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RIGHT MEMORIZE 〜僕らを轢いてくソラ  作者: neonevi
▽ 一章 ▽ いつだって思いと歩幅は吊り合わない
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1-4 Far from pleased〜 女近焦拾〔P2〕

sideヒロ


((ドクン、ドクン、ドクン、ドクン… ))


静かな部屋に心臓の音が響く。


ウチ?だよね。



バサァ…


さっきの子?


突然のことに気が動転しつつベッドに腰掛ける。


とりあえずどうする?いやどうする。

ちょ待て、落ち着け僕。


枕元のスマホを見る。


やっぱ警察か児相?…は無理。


ヤバいどうするっ

と、とりあえずドアから覗くか。

まだ誰かも分かんないし。


そう決めた僕は静かにベッドから立ち上がり、暗いまま狭い部屋を抜け静かにドアをスライド。



((ドクン、ドクン、ドクン、ドクン… ))


短い廊下の先にある見慣れたドアが、今は無機質で不気味に映った。


ひたっひたっひたっひたっひたっ


フローリングに少しベタつく足の裏。

口唇を少しすぼめ呼吸を極限まで細くして、慎重にドアに近付いて行く。


「…………… 」


シンとした玄関は何の気配もしない。

そこから息を止めゆっくりと首を覗き穴に伸ばす。


うおっ!? 居るっ

間違いなく居るっ


((フゥーーー〜〜… ))


けどどうしよ。


横を向いて息継ぎしつつ考えるけど、今更案なんて何も思い浮かばない。


もう一度覗いてみる…………が彼女に動く様子はない。


((フゥーーー〜〜… ))


けど2回目の確認は僕を少しだけ落ち着かせてくれた。


さすがにあのくらいの女の子に危害を加えられるとは思わないし、…開けるか。


よっし。


意を決してドアノブに手を伸ばす。


『ガチャ』キィっ

「あっと、どうしました?」


女の子は外開きのドアに少しだけ距離を取った。


「……………… 」


だけど俯いたままで返事をしない。




服装から今時の感じはしない。




どうする?何か言わないと、


「えぇ〜っと…、とりあえず入る?」


良いよねっ

こんな時間に外は危ないからっ


「……………… 」


アレ?

僕全然変じゃないよね?


" ロリタニア人のクセに "


違うっ

これは保護っ

そうっ保護責任者遺棄致死って死にはしないだろうけど、放っておいて何かあったら不味いんだよ。


ね?おまわりさん?


彼女が無反応な間の空気(ナイフ)から、豆腐(メンタル)を守ろうと僕の脳は高速回転(クロックアップ)

その能力の全てで自分の行動の正当性を主張し、そして鏡は無いけど "自作満面の笑顔" は崩さない。


「……………… 」


ここ…こっち向いて。


てか向かないの?


けどヤバい…

顔が引き攣りそ…


アゴ…シャクレてない?


えぇいっ負けるかぁっ


『キィィっ』


目一杯の笑顔を維持しつつ大きくドアを開く。


うう、ウェルカーーーームっ


「……………… 」


って無反応やめてぇぇえっ


それでも彼女は動かない。

だから手振りで必死に促す。

自分の顔を扇ぐ動きと混ぜ合わせて。


「…ッっ」


なんだ?

一体全体僕は何をしてるんだ?


あっ⁉︎


そんな迷宮に入り掛けた時、彼女は俯いたままでゆっくりと動き出し…


よよ…良っし。


そして目の前を重なる様に中へと入った。


とりあえず良かった。

選択肢は間違えてなかった…うん。



そして何となく周りを伺ってから…


バタン…


時間が時間なので静かにドアを閉める。

背中には動かない彼女の気配。


僕は彼女に触れないよう部屋へと上がり、3m程の廊下を通り八畳強のリビングへ向かう。


「こっち、上がって来て」


そしてそこから振り向いて、動く素振りのない彼女に手招きをする。


スタ、スタ、スタ…


すると彼女は少しだけ様子を伺う素振りを見せつつ中に入って来た。


よぉし順調順調。


安堵した僕はローテーブルの向こうに回り込み座椅子に座る。


部屋の入り口に佇む彼女。



「「…………… 」」


初めて重なった視線。


やっとこ面と向かえた僕が座るように促すと、彼女はすぐに対面に座ってくれた。


ブーツを履いたまま。


ウソ〜ん⁉︎

この子外人⁇


いやでも黒っぽい茶髪だけど。


室内の照明の下に導けたものの、再び俯いた彼女の前髪は目の下に掛かり表情は窺えない。



いや…

けどそれにしてもないでしょ?


なんかめっちゃ汚れてるし。


「……………… 」


ん?

血?内出血?


だけど遠慮が無くなって来た僕の視線は、少しボサボサになった髪の毛の横から赤くなっている口元を捉えた。


殴られた…とか?


" けどまぁ虐待は論外でさ、行き過ぎた躾けや異常な束縛をする家庭なんてのも珍しくないからね "


んん〜…何か嫌な力が働いてない?



「あぁ〜と、とりあえず靴を脱いでもらえるかな?」


声に反応はするもキョトンとしているので、続いてジェスチャーで伝える。


「……………… 」


うん、分かってる。

これ日本語分かんない系だな。

片言英語で伝わるか?


「あ〜…シューズ、ブーツ、テイクオフ、プリーズ」





「「……………… 」」


しかし彼女の瞳は無。

片言英語が通じた様子ナシ。


あぁ〜と…

なんか凄いハズいんだけど…


と、携帯だ。


靴…脱ぐーーtake off shoes


合っとりますな。

なら何語だろ。



シュルシュルシュルっ


すると何かに気付いた彼女は靴紐を弛め脱いでくれた。


おおぉ、念が通じたかっ


にしても何圏の子なんだろ。


瞳はかなり薄茶色で色白…

だけど顔立ちは東洋人ぽい。


ん〜東欧でも英語はある程度分かるはずだよなぁ。

東南アジアとかならなおさらだろうし。


とりあえずどう……てかシャワーを貸すか。

なんかかなり薄汚れてるみたいだし。


「「……………… 」」


ッっと…


目が合ってたことに気がついて恥ずかしくなった。


うん、サッパリすればもう少しコミュニケーションも取れるかもだよね。


「よっと」「っ⁉︎ 」


ゆっくりと立ち上がった僕に、彼女はビクりと反応する。


しまった…


そう思いつつ "大丈夫だよ" と下手くそな笑顔を作りバスルームへ。


自分ちでこんなに申し訳ない感じなの…ツライ。


キュキュキュ

『シャーーーーーーーーー… 』


ヘッドから勢いよく出る水。

そして湯気が立ち上るのを確認してから僕はリビングに顔を出し、そこから手招きをして彼女を呼ぶ。


「こっち、来て、カモンっ」


「……、…… 」


彼女はキョロキョロした後ゆっくり立ち上がり、フラフラとこっちへ来た。


「あ〜、シャワールーム、OK?」


僕はバスルームで服を脱ぐ動きと中で洗う動きをしてから、バスタオルを出し拭く動きをする。

そして僕のスエットの上下を出して、着る動きをしてから洗面所を出た。




ふぅーー〜…水水、水を飲もう。



ゴクゴクっゴクゴクっ


「はァぁ〜〜……っ……… 」


奥の奥から滲んだため息は、壁越しに聴こえてくるシャワーの音に遮られた。


勿論覗かないしそんな元気もない。


あ〜と彼女は160cm位だろうから170cm足らずの僕のスエットでも問題無いし…


「……… 」


洗濯したやつだけど、臭い…大丈夫だよな?


しかし確認せずに出してしまった以上今更どうしようもない。



シュシュシュシュシュシュシュ

シュシュシュシュシュシュシュ


けど一抹の不安を少しでも誤魔化そうと、僕は部屋の消臭+除菌をする。





((ガチャっ))


10分足らずで彼女は出てきた。


女の子にしては早くない?

警戒されてるとか?


そして洗面所のドアから出て来た彼女の髪は濡れたまま。


しまったドライヤー…


しかし気にした様子もなく対面の座椅子に座る彼女は、さっきよりか幾分自然体に見えた。



「「………… 」」


またも流れる沈黙。


はぁ〜、もう2時だよ。

マジで疲れるってコレ。


どうしたもんかなぁ。

けど事情は聞いとくべきだよなあ。

んでも言葉通じないしなぁ。


泣きたくなってきた。


「……ミレ」

「ユウ?」


呟くような一言に僕が指を差すと、彼女はコクリと頷いた。


おぉ、うおぉぉぉぉっ‼︎

一歩前進んんっ


心の中でガッツポーズを決めるほどの喜び…はすぐに霧散した。


やっぱ口元のは内出血だ。

よく見ると指先や手の甲に擦り傷もある。


僕は今度は慎重に立ち上がって救急箱を取りに。

彼女は僕をジっと見つめてはいたけど、警戒するような素振りはなかった。



ジューー、ジューーー


消毒は沁みるからと恐る恐るしたけど、彼女は全く反応しない。


賞味期限…じゃなくて消費期限?大丈夫か?


僕は慌てて確認したけど問題ない。


痛みに強い子なのか…


それともやはり…


嫌な想像が頭を過ぎる。

けどそんな事は隅においやって、絆創膏と包帯で簡単に手当てをした。


((ふぁふっ… ))


はは…

僕も疲れたなぁ。


目の前の彼女が欠伸を噛み殺す仕草を見て、僕も一気に気が抜けた。



そして僕たちは眠る事にした。



寝れるか?






… …Q Q Q









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