「記憶の欠片」(主人公:里香、45歳、女性、小説家)
小説家の里香は、ある日突然、過去の記憶を失ってしまう。医師からは一時的な記憶障害だと診断されたが、里香の中で失われたのは、大切な誰かの存在だった。ぼんやりとした輪郭だけが、里香の脳裏に焼き付いている。
途方に暮れる里香の前に、一人の老婆が現れた。老婆は里香に、一つのロシア産フェナカイトを手渡した。「この石を手に、あなたの心の奥を見つめなさい。失われた記憶のカケラが見えてくるはずです」そう告げて、老婦人は姿を消した。
里香はフェナカイトを手に、瞑想を始めた。すると、意識の中に過去の情景が浮かび上がってきた。ロシアでの取材旅行、現地で出会った青年ジャーナリストのイワン。二人は取材を通して惹かれ合い、深い絆で結ばれていった。しかしある日、イワンは任務中の事故で命を落としてしまう。あまりのショックに、里香はイワンの存在を心から封じ込めてしまったのだ。
目覚めた里香は、イワンとの思い出を鮮明に思い出していた。そして、イワンへの思いを新しい物語に綴ることを決意する。里香はイワンゆかりの地、ロシアを再訪する。フェナカイトを片手に、二人の思い出を辿る旅に出るのだった。
ロシアでの取材の日々。里香はイワンとの思い出を一つ一つ紐解いていく。イワンが見せてくれた隠れ家の湖、二人で夜通し語り合ったカフェ、初めてキスをした公園のベンチ。フェナカイトは、まるで里香の道しるべのように、失われた記憶を呼び覚ましていく。
そして、里香はイワンが亡くなった場所を訪れた。そこで、里香はイワンの遺品の中からもう一つのフェナカイトを見つけるのだった。手紙には、こう書かれていた。「もしも僕が先に逝ってしまったら、このフェナカイトを手に僕を思い出してほしい。君との思い出は、永遠に色褪せない」と。
里香は涙ながらに、two heartsをフェナカイトに重ねた。「あなたとの思い出は、私の中で永遠に生き続けるわ」そうつぶやきながら。
帰国後、里香の新作小説「記憶の欠片」が発表された。イワンとの愛の物語は、多くの読者の共感を呼んだ。里香はロシア産フェナカイトを胸に、イワンとの思い出を語り継いでいく。そして、若い世代にも、真実の愛の意味を伝えていくのだった。
「失われた記憶は、愛する人との絆の中に生きている。フェナカイトが、その記憶の欠片を紡ぎ合わせてくれる」里香の言葉は、多くの人々の心に希望を灯したのだった。