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RIGHT MEMORIZE 〜僕らを轢いてくソラ  作者: neonevi
▽ 二章 ▽ 明日は今日を嗤い昨日は今日を憫んだ
47/115

2-1 身をテイッして

sideミレイン


「このままでは第二砦街(われわれ)は拭えぬ失態を侵すことになるッ。悠長に会議をしている暇があったら直ぐにでも追い掛けるべきです」

「そうだッ、奴らは実質150足らず。追い付きさえすれば従わされている衛士(レィヴ)達も居るんだ。我々が解放されたと知ればそれで終わりだろ」

「じゃあどうやって追い付くんだ?残された獣馬は少ない上に堰き止められた大橋は超えられん。人数どうこうの前に追い付ける足が無いだろーーがッ」

「ビダンの性格を考えろ阿呆っ。だからさっさと自力阻止は諦めて、衛都(レィレン)への伝達に切り替えるべきなんだよっ」


内部からの離反と言う、初めての事態に紛糾する会議。



「…ベルキー」


お父さんの声に皆がピタリと黙る。


「何でしょうか団長(ナーグス)

「お前達斥候部隊なら、奴らよりも先に衛都(レィレン)へ辿り着けるか?」


「……そうですね。奴らが出た時間と人数からすれば、脚に自信のあって能力の高いの30、いや20人って所なら多分行けると思います」


「………… 」


それを聞いた何人かが安堵の色を浮かべる中、お父さんは難しい顔のまま。


団長(ナーグス)?ならばすぐにでもベルキー隊長らに出立のご命令を」


生真面目な性格の第7隊隊長が言う。


「……皆、今一度考えてくれ。何故ビダンはベルキー達を殺さなかったと思う?もしくは痛めつけるだけでも出来た筈だ」

「それは、…ビダン隊長が言っていた様に我々が目的ではないからでは?」


「フ…敵の言う事を鵜呑みにするのか?その言葉を信じるのであれば、奴は次に邪魔をする者には容赦をしない、とも言っていたぞ?」


副団長(リーグス)… 」


「クライオス、続けろ」


「確かに身内から裏切り者を出した以上何もしない訳にはいかないよな?だが何かしらの罠は必ずある。俺達をバラけさせる為あれだけの段階を踏んだヤツが、その目的自体の遂行に穴を作るとは到底思えん。良い予感はしないな」


クライオス副団長の言葉には、興奮していた一部の隊長らも押し黙り、同じように感じていたお父さんはクライオス副団長を見ている。


「ただつい先日ウチの副隊長が無茶をして、そのお陰で俺達はこうして居られる訳なんだが… 」


続ける副団長(リーグス)は少しだけ砕けた口調で私を見ると、追随する隊長らの生温い視線に、私は居心地が悪くなる。


「……だがあれは、本隊が居なくなった後だから偶々成功しただけだ。お前らは俺達を助ける為、ミレインが死んでいたとしたらどうした?街中に吊るされるミレインを想像してみろ?」


けど少し間を空けて放たれた副団長(リーグス)の言葉には、皆視線を泳がしたり下を向いたりしてしまった。


「つまり犠牲を覚悟しなければ…と言う事だな」


お父さんの言葉にクライオス副団長は頷いた。



「……取り敢えず行きますよ」


「ベルキー」

「今回の事、いの一番に気付かなきゃならない俺達が真っ先に捕まった。副隊長(コイツ)は勿論のこと隊の奴らも同じ気持ちです」


淡々と言ったその言葉からは、彼の静かな憤りを感じた。


「それに俺はお嬢じゃないからな、もしも死んだら笑ってくれれば良いさ」

「ベルキーお前っ」


元傭兵らしく明け透けな言い方をするベルキー隊長に、リングマー第1隊隊長補佐が声を上げる。


「リングマー」

「ハッ」

「お前はどう思う?同じ隊長格としてではなく、付き合いの長い友として」


「………申し訳ありません団長(ナーグス)、残念ながら私の気持ちは関係ありません。コイツは言い出したら聞きませんから」


言われたベルキー隊長は鼻を鳴らして天井を仰いだ。


「そうか。ならばベルキー」

「ハッ」

「第3隊に衛都(レィレン)への伝達と、可能であればビダンらの進行阻止を命ずる」

「承知しました」


「ではこれより第4隊以下は、第3隊の補佐協力に速やかに当たれ」


「「「「「「「「「「ハッ‼︎‼︎ 」」」」」」」」」」








sideスオル


「〜以上が今回の特別任務のメンバーだ」


「いやっ、ちょっと待って下さいよ副隊長。どうして俺が入ってないんですか?」


((確かにスオルは5席だぞ?)) ((あぁ))


周りが言うように上席で呼ばれてないのは2人だけ。

3席が今回の任務に適していないのは確実だけど、何故俺が…


「…スオルか。確かにお前の能力は高い。けどお前、馬獣の扱いが苦手だろう」

「いや、馬獣は今回使えないでしょっ」

「今回の任務の第一目標は?」

「現状を衛都(レィレン)へ伝えることです」

「そうだ。だから奴らに追い付いた後、取り戻した馬獣を駆り最速で向かう必要がある」


「……っ」


((けどそこまでか?)) ((だよなぁ))

((スオルは俺より上手いぜ?)) ((お前は下席だろっ)) ((席外のお前に言われたくねーよ))


「副隊長、スオルは使える。そこまで言うのなら加えてやれ」


「 ……分かりました」


よしっ


隊長の鶴の一声で副隊長は了承した。






「おーい、ハーネスあと二個追加してくれー」

「分かったーー」


陽が昇り始めてすぐの時間、中央広場は衛士(レィヴ)らでごった返す。


これが裏切りの阻止じゃなければもっとテンションも上がるのにな…



あッ…


無事、だったんだな……良かった。


団長(ナーグス)副団長(リーグス)と話しをしているミレイン副隊長は、いつも通り凛々しくそして可憐だった。


と俺が見惚れている視界の端から走り寄る人影が…


っておい、何やって…

ダッタタタ…


んだよッ

タタタッ


クソッ

タタッ


間に…

タッ


「××ッ××(ミレッ危… ) 」ダタタッ…


『ドカっ』

「ぐぅッ」ドサっ…


ナイスだッ


ミレイン副隊長へと迫る人影の間に滑り込んだ男は、男の蹴りを両手で防ぎつつも吹っ飛ぶ。


「ヒロっ⁉︎ 」


慌て駆け寄るミレイン副隊長。


「押えろッ」「おぉっ」

「××、×××っ、×××××××××〜(ぅぐ、てンめェチビッ、いちいちいちいち邪魔ばっかすんじゃぁねえェェっ)」


あっという間に押さえられたのはモサイ。


「ヒロっ、××××××っ?(大丈夫っ?) 」

「いっつぅ… 」


ヒロと言うらしい男が思わず呻きつつ、押さえる左の前腕からは血が滴っていた。


「大丈夫、すぐに止血する」


刺し傷…

深さは、…4cmってとこか。


「痛ぅっ」


ギュっギュゥゥっ

「あんた小さいのにやるな」


ボキャ

「グォぉおあぁァつ」

「全く、検査をした奴はどこを見てる」


悲鳴を上げるモサイ。

右脚を容易く掴み上げる副団長(リーグス)は、捻るよう無理矢理引き抜いたブーツを放ると、その先からは小さな刃物が出ていた。


怖、今のワザと折ったよな…



「グっギィぃぃ…クッソがぁ」


逆さまで歯ぎしりするモサイの顔は、尋問により既にボコボコ。



「モサイを連行してたのは誰だッ。後から事情を聞く、捕まえておけェッ」


「モサイ?××××××××××××××っ(僕はモサイなんかにやられたのっ) 」


怒る団長(ナーグス)に触発されたのか、目の前の小柄な男も憤る。


「おぉ〜、××××××××××××××××××× (ミレの隊服に見惚れてたかと思いきや真・愛の戦士参上) 」


だが背後から近寄って来た仲間には、緊張感のカケラもなく


「×××××××××、×××××××××××××× (いや見惚れてたけどさ、せめて守護者(ガーディアン)とかにしてよぉ) 」


それを受けると途端、目の前の男も口元を緩ませた。


にしてもこの2人の気配…

今こうして手当にと触れてるってのに……何なんだ?

まるで霞か霧だよ。


「治療を替わる」


その異様さに手が止まりかけた俺は、駆け付けた衛生班の声で我に返り入れ替わる。


「ありがとう」


ん?


投げ掛けられた不思議な声音。

俺か?と振り向くと、ソイツは女の呪霊のように佇んでいた。


「…あぁうん」


「××?×××××××?(何?何て言ったの?) 」

「××××××?××××××××× (この流れだよ?礼に決まってんじゃん) 」

「×× (そっか)…、あんがっとう」


「…フっ」


だが戦慄しかけたのも束の間、彼らの余りにも無邪気な雰囲気に、ついと口が綻んだ。


負傷したばっかってのに、なーんか変なヤツらだな。



「またも娘を助けられたな。すまない」


団長(ナーグス)が心底申し訳なさそうに頭を下げるのを横目に俺はそこから離れた。



()()()…か。


やっぱあの2人か、捕らわれた幹部達を助け出してくれたのは。


「こっちこそ、ありがとう」


「………… 」


リアクションはよく分かんないけど、何となくはにかんだ様な気がした。





……


二時間後。




ザザッザザッザザッザザッザザッ…

「ハァっハァっハァっハァっ」


っ…

サインだ。


"一旦ペース落とす"

"補給せよ"



ザっザっザっザ…


フゥーーーー…


ゴクゴクゴクっ


((よぉ、さっきはえらく食い下がったな。何か理由でもあるのか?))


((いや個人的な理由はない。ただ実力的に行くべきだと思っただけだよ))


((…そうか))

((何かおかしかったか?))

((いや、危険な任務になるだろうからさ、ちと不思議に思っただけだ))


そう言ってソークは離れた。






……



夜。





ザっザっザっザっザ…


あ、居た。


ザっザっ



((〜で、ガラとの合… ))


ザっ…

「隊長」


「……どうしたスオル」

「今朝はありがとうございます。俺を加えてくれて」

「俺はただ能力で判断しただけだ。それよりも仮眠を早く取っておけ」

「あ、はい」


一言言えた俺は、そう言われ隊長から離れた。



ザ、ザ、ザ…


ザ、ザ。


合流?

ガラ?って誰だ?



「おいスオル」

「なんだよ」

「仮眠前にションベンでも行かねえか?獣が出たら嫌だしよ」


小便か…そうだな。


「分かったよ」





ジョロロロ〜〜〜〜


「はぁ〜〜〜…もうちょい行けばリプの街なのになぁ〜」


少し恨めしそうに言うソークだけど、任務上人目に付けないのは分かっている。


ジョロロ〜〜〜


「そうだな」


俺は溜まった疲れを吐き出すように15m下の川目掛け大放水。


ジョロ〜〜…トっトっ…

「スオル、お前は死ぬの怖くないのか?」


先に小便を終えたソーク。


「怖くない訳ないだろ?けど逃げられない死は幾らでもある。だから戦う気構えは常に持っていたいんだよ」

「そうか、流石だな。…けどまぁ多分死にはしないよ」


ジョロ〜〜…トっトっ…


「ん?何が… 」

ダタタッ


なッ⁉︎ 嘘…


モノをしまいながら振り返った時、ソークは短剣を握り俺目掛け突っ込んで来た。


「ドリャーーーーッ」

『ドンッ‼︎ 』ーー



ーーー「うっワァァぁーーー〜あぁ〜ぁ〜… 」





ーー〜〜〜〜…『バシャンっ』










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