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RIGHT MEMORIZE 〜僕らを轢いてくソラ  作者: neonevi
▽ 一章 ▽ いつだって思いと歩幅は吊り合わない
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1-29 Trick & Treat〜 仰天Witch

sideミレイン


ハァ、…はァ…



私は…まだ…




走れて…いる。



動く地面がずっと映っているから。



… … …


ハぁっ… はぁっ…


それに地面を突く感触と、絶え絶えながらも続く呼吸の音も分かる。




… …


なのに微睡んでいるかのように意識が薄い…



… …



朦朧とする…




ハぁっ、…ダメだ



… …


余計なことは…




ハぁ…はァ、足を…




ハぁ…ハァ…



前っ…に…



ヒロっ…



((シューーーージジィっ))



急な気配を感じた…気がする。


だけどいつもみたく反応出来ない。



ハァっハァッ…何かくる?


…ひと?


けど…力が…


入ら…な……くぅゥッしっかりしろォ

どれだけの鍛錬をして来たッ


ここまで来て…

『ギュゥゥッ』


引き摺って来た足腰に今一度気力を込め直し


ヤられるか「ァァアッ‼︎ 」

シャァァッ


そして数瞬遅れて剣を引き抜いた。



ザっ、ザっ…ザ…ザ…


けど3mほど先にいるその誰かは警戒すること無く、乗り物から降りこっちへと近付いて来た。


「「………… 」」


見たことない装備に反射的に身構える。


けど…力を込めた先から抜けてくよう…


でも…負けないっ



「…おい大丈夫か?落ち着けよ。ミレだったよな?分かるか?」


そう言って目の前の人は目元の防具を外しながら話し掛けてきた。



「〜〜っ…ぅッ… 」


…う嘘っなんでっ⁉︎


「何があった?ってヒロ君の事も聞きたいけど言葉も分かんないしなぁ……先ずはコレ、飲みな?」


彼は身体をズラし私の後方を眺めてから、そう言って水を差し出してくれた。



ゴクゴクッゴクっゴクっ「ッはぁっ」


真っ逆様にした水筒から水が無くなると、彼はすぐに次の物を手渡して飲む動きをして見せる。


コレも飲む物か…


「……? …?」


そう思いつつ柔らかなそれを逆さにするけど、細い口からは何も出て来ない。


横を見ると彼が握る仕草をした。


『ビュルルプルプルプルっ』

ぅわわっ‼︎


舌先に滑り込んで来た感覚が全身を溶かすように一気に広がる。


甘いっ


甘いィィーーーー〜っ


チュルルルっゴクゴクゴクッ

「…っハァ〜〜〜」


あっという間に飲みきった私はほとほと枯渇していた自分の状態に気付かされ、そして糖分によって回り始めた頭は不可思議さに混乱する。


何故彼がここに?


いやそれよりも…


「ヒロ君は生きてるか?」


「…ッ、おわれてにげた。シロよびにいって言った。助ける、きて」


言葉を探していた私は咄嗟に頷き答える。


「………… 」


何故動かないの?


「はやくいくっ」


彼を見て焦れた私は強く促す。


「待て、まだだッ」


しかし返って来たのは厳しい口調。


まだ?

貴方はヒロを助けに来たんでしょ?

だったら…


「ヒロ君の所からここまでどれだけ掛かった?時間、分かるか?」

「1日、ずっとはしった。きた」

「1日ずっと?って、ずぅ〜〜〜っと?」


驚きつつ手を動かす彼に私は頷く。


「マジか……けど走って丸っと1日。分かった」


そう言った彼の手招きに従って歩き出した瞬間…


「あっ…」

『ガシっ』


縺れて転び掛けた私を咄嗟に支える手…


「はぁ…、よくここまで頑張ったな…凄ぇよ」


「〜〜ッ… 」


と、頭の上から響く優しい声に私の涙腺が緩む。


かっこ悪い…



そして体勢の戻った私からスッと離れた彼は、乗り物の後ろの車輪から出ている棒へと乗った後…


「乗れるか?」


と親指で指し示し椅子へと座った。


ギシィ


私が後ろに乗ると彼は振り返り、私の片手をサッと掴み自分の肩に乗せた。


「ミレ、今からあっちへ行く」


そう言ってシロが指差したのは逆方向。


「⁉︎ 」


意味が分からないっ


私は首をを大きく左右に。


「大丈夫だ。任せろ」


「…ぁ………っ」


けれど力強くそう言った彼には微塵の迷いも無くて、何も言えなくなった私はその感情で以って理解した。


" シロを呼びに行ってッ『ドンッ⁉︎ 』"


優しいヒロが初めて見せた強い意志の理由。


それは絶対的自信がもたらす圧倒的信頼感。



「よし、しっかり掴まれ。辛くなったら止まるか交替するから」


そう言って手首を回す仕草をしたシロに頷きを返し、私達は来た道を急ぎ戻って行った。




……




カシャカシっジャーーーーーーっカシャカシャジャーーーーーーーー…


「……………… 」


走る振動の中細い棒にずっと立ってるのは思っていた以上にキツイ。


…っ


でもまだ耐えられる。

まだまだ…


急がなきゃ。


『ジジュゥ… 』

「辛いのは言え」


急に止まった彼は乗り物を降り私も降りさせて、そしてトントンと椅子を叩き私を座る様促した。


それに従って恐る恐る座ると、彼は支えながら乗り物を押し動かす。


「漕いで」


そう言いながら回す指先を見てペダル(踏み板)に力を乗せて回すと…


「よし、そのまま行くぞ」


グンと走る私に付いて彼は並走した。


うわぁ…

これめちゃくちゃ楽だっ…すごい。


その新しい感覚に慣れた頃、シロは後ろに飛び乗った。



カシャカシっジャーーーーーーーっカシッカシャジャーーーーーーーーー



それから交替を繰り返しつつ、私達は予想以上の早さで大海への道を進んだ。




……





『ザザァーーーーー…ザザァーーーーーァン… 』


((2人乗りだと+30分って所か…… ))

ガサっガサっ


背負いカバンを漁る彼から投げ渡される食べ物と水。


「ミレ、ここ、待ってろ」


そしてシロは靴を脱ぐと浜から海へと入って行った。



もぐもぐもぐもぐもぐもぐ…


そして()()()まで行った辺りで止まった彼は少し屈む。


「えっ‼︎⁉︎ 」


直後水の中から出てきた梯子を見て思わず声が出た。


理解が追いつかない私がパンを咥えたまま固まっていると、彼はそれを上がって行き消えてしまった。



『ザザァァァーーー……ザザァーーーン… 』


さざめく大海の中に立ったまま梯子。


だけど不思議なその光景を前に感じるのは安心感。


見たことの無い向こうの装備。

抱えていた武器に移動手段。

ヒロの救援の為に万全の態勢でこっちへ来た彼が、ワザワザ今一度戻って行った。


だから私はヒロが信じた彼を信じて待てば良い。


…もぐ、もぐもぐゴクン。




『ザザァァ…ァー……ザザァーーーン… 』


あっ


数分経って彼は視界に現れると、梯子をまた水に沈めこっちへ戻って来た。




ザっザっザっザ…

「ブーツ、脱げ」


そう言われた私は一瞬だけ躊躇したけど、少しの恥ずかしさは彼の真剣さに押しやられてしまう。


シュルっ


普段用のブーツじゃこうなるよね…


紐を緩めて脱いだ中履きは、付着した血と汗で滲んでいた。


「…ぁっ」

シュっ…シュっ


シロはそれを無言で脱がし…


トポっトポっパシャっピシャっ


水で足を流してから軽く拭く。


「少し痛いぞ」

ピシャーーピシャピシャっ

「ッつぅ… 」


そう言って取り出した洗浄液を勢いよくかけ、そのまま一連の処置を慣れた手つきで進めていく。


キュッ

「…よしっと」


そして当て布と包帯を結び終えたシロは私を見もせずに、今度は私が脱いだブーツを掴み取った。


私は柔らかな布の巻かれた箇所を触りつつ、真剣に手を動かすシロを眺めていた。



「っし、ほら履いて。中にガーゼを貼り付けたから」


そう言って見せてくれたブーツの中には緩衝材が貼られていた。



ザ…ザ…グっグっ


私は立ち上がって軽く歩く。


うん、かなりマシだ。


「まだ30分はかかる。今のうちに少し寝ろ」


私の顔を見て表情を緩ませたシロは指を3本立てつつ敷物を出し、私の腕を優しく引いて横になる様に促した。



疲れ切っていた私はその丁寧な扱いにされるがままに横になった。






… …


… … …



…レ」



… …



…ミレ」



…ミレおい起きれるか?ミレ?」



声に引っ張られるように目を開ける。


……ぅ、「ん… 」


…あぁそうか、寝ちゃったんだな。


「ほら」


濡れた布を手渡された。

それで顔を拭けと言う事らしい。


サッと拭くと目が覚めてきて、少しずつ頭がすっきりとしてきた。



「…どうだ?行けるか?」


拭き終わるのを待って言ったシロに頷きを返すと、彼は私達の横を指差した。


「ッ⁉︎‼︎ 」


そこにはあの乗り物が二台並んでいる。


なっなんでッ‼︎⁉︎


「ぷっ」


私はあまりの驚きに口を開いたまま彼を見ると、シロは少し吹き出して笑った。


そんなに変な顔だったか?


けどこの人にはさっきから驚かされてばかり。


そう思いながらもう一度横を見ると、乗り物はやっぱり二つある。

増えた方はシロと同じ様なのだけど、色が紫で所々尖っていてより強そうな印象。


「ちょっとツレに借りた…ネクロマンシー号。大事に乗ってくれよ」


「ネクロ…マンシー?」

「…ぁぁ、うん」


どう言う意味かはよく分からないけど、少し小声になったシロに私は頷いておいた。


「っし、これで今から出て明日にはつくぞ」

「うんっ」


準備の整った私達は力強く頷き合う。



ヒロ、もう少しだからね。


絶対、絶対に無事で居て。










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