第1話「我が名はレテネージ」
真夜中に救った子猫は、魔法使い。スティックを振り、魔女の帽子を被る…という、高1女子、芽唯流のイメージを叶える為、無理して頑張る猫くん。中身は300歳の異世界魔術師。
先に、<魔法使い、猫くん>という作品を出していますが(未完)、完璧なるパラレルです。軽い題名を付けた割に結構重い時は重い本編と違う世界、ここがそう。
本編関係なく、お時間ある方、宜しければぜひ。ローファンタジー、軽め。短め。
*尚、猫さん大好きですが猫さん飼ったことありません。そのうち夢を叶えたいです。猫好きの方、それはおかしい、という点もあるかと思います。ご容赦を。
窓の外で、猫の泣き声がする。
わたしは、玄関にでた。
ウチの家は、結構車通りの多い道に面している。
そして、2階の道側が、私の部屋。
今、12時回ったとこ。
友達と、明日のこと話してたとこ。
みー。みー。
空耳じゃない。確かに、聞こえる。
まさか、捨て猫?
この秋の寒空に?
ノラ猫さんの家族だろうか?
…ノラ猫って、この辺で見た事無いけど…。
あ…居た。
危ない!道路わき!大きいの来たら轢かれるよ!?
わたし、走り出した。
そして、次の車が来る前に、抱きかかえた。
汚れとか、虫とか?全然考えもしなかった。
わたしのセーターにしがみ付く、まっくろ黒い猫。
ああ、目が開いてない。開いてないくせに、爪はあるんだね。
必死に、しがみ付いて来る。
…寒かったの?怖かったの?
見てるだけで、泣きそう。急いで帰らなきゃ!
―――こうして、わたしは、真夜中に、彼に出会った。
猫くんに。魔法使いの、猫くんに。
「お願いします!お願い!面倒見るから!ちゃんと見るから!」
世の子供は全員、同じことを言うと思う。
そして、大方の場合、家族全員で世話をすることになる。
「芽唯流。本当だろうな。本当に本当だろうな。お前の口だけ頑張るは、前科10犯くらいある。」
パパの毒が染み入る。しかも事実である。
「今度は本当だもん!」
「来年は2年生で大学受験も始まるのに?」
ママの現実アタックが炸裂する。
わたしは16歳の秋。あと半年ほどで2年生。
「お願い!」
「サイトで引き受けてくれるとこ有るんじゃない?」
わたしは、子猫を持ち上げて見せた。
彼は、必死に爪を伸ばして、セーターに引っ付く。
「………目も開いてないな。お前を、きっとママだと思うんだろうな。」
「あなた!」
「俺にも似たような経験があって、キツい思い出だ。芽唯流に、そんな思いをさせたくはないな。」
「…もう!芽唯流には甘いんだから!」
「ただし、条件付きだ。芽唯流。ペットは家族だ。そして、家族なのに、ペットは大概、先に命を終えてしまうよ。それを看取る覚悟はあるかい?」
「…そんなの、その時になって、泣くよ。それまでは、ずっと幸せだよ!」
「いいだろう。芽唯流。大切にしなさい。」
ママはため息をついた。はぁ。
「いきなり家族が増えるのは困るわ。」
ぎゅう。わたしは猫と一緒に2人に飛びついた。
「じゃぁ、名前を考えなきゃね。お前が決めなさい。でも、パパとママが言いにくいのは辞めてね。」
…名前は、すぐに思いつかなかった。
まぁ、いいや。
セーターごと猫ちゃんを脱いで、パジャマに替えて、再び胸に猫ちゃんを抱きしめる。
哺乳瓶がないので、指にミルクを付けて舐めさせてみた。
ひゃー!くすぐったい!しかし我慢だ!この子のためだ!
わたしは、母親気分で、頑張った。これで十分なはずもないし、明日すぐに買って来よう!
一緒に、布団に入って、寝た。この子を潰さないように。それだけ、それだけ考えて寝た。
―――5日後。夜。
眩しい。なんだ、この強い灯りは。ライトの呪文か。
目の前に、少女が居る。可憐な少女だな…美しい…15,6才か?
…ママ。ママだ…。
は?
何を言っている私は。何がママだ。
「やった!目が開いた!見てる?見えてる?ママですよ~!」
何言ってんのかねキミは。
私の母は金の髪を編み込んで…。いや、そんなことはどうでも良い。
顔が近い。恥ずかしいぞ少女よ。
「ぎゅーですよ~。」
抱きしめられた。おいおい何をする。母親ごっこなのか?
…暖かい…。
いや、何を言っているのだ私は!どうなっている!?
私は魔神と戦い、奴を道連れに次元の狭間に落ちた。そうだ、死んだのだろう。
「ハイ、猫くん、ミルクですよ。」
口に、柔らかい感触のモノを押し当てられた。
知っている。ミルクを飲ませるものだ。
…おいちい…。
だから!何を言っているのだ私は!大体、こんな小娘が私を抱き上げ…。
…猫くん、だと?
猫だと!?
みゃー!!
何故、私は猫になっている!?猫に魔法で変身した記憶はない!
「生まれ変わったのか!記憶そのままで!?」
あり得ん!
…こんなにミルクが美味しいなどあり得んー!
我が名はレテネージ・メイフィールド!
魔法ギルドの頂点、アークマスターにして、魔道国ツァルトの建国王!甚大なその力で魔王と呼ばれた者!
…お代わりほしいニャ。