なんだ、この鉄のチャリオットは!?速い!速すぎるぞ!
この光る3つ目は何だ。あれが規則なのか!?赤だと止まるのか!?
面白い世界だ…!面白い!実に面白い!
さっき”めいる”が出て来た。“学校”という所も面白い。魔術学院のようなものか。参考になる!
「ところで、まだ猫くん(仮)なの?パパの言ってた“クロたお”で良くない?」
むむ、どこかで聞いたような?
「うーん。どうも違う気がして~。」
レテネージだ。テレパシーで送ってやろうか。
「いつまでも“猫くん”も可哀そうじゃない?」
「うーん。もうちょい考える。」
…よし、送ろう。テレパシーの呪文を…。
その時だ。横から違うチャリオットが飛び出して来たのは。
似たような大きさの、グレーのチャリオットだ。
こっちが青では無かったか!?
芽唯流が悲鳴を上げる。
芽唯流!!
“テレキネシス!”邪魔だ!浮け!
「ミャミャミャミャヤヤ!」
グレーのチャリオットは空中5m位に浮き、我々のチャリオット…車を通す。
ママ殿は、ぜえぜえ息を切らしながら、車を止めた。
「し、死んだかと思った…。」
「ママ…あの車浮かなかった?わたし、夢見てる?」
背後に、ドンっと音がする。
30cmぐらいまで下げてから落としてやった。
もう1つ位、罰を与えておこう。くっくっく。
“ラスト!”サビの呪文。金属を一瞬で錆びの粉にする凶悪な魔法。
これを掛けられた戦士とかは良く泣いていたなぁ。くっくっく。
「ミャミャミャ―!」
後ろのグレーのヤツが天井を失って、ずぶ濡れになることをイメージした。
…あれー。この私の魔力を受けて何故無事?落ちたものだなぁ。
天上に変化は見られない。
「ミャミャミャ―!」今度は車全体を覆ってやる!
ガコっと音がして、グレーの車は下に小さくなった。何か潰れたらしい。
中からオヤジが出て来て、車を見てなんか叫んでる。
次の瞬間、オヤジのズボンが下にずり落ちた。
…腰の留め金も金属だったか。
オヤジが<いや~ん>、なポーズを決めている。ちょっと可哀そうになった。
「…ママ、ぶつかって無いし、行っちゃっていいよね…変質者っぽいし…。」
「そ、そうね、よくわかんないけど行きましょう。」
ぶーん。
車は走り出した。
「夢でも見た?錯覚?魔法にでもかかったみたい。」
芽唯流はそんなふうに呟いた。いい勘してるじゃないか。
――――――――――
あ、そう。アルミとかプラスチックって言うのはサビないのか。
本体の駆動部が鉄で、粉になったのか…。
へー。言ってくれよ。へー。
芽唯流のスキを突き、スマホで検索。
普段のオマエを見て、凡その操作法は理解したぞ。
「あ、猫くん、スマホは触っちゃ駄目!」
…バレた。まさか操作してるとは思うまい。
ヤレヤレ。魔法の触媒無し。指輪も杖も無い。魔法を連続で使うのは、この体ではキツかったらしい。せめて触媒を造れたらな…。
ひょい。軽く持ち上げられた。
「眠いの?猫くん。」
そのまま、抱きかかえられる。
…いつものことだが、そのムネでぎゅっとするのやめてほしい…。少しはうら若い女性である自覚を…。
…猫だからいいけどな。いや、いいのか…?
あ、ダメだ。眠い。精神力が…。
…ママ、温かいニャ。
やめろ!