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RIGHT MEMORIZE 〜僕らを轢いてくソラ  作者: neonevi
▽ 二章 ▽ 明日は今日を嗤い昨日は今日を憫んだ
51/128

2-5 人の行く裏に未知あり孕む罠

sideウインザ


ガチャ

「保安部報告官ナリオ失礼しますっ。ただ今第四砦街(ドーズ)より伝報鳥(イグアス)が届きましたっ」

「何⁉︎ 定期連絡は3日後だぞ、確かなのか?」

「ハイっ間違い有りません。こちら第四砦街団長(ドーズナーグス)ブライドウ様からですっ」

パサっ


興奮したナリオは肩をいからせて私の机に手紙を置いた。



「…………… 」


まさか…

第四(むこう)でも何かあったのか。


スゥシャシャシャ…カサっ


一抹の不安を覚えつつ手紙を開封する。



「………………うむ」


「………っ… 」


固唾を飲むナリオ。


「間違いなくブライドウからの手紙だ。内容は何てことはない、来月こっちへ顔を出すとの事だ」

「こ、この時間にですか…… 」


やや呆れ気味に言うナリオだが仕方がない。

特別な連絡でもなければ通常は夜にイグアスを飛ばさない。

まぁアイツらしいのだが。


「ですがこの危機的なタイミングでイグアスが来たのは幸運としか言いようが無いかと。すぐに衛都(レィレン)への伝報依頼と救援要請を送り返しましょうっ」


「…………… 」

団長(ナーグス)?」


「…いや、送るのは明朝にしよう」

「いや、そんな悠長な場合ではないですよっ」


「…ナリオ、私達団幹部が解放されて直ぐに第四と第五砦街(ドーズ)へ早馬を出した。ならば途中立ち寄る街の支部から伝報は出されている筈ではないのか?しかし現在までその様な報告は一切届いて来ない」


「…つまりビダンの手が、少なくとも私の様な連絡担当の保安員にまで及んでいると」

「私が奴の立場なら当然そうする。数の不利を覆すには、敵を孤立させるのは常道。これだけの事をする以上救援先に手を打つのは然るべき事だろう」


「…そうかも知れません」


ナリオの声が弱まる。


「そして今返せばイグアスは夜に着く。それではどの様な内容を送ろうともブライドウには伝わらない可能性が高い。だから明朝なのだ。少しでも多くの者の目に付けば、伝わる可能性も上がるかも知れん。とにかく明日また改めて指示を出す。以上だ」

「ハッ」


パタン


ナリオは礼をして出て行った。


だが全てが後手に回ってしまったこの状況、ナリオの言う通りこのイグアスは非常にありがたい。


貴重なこの手札、慎重に慎重を重ねて切らねばな。







sideシロ


カシッカシッカシッカシっシャーーーーーーーーーーー


「…………… 」


旧道に入り闇の中を先行するのはオレ。


『ドドッドカラドドッドドッ… 』


その20m後ろをミレが馬麟で付いて来ている。


うん、アイツは何でも出来るな。


そして最後尾…



カシッカシッカシッカシっシャーーーーーーーーーーー


「…………… 」


無言で追走してるのはスオル。


スオルは自転車()()直ぐに乗れた。

でもミレの背中を追うその表情は今も悔しそう…と言うか落ち込んでるっぽい。


まぁこの見た目で強いし賢いし偉いさんの娘とくれば納得なんだけど…


カシッカシッカシッカシっシャーーーーーーーーーーー


「………ブぷっ」


ヒロ君ピンチやんけー〜笑

しかも今回は相手が悪いし笑笑


今の所ヒロ君の形振り構わない一生懸命さと恋愛方面に疎そうなミレが、違う世界のロマンス効果 × ヒロインの危機的シチュによって功を奏している様に見えるけど、ハッキリ言って両者のスペックは吊り合っていない。

こっちの世界はあっち程美醜に重きを置かないのなら問題無いけど、スオルは勿論のこと街中の人達の視線とか見てると同じなんだよなぁ…


カシッカシッカシッカシっシャーーーーーーーーーーー


そして残念ながらオレは応援はするけど援護はしない主義。

実らせるために一喜一憂し、育んでいく為に四苦八苦するのが恋愛。

その一つ一つが歴史として2人の絆となるのだから、他人の力でどうこうなんてのは後々為になる筈が無い。

上手く行かないのもまた恋あ…ッ⁉︎⁈


ヤバッッ‼︎


急ぎ後続(ミレら)に向かってハンディライトを点滅させる。


シャーーーーーーーザサザサザサーー〜…


ドドッドカッドザッ…


そして草むらに曲がって隠れると、後方の馬麟蹄も即座に止まった。



見つかってないよな…




「…………、………… 」



ドド…



ドド…ドドド…



ドドッドドッドドッ



ドドドッドザッドドドカラッドドッ


『ドドッドカッーー2



『ドドドドッドザッーー6


『ドザッドドドガッドドッ』ーー10



ドドドッドザッドドドカラッ



ドドドカッドドッ



ドド…ドド…



ドド…



「…………フゥーー〜… 」


見たことのない装束を纏った騎兵10。

どう見ても敵だよなぁ…あれは。



ザっザっザ…

「シロ、たすかった」


近付いて来たミレが奴らの消えた先を見つつ言う。


「なぁおい、敵ばっか多過ぎだろっ」

パサっ

「なんでこっちから来るんだよっ」

ピシピシっ


正に一難去ってまた一難。

腹が立って来たオレはポケットの地図を出し広げ、その勢いのまま旧道の先を指でつつく。


「…………… 」

「おいミレっ」

「あれ…オーダクイム」

「は?」


ザっザっザ…

「オーダクイム××××××××?(ってどう言うことすか) 」

「×××、××××××××××××××××××××××××… (分からない、でもあの灰色の装束は隣国の特殊暗殺部隊って聞いたことが… ) 」

「××××××っ(そんな奴らが) 」


近付いて来たスオルが慌てて捲し立て、ミレも慄く様に重く答えているその様は、何を言ってるのか全く分かんなくても深刻なのがヒシヒシと伝って来た。


「強いのか?」

「たぶん。…わたしと同じのかも」

「ハァぁ?」


戦闘狂(そんなの)が10人とかクソヤバだろっ

いやそうすると


「ミレっ、隊長達が… 」


「…………、わたしたち衛都(レィレン)行く」


目を瞑ったミレは悩んだ末に左右に首を振り、それを見たスオルは息を飲み込む様にして押し黙った。


「ッ……そう、だよな」



肩を叩いた隊長の笑顔が蘇る。


死ぬなよ隊長達…







sideベルキー


パサっ

「…こいつもか」


「…隊長、第9隊の奴らの遺体…どうしますか?このままだと獣に… 」


倒した敵の素顔を確認すると、中にはやはり第9の者も居た。


「……敵だ、って言って捨て置くのは良い気分じゃないな。そいつらのは別に集めてクテン粉だけ撒いといてやれ。流石に運ぶ余裕はないからな」

「分かりました」


(※、クテン粉=獣が嫌う粉末で、小型の獣程度にしか効果は無い)



「う…ゥゥっ、目を開けろよおいっ、何してんだよっ」


フゥ…


「一緒に連れ帰ってやれ」ポン

「〜っ、はいぃ」ゴシゴシっ



そして負傷者の応急処置が全て終わり、継戦の難しい隊員の帰還準備が整った。



「街道とは言え夜だ、戻りでも決して油断はするな」


「すみません隊長… 」

「すみません… 」


「なら良い酒でも用意して待っててくれ」

「そうだ、サイコーのやつだぞっ」



残りは6人か。







『ドドッドガラッドガラッドドッ… 』


おそらく奴らはロエ辺り。

このまま行けば明方には追い付けるだろうが、奴らは殿に子飼いの部下を配置しているはず。

この人数ではとても戦いにはならんし無理をすれば全滅するだけ。


さてどうするかだな…


「た、隊長っ」


「どうしたァっ」


「後方200mより騎兵10っ、こっちへ向かい猛進して来ますっ」


おいおい何だよそれは。

ちったぁ考える時間くらい寄越せよ…


『ドガラッドドッドドッドドッ… 』


「味方っ…じゃないよなっ」

「詳細は不明ですが隊服では有りませんっ。速度を上げますかっ?」


10騎か…


半分じゃ足止めは不可能。

追い付かれれば馬をやられる。

このまま進んで挟まれるのも厄介か…


「500m先で馬を止めるっ。迎え討つぞっ」


「「「「「ハッ‼︎ 」」」」」






『ドドッドドッドドッドザっドザっザ… 』

ズサっ、ズサっ


50mほどの距離であちらは止まり、半数ほどが馬を降りて歩いて来た。


かなりの警戒が見て取れる。



ザス、ザス、ザス、ザス、ザス…


ザス、ザス、ザス、ザス…


「………… 」


この灰色の装束…

こいつらはオーダクイムの暗殺部隊か?


ザス、ザス…

「「………… 」」


戦闘の男が目が合う距離近付くと、後ろの隊員達の緊張が伝わって来た。



「…あれ、ベルギーさんじゃないですか」


突然俺を呼んだのは二番目に居た男。


ザス、ザス、ザス…

「俺ですよ、リモーン」


そう言って覆面を捲り寄って来るのはかつての仲間。


「リモーン、お前かっ」ザス、ザス…


ザス、ザス、ザス…

「お久振りです」

「おぉ、本当だなッ『ガッ‼︎ 』


「「ッ… 」」


不意を突いたこめかみへの一撃はギリギリで防がれた。


「痛たた…、いきなりコレは酷いですよベルギーさん」


受けた腕をブラブラとさせ苦笑いするリモーン。


「お前こそ踏み込んで来る寸前だっただろ?」


「…フ、流石ですね。で、どうですか?元仲間なのでもう一度誘わせて頂きます。ベルギーさん、こちらに付きませんか?皆んな貴方を待っていますよ」

「お仲間がやられたのにか?」


「アレはビダンの部下らと金で雇われた兵隊です。仲間と言えなくも無いですがまぁそれほど… 」


「目的は?オーダクイムに鞍替えするなんて、片目になって変わったのか?ガラは」


「……変わっていませんよ、根っこはね。仲間と共に笑える日々を…です」


フ…いちいち答える訳ないよな。

懐かしい台詞だが。


「分かった。だが俺はオーダクイムに鞍替えする気は無い。今の仲間を傷付けるお前らはただの敵だ」


「…そうですか。こっちも色々あってオーダクイムって訳でもないのですけどね…残念です」スッ


リモーンが静かに手を上げると、後方の敵も馬を降りこっちへ向かって来た。


「俺の実力はご存知かと思いますが、この中の半分は俺よりも強いですよ」シュラ…


言い終えるとリモーンは剣を抜いた。


「ハ、それはまたご丁寧なことだな」シュッ


しかし本当ならマズイぞ。

リモーンは前の傭兵団でも五指の実力者。

ただでさえ7:3で分が悪いと思っていたのがこれでは8:2か9:1。


ッ…

部下の無駄死にだけは御免だ。

道連れに3、4人殺れば何とか逃がせるか?


夜空に浮かぶ端欠けの惑星を視界に捉えながら、後ろの部下達に撤退の合図を出すタイミングを図る。


ザっザっ…

「隊長、俺は最後までやりますよ」

ザっザっ…

「俺も、ここで自分だけ逃げるとか無理ですって」


他の奴らを見ると、そいつらも何も言わずに頷いた。


「ハァーーーーー〜……ンっとに馬鹿ばっかだよなぁ、お前らは」


尚の事死なせたくなくなるだろ。


ガラ、お前のせいで10回目は出来なさそうだけどな、でも俺は今昔以上の仲間に囲まれているぞ?




ーーー『ドシュッ‼︎ 』

「うガッ⁉︎ 」


「何だッ」


フォッーー『バスッ』

「うぐッ」


フォッーーー『グサッ』

「ングぅ⁉︎ 」


突然敵の中を割って走る人影。


まさか…


ダタタタッ

ーーシュ『ギィッ‼︎ 』

「っ⁉︎」

『ドゥっ』


「グぉ… 」


ソイツは斬りつけたリモーンに斬撃を防がれると、即座に腹へと蹴りを見舞った。


彼か…いや…



「ンドリャーーーーーーッ……てハァハァ、あれ?蹴る前だったか?」


「「「「「スオルゥッ⁉︎ 」」」」」


「ハァハァハァハァッ…皆んなっ居るなっ、ッシ間に合ったぁぁっ」


驚く俺達を置いて人数を確かめたスオル。


「いやお前……何で戻って…ってかその装備は… 」


「隊長ォっ‼︎ 」


「お、おう」


勢い付いたスオルに気圧される。


「ハァハァ、命令違反すみませんっ。でも今まで言ってませんでしたけどねハァハァっ、実は俺と母ちゃん6年前に隊長に助けられてるんですよ」


…ろ、6年前?

こっちはそんな前の事憶えてないっての。


「フゥーーーーー〜っ…だからさ、隊の皆んなもだけど恩人を見捨てて行けるワケないし…」

パキッパキッ

「ましてやそれを害しようとするヤツらなんかはね、全部まとめてブッ倒してやるよォッッ」

ズザッ








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