表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/78

「螺旋の記憶」(主人公:慎吾、40歳、男性、画家)

画家の慎吾は、かつて天才と呼ばれた。しかし、ある事件をきっかけに画家としての感性を失ってしまう。絵筆を握ることさえ、苦痛になっていた。そんな慎吾の元に、一通の小包が届く。差出人は、ロシアの画商、イワン。小包の中には、ロシア産フェナカイトのペンダントが入っていた。


「このフェナカイトは、君の魂に眠る芸術の泉を呼び覚ますだろう。瞑想とともに、その力を解き放て」イワンはそう記していた。半信半疑ながらも、慎吾はペンダントを手に瞑想を始める。


深い呼吸とともに、意識を内側に向けていく。すると、かつて封印していた記憶の扉が開かれる。あの事件の日、慎吾の目の前で起きた悲劇。愛する人を失った絶望と、自責の念。慎吾は、感情の螺旋に飲み込まれていく。


だが、そのとき、フェナカイトが放つ優しい光に気づく。光は、慎吾の心の闇を払うように、螺旋の中心へと導いていく。そこで慎吾は、自分の魂と対話した。「私は、絵を描くことでしか、世界と向き合えない」。そう告げる魂の声に、慎吾は涙を流した。


目覚めた慎吾の手は、自然と絵筆を求めていた。カンバスに向かい、思うがままに色を重ねていく。心の螺旋を辿るように、絵は形になっていった。光と闇が交錯する、慎吾の魂の叫び。


完成した絵を前に、慎吾は長い沈黙の末に言葉を発した。「生きていく。私は、絵とともに生きていく」。


それからの慎吾は、絵画制作に没頭する日々を送った。ロシア産フェナカイトを身につけ、瞑想を欠かさない。心の螺旋を辿る度に、新たな感情が色となって表れる。慎吾の作品は、以前にも増して力強さを増していった。


そしてある日、慎吾はイワンから再び小包を受け取る。その中には、ロシアでの個展の招待状が入っていた。「君の作品は、多くの人の魂を揺さぶるだろう」。イワンの言葉を胸に、慎吾はロシアへと旅立った。


個展は大成功を収め、慎吾の作品は世界中で評価されるようになる。取材に答えた慎吾は、こう語った。「フェナカイトとの出会いが、私に再び絵を描く力をくれた。瞑想を通して、自分の魂と向き合うことの大切さを教えてくれた」。


慎吾はこれからも、ロシア産フェナカイトとともに、絵画の道を歩んでいく。心の螺旋を辿りながら、魂の叫びを作品に昇華させていくのだ。そして、見る者の心にも、螺旋を描いていく。慎吾の絵画は、魂と魂をつなぐ架け橋となっていくのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ