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RIGHT MEMORIZE 〜僕らを轢いてくソラ  作者: neonevi
▽ 一章 ▽ いつだって思いと歩幅は吊り合わない
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1-13 続1st Smile〜 破顔一緒に

sideヒロ


『バシャっバシャっ』

グイッ「ちょ…ミレっ?」


『バシャバシャっ… 』

グイィッ「こっち、行く」


ミレはそう言って僕の腕を引いて歩く。



バシャっバシャ、ズシャズシャ…


30mほどで浅瀬から浜辺に上がり、更にそこから草っ原を抜けた森に向かって行く。



ザっザっザっザ…

グイっ

「…………… 」


そしていくつも生えている木の一つ近づいくと、その根元に押し付けられるようにして手を放された。


「ヒロ、ここダメ、かえって」


はっきりとしたミレの口調には、強い拒絶の意思が感じられた。


「…っ、ミレを手伝うよ。ミレといる」


僕は一瞬詰まりそうになったのを飲み込んで、出来る限り自然に聞こえるように意識しながら笑顔で言う。


だって唇を噛んだみたいなミレのその表情(かお)は、何かを我慢してるような、今にも泣き出してしまいそうな子供みたいだから。



「……………… 」


でも俯いて目を伏せたミレは何も言わない。



「一緒にいる」ギュ


僕はそう言ってミレの手を握った。


「…………… 」


少し困った様な、少し恥ずかしいかの様な、そんな複雑な顔をしているミレ。


でも僕にとっては何でも良い。


だってやっと追いついた。


この数日間年甲斐もなく強がって追い続けた君との距離を、"行け" って叫ぶ衝動を踏み台にして漸く…


漸く無くすことが出来たんだ。


『ギュゥっ』


だからこの手は絶対に離さないよ。


「………… 」


僕のこの揺らがない決心を、視線に込めてミレに伝える。


「…………ふぅ」


すると少しして小さく息を吐いた彼女は、ゆっくりとだけど僕の手を握り返してくれた。




『ザザァァーー…ザザァァーー…… 』




……





少しずつ、少しずつ…


ミレと僕以外誰も存在しない夜の世界が、薄闇に侵食されて消えて行く。



『ザザァァーーン…ザザァァーーーー…… 』


…にしても


『ザザァァーーーーン…ザザァァーーーー…… 』


全っ然眠れない。


浜辺の波ってこんな騒がしかったんだな。


ずっと疑問だったけど言葉も通じないからと棚上げしていたミレの素性については、人を殺傷する明らかな犯罪を犯していたことも含めて考えないようにしていた。

日に日に膨らんだ彼女を放って置けないって強い思いが全てに優先され、何がどうであろうとどうでもいいとしてたから。



『ザザァァーーーーー…ザザァァーーーーン…… 』


けど一緒に来てくれていたシロごと消えてしまった世界(けしき)


まさかが形を成し、有り得ないが繋がった。


けど、それでも未だ信じられない感覚(ぼく)と、現実だよと突き付ける経験(いま)が手加減なしで殴り合っている。


「……んむ。……ふぅーー〜〜…」ゴロ…


あの時は必死過ぎてつい飛び込んじゃったけど、戻れるのかなぁこれ…


仕事は…まぁ解雇(クビ)でいい。

突然の欠勤は申し訳ないけど僕の替わりはいくらでもいる。


問題は両親(かぞく)と無理矢理巻き込んだ幼馴染を向こうに残してること。

これが()()不幸な境遇の人生で、()()不幸な事故に遭遇しちゃった異世界転生なら気も楽なんだろうけど…


「はぁ〜〜〜〜ぁ… 」


親は1〜2ヶ月くらいは大丈夫だろうけど、シロは怒ってるよなぁ…絶対。


"はぁ〜〜〜〜…んで?なに?まさかまたまたまたまた惚れた系?"


"いやっ、そういうのじゃなくて、…まだ会ったばっか"


"ふぅ〜んまぁいいや"


こうやって思い返すといつもシロ(アイツ)の言う通りなんだよなぁ。


事ここに至っては否定出来るはずもない。


僕はミレのことが好きなんだ。


だから例え戻れるのだとしてもすぐには戻れない。

ミレからはまだ何も聞けていないけど、でもあの感じからして何かしらの問題を抱えているのは間違いない。


それをクリアにしないと…



そんな風に頭の中を巡らせていると、水平線に境界が引かれ海が色づき始めた。


すぐ側には眠っている彼女とひっくり返して干している靴と靴下。


僕は音を立てないように静かに身体を起こし、漸く捉えられるようになって来た周囲の景色を改めて眺める。


「………、……… 」


そして右、左と浜辺を見渡してみるけど、とりあえず目の前に広がるのは一面が海で対岸も島も何も見えない。



「…………で、森か」


振り返った背中側は浜辺を上がってすぐの森。


その入り口にいる僕は更に後ろへ身体を動かすけど、ここからでは鬱蒼と生える高い木々の森ってことしか分からない。


スッゴイ気になって仕方ないけど、せっかく寝てるミレを起こしたくないからな。


そう思いふと彼女を見ると、ミレはパチリと目を開いた。


「……ぁ、おはよう」


「……おはょぉ… 」


とても眠たそうなミレだった。


だけど僕はただただ嬉しくなる。

失くなり掛けていた明日をこうしてまた2人で迎えられたことに。





「ねぇミレ?ここ、危なくない?」


僕は浜辺から背中の森まで大きく手を回し、それから自分の首を絞める動作をする。


「…ぁ〜…大丈夫。う〜んうん…大丈夫…と思う?思える?」


疑問形?


つまりこの辺りは多分安全。

安全ぽい感じ?


「………… 」


と言うことは危険な場所もあるってことだよね。


もしかモンスターとか居たりするのか?

そう考えればミレの持つ短剣だって当然の装備なワケだし…

こんな事になるんなら僕も刃物の一つでも持って来るべきだったか。


「ッフゥっ」ザッ


僕は勢い良く立ち上がる。


ザっザっザっザっザっザっザ…


そして森の奥向こう、全景を視界に収めるため海の方へと浜を下がって行く。


「へ〜〜ぇ、凄い山々だぁ〜 」


身体を波打つような驚きを抑えようと、つい独り言が口から漏れる。


はい確定ね。

異世界異世界。


分かってたけど。




ザ、ザっ、ザ、ザ、ザっザっザ…

『ジャブ、ジャブ、ジャボっ、ジャボっ… 』


「大体この方向だよなぁ… 」


僕は浅瀬に入り昨夜の辺りまでゆっくりと歩く。

疎らな記憶を頼りにして。


『ジャボっ、ジャポ、ジャポっ、ジャポン… 』


そしておおよその位置まで進み慎重に手で探る。


シュ、シュシュ、シュシュ…

「……、………、………、…… 」


けれど手は空をきるばかり。


そしてどれだけ目を凝らそうともそれらしい場所は見つけられない。


『ジャポ… 』


だめ……か…


入って来たのだから戻れるでしょ?なんて言う当たり前は通用しなかった。


けどまぁそんな事もあるよな?と、予想していた分ショックは死ぬほどじゃなかった。



『ジャボっ、ジャポ、ジャポっ、ジャポン… 』

シュシュ、シュシュ、シュシュ、ブンブンっ

「……、………っ、………っ、…ーー〜っ 」



うそ、かなりオチた…








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