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RIGHT MEMORIZE 〜僕らを轢いてくソラ  作者: neonevi
▽ 一章 ▽ いつだって思いと歩幅は吊り合わない
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1-19 旦捨離〜 Drop

side御月


店内の服を畳み直しながらふと考える。


「…………… 」



"あっ御月、明日の午後店に居る?ならちょっと話しがあるから居てね"


いつもならその場で用件を言う人が溜めた訳だから、まぁ今回もと色々想像はしてたんだけど…


異世界?

なんだそれ笑


けど嘘や誤魔化しを決してしないあの人が言うんだから本当なんだろな…


「…ぷっっ」


こんな事をスンナリと信じるオレもどうかしてるよな。


けど人間不信でどうしようもなかったオレが、今もこうやって一緒に居られるのはそのお陰。


当たり前だけど初めは半分も信用してなかった。

だから余計となのか出会ったきっかけは鮮明に記憶している。


たまたま出会った人間に、たまたまスタッフを探してる人がいると聞いて…


そこから今が始まった…ーーーー





←←←

7年前

←←←←




『『バチィっ‼︎ 』』

「ちょっとモテっからって調子に乗んなっ。浮気性のくそDV野郎っ」


()っツ。


相変わらず加減を知らねー女…



高校の時付き合ってた彼女と卒業してすぐに別れた。

まぁ十代の恋なんてそんなもの。

と言っても2年近く付き合ったんだけど。




それから自由になったオレは色々と面倒くさくなり、バイトで食い繋ぎつつフラフラと遊んでた。

ちょっと稼いでパチスロに行き、当たればその金でキャバに向かう。



「あんたツラは良いよね」

「あははっ口が悪ぃなぁお前っ」

「キャハハっ」


口は上手い方だから誰とだって合わせられる。

ヘラヘラやってればこんな感じで嫌な顔はされないし、適当にチヤホヤされればそれで満足。


まだまだ若いんだからこんな毎日も良いよなぁなんて過ごしたら、あっという間に3ヶ月が経った。




……






ティンティロリン♪…ティンティロリン♪

「…ん」


着信は元カノからだった。


「…………… 」


スゲェ気の強い女でケンカばっかした。

怒るとすぐに手を出すヤツで、ある日エスカレートし過ぎた時に笑って腹パンし返してやった。


ティンティロリン♪…ティンティロリン♪


"おごぉ" ってうめき声とあのブサイクな(ツラ)は今も記憶に残っている。


くくくくくっ


「…はい」

「あ、御月?久しぶり、元気?」


別れて以来に聞く声だったけど、たかが数ヶ月じゃ別に普通か。


「ん?あぁまぁ元気だよ。どした?」


「…………うん。あの、ね…………デキた、みたい」






「………は?」




オレは父親になった。






『バキィっ‼︎ 』ドタァ


「お前コラぁ、人様の娘さんに何していやがるッ」


帰って両親に伝えると、いきなり親父にぶん殴られた。

続けてお決まりの "どう責任を取るつもりだ" のセリフ付き。


「っ…くく… 」


殴られるのもそのセリフも予想通り過ぎて笑えた。


いつのドラマだよ。

責任?こっちが聞きたいっての。


それに対しておかんは何も言わず、相手のご両親に早く挨拶に行きなさいと言った。


正直思うところは多々あったんだけど、自分のやったことなのは間違いない。

今考えれば他の選択肢もあったと思うけど、あの時のオレは大人たちの作る流れには逆らえなかった。


そして観念したオレは心を入れ替えて仕事を探し、地元の製造業の会社に無事就職が決まった。





……





『ウィーンガシャッ、ガチャッ、ギュルギュルギュルギュル… 』


やりたい事では無かったけど、毎日やってればそれなりにやり甲斐も出て来る。

元々手先が器用なオレは細々とした事は嫌いじゃないし…




……





「御月、お前また受かったのかっ」

「あぁハイ、まぁ運良く」


そした働きながら業務に役立つ資格をコツコツ取っていった。


するとそれなりに周りにも認められていき、3年目には現場の責任者にもなれた。

その頃には2人目も生まれたオレは、それなりに自分の人生に満足していた。




………



……








だけど就職から5年が経ち仕事にもすっかり慣れた頃、オレたちの夫婦仲は冷め始めていた。



「……また惣菜かよ」


「…………… 」


「子供の身体のことも考えろよ」


「…はぁ?そうやって言うならさ、アンタも家事を手伝ってくれれば良いでしょ?私だって働いてるんだからさぁ」

「お前はパートだろっ」

「パートだって仕事なんだよっ。じゃぁお前両方やってみろよっ」


「……ハァ、もういい外で食ってくるわ」

「好きにしろっ」



何を言っても言い争いにしかならない。

言葉の無力さをほとほと思い知ったオレは、それでも働くこと稼ぐことで愛情を示せればと、これが大人になるってことなんだと思い仕事に集中した。




……






ガチャ、『バタン』


ん?


そんなある日家に帰ると、家の中の景色が一変していた。


「…は?……、……、…… 」


家具家電がすっかりなくなっていたリビングは、住み慣れた自分家とは思えない寒々しさ。


部屋を間違えた?…わけない。


空き巣?いや、違う。


他の部屋も物色し散らかされた様子はない。


そしてオレは唯一残されたソファーとローテーブルにフラリと近づくと、そこには1通の手紙が置かれているのに気が付いた。


「………… 」カサっ


嫌な予感しかないそれを手に取る。


部屋の中一人きりで立ち尽くし開く手紙の、カサっカサっと擦れる音が耳に触った。







「………… 」







「………… 」







読んでも頭に入って来ないそれを、二度三度…いや何回読み返したのか分からない。


更に殺風景に模様替えをした部屋は、夢でも見てるみたいに現実感を薄める。







「………… 」







それでも時間が経つにつれ少しずつ理解する。


ここ何年かのすれ違い。







「………… 」







アイツの笑った顔。


ずっと見てなかったな…



[ 出て行きます、別れてください ]


頭の中にあいつの声が響いた。


最後の言葉はたったそれだけ…



冷え始めていたと思っていたのはオレだけで、アイツは冷める気持ちすらもとっくに無くなっていた。


ーーフッ


理解が追いついた瞬間に力が抜ける。


『ザシィっ』


膝から崩れたオレを支えたのは、最後に残っていた古いソファー。



……




そこからはあまり覚えていない。


立ち上がる事すら出来ない虚無感の中、ソファーの隅のホコリをぼーっと取り続けたことくらいしか…





……





「…ぅぅ…ぅん」


いつの間にかソファで寝ていたオレは携帯を見る。


毎朝の起きる時間だった。






『ウィーンガシャッ、ガチャンッ、ギュルギュルギュルギュル… 』


身体が動く以上出勤をする。


随分と社会人らしくなったもんだと自嘲の笑みがこぼれるけど、家族が消えたあの場所に残されるのは嫌だった。


そんなオレが黙々と手を動かしていると、雰囲気を察したのか先輩が様子を伺って来た。

正直話すのは面倒だったけど隠すのも情け無い気がしたオレが答えると、驚いた表情を取り繕った先輩はお決まり言葉を返してくれた。


"その内帰ってくるさ"


と。





……





暫くして手紙が届いた。



『カタンっ』


オレはその日の内にサインをしてポストに投函した。



その後嫁のことは同級生(ツレ)から聞かされた。

どうやら好きな男がいたらしいと。








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