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RIGHT MEMORIZE 〜僕らを轢いてくソラ  作者: neonevi
▽ 四章 ▽ イエナイ疵痕は穏やかに心蝕す
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4-16 ミReイン〜 T Reason

sideミレイン


これで内裏(ノァ)2の側近1。

急がないと。


「ミレイン様までここまでとは…ハハ、参りました」


こちらの返事を待たず、懐から取り出した扉の鍵を投げるイヴァンシは、両手を上げその場に座り込んだ。


パシっ

「賢明だ。下もウチの副隊長が封鎖してる」


「でしょうね」


ーダタッザ

「間取りは分かってるな?」

「はい」


扉へ手を掛けた隊長が、前を向いたまま確認する。

" 気を抜くな、ここからが本番だぞ " と。


ガチン

『バターーンッ‼︎ 』


錠を開け部屋に乗り込むと同時、正面から右奥へと並ぶ窓から家具の配置、そして敵味方と人数を判別する。


「ブ、ブレィアストぉっ⁉︎ ちょ丁度、良い所に来てくれました近衛騎士隊長(リュレィヴナー)。暗殺者だ、バルハト様を狙う不届きな暗殺者を捕らえてくださいっ」


すると飛び上がる勢いで動揺する中年の内政官が、声を張り上げ指差した。


『ガキンッキィン‼︎ 』


シロっ、生きてたっ


最奥の窓から侵入したシロは、執務机の奥でバルハト兄と交戦中。

一番近くに居る側近の胸には矢が突き立っており、他の側近は未だ混乱中の様子のそこへ


「バルハトォォオーーーーーーっ‼︎‼︎ 」


部屋を震わせる隊長の雄叫び。


「………… 」


しかしバルハト兄は剣を止めはしたものの、こちらを向くのみで口を開こうとはない。


マルソラ隊長⁉︎


人数16人と数えた中に、このフラエ領でブレィアスト隊長に次ぐ実力者に目がいく。


それに第4の隊長、第7の隊長副隊長まで…


「マルソラ、ダッダフォルク、リトカー、ケーシャン。第二子バルハトに、紊乱工作及び不法密通の疑いがある。直ちに捕縛しろ」



「「「「…………… 」」」」


しかも彼等は、ブレィアスト隊長の命令に微動だにしない。


「確定…だな。家族持ちばっかネチネチと狙いやがって。この国は、いつからナルトアみてぇんなったァ〜〜ア」


肩を怒らすブレィアスト隊長が、更に一段低い声で唸るよう言うと、ビシビシビシッと音が鳴りそうな程に空気が張り詰めた。


「お前が直接来るとは意外だが…しかし、それならば止められる筈もないなぁフフ…フハハハハハハっブレィアスト、その力をもっと、もっと存分に振るってはくれまいか?」


「あぁん?」

「お前が言うそのナルトアも世代が変わり、三代振りの覇権宣言を行った。130年続いた仮初めの平和は終わりを告げたと言うのに、父上も兄君も、この危機が全く分かっていない。何年…何十年か先、我らに待つのは服従か…滅びだ」


「つまり自分が衛主(レィド)となり、フラエとこの国を変えようってか?笑わせる。家族や仲間達を、守るどころか犠牲にさえするヤツに、そんな大ごと成し遂げられる訳ねーーんだよッ」


「逆だ」


ブレィアスト隊長の圧にも一切怯まないバルハト兄。


衛主(レィド)とは絶対者。領内何人を踏み躙ろうとも許される存在が、一戦(いちいく)さ場で部下を守り瀕死とは…クク。そんな様でこの先どう領を導くと言うのだ?守るのならば守り切れ、出来ぬのならば覚悟せよ。それすらも分からぬ今の父オージンでは、これからのフラエとイグアレムスは守れぬッ『ドンッ』


変わったね、バルハト…


「はぁ…まぁおやっさんの蛮勇にゃ〜何度も何度も苦言してきた俺だからな、お前の言うことにも一理あるとは思うぜ。けど全っ然分かってねーよ。何故フラエが今も強いか分かるか?どうしてこの国は建国以来、一度として領土を失っていないと思う?一番近くで、一番大切にされていた家族でも、こんなに伝わんねぇもんなんだなぁ」


激情を震わせるバルハトに対し、さっきまでとは打って変わるブレィアスト隊長の言葉には、悲しそうな、心底空しそうな心情が溶け込んでいた。


「伝わっている、しかと伝わっている。父オージンは間違いなく偉大だった。だがどれ程の偉大さとて永遠ではない。そして遅いのだッ、お前も衛主(レィド)もこの国も。だから何と言われようと俺は信念を曲げん。俺のやり方で国を変え、そして守る‼︎ …最後にもう一度だけ聞こうブレィアスト。俺の下で…いや、俺と共に未来を守る気はないか?」


「ついて来るヤツら、支えてくれる人々。俺らの今いる場所ってなぁそう言うもんで出来てんだぜ?なのにいくらでも声を届けられる、恵まれた場所に居るテメェが選んだのが、こんなコソコソとした小汚い方法だぁ?本気で未来を変えたいってんならよぉ、男らしく真正面から堂々やれや。その身体に流れてるインの血が泣いてんぞ」


隊長の左手人差し指が、バルハトを射抜いたのち天を貫く。


「真正面から堂々か、実にお前らしい。が、それこそがこの隙であり、そこから失うものが多々有る…とは解らんか?今まででもずっと、ナルトアは水面下で動き続けていたぞ?綺麗事だけでは国を護れぬ…と、馬鹿に講釈したところで時間の無駄か」

「俺ぁ考えるのは全部ロビンノーグに任せてっからよ、馬鹿と言われてもどーでもいいわ。ただ俺は誰よりも前へ出て、誰よりも敵を屠る。尊きイグアレムスの衛士(レィヴ)として、信じたものは裏切らねぇ」


「フフ…一番厄介なお前を始末すれば、新たなフラエがここから始まる。マルソラ、ダッダフォルク、リトカー、ケーシャン、我が部下と共に押し入った反逆者を捕らえよ。これは綱紀粛正なり」


「「「「「「「ハッ 」」」」」」」


「「「「………… 」」」」


『バタン‼︎ 』


「やめてっ」

「きゃあっ『ブシュ』痛ァァぁあっイヤァァーーーーーーっ」


扉から女の子を引っ張り出した内政官は、動かない隊長らを見て、その肩口に短剣を突き刺した。


「ミポロォォっ」

「大丈夫よっ大丈夫、こんな傷…すぐに良くなるからっ」

「痛い、痛いよお母様ぁぁー〜… 」


叫ぶダッダフォルク隊長をマルソラ隊長が掴み、母は突き飛ばされた娘の傷口を必死に押さえる。


「マルソラ隊長っ、ダッダフォルク隊長っ、従うべき人間を間違えるな」


そして恫喝する内政官は次に、マルソラ隊長の息子へと剣を向ける。


「ぐっ、すまない…ブレィ」

「すみません、近衛騎士隊長(リュレィヴナー)


命令に歯噛みする4人の隊長副隊長は顔を歪め、鉛と化した足取りを引き摺るようにして詰め寄ろうとする。


「…気にするな。出遅れ(こうなっ)た責任は俺にもある」


しかし相対するブレィアスト隊長もそれは同じ。

全てを覚悟して踏み込んだとは言え、目の前に居るのは共に戦って来た仲間であり掛け替えのない友。


『ガキィッ‼︎ 』

「ー〜ッグゥっ」


その時シロがバルハトに斬り掛かった。


「きき貴様、人質が見えんんのかぁっ」


叫ぶ内政官がバルハトを見るけど、その前にシロが言い放つ。


『ガキッギィンッ』

「これ以上やれば、隊長を縛れなくなるぞッ」

「なっ…〜」


そう。

唯一バルハトを牽制する距離にいるシロが、ヤツを確保さえしてくれれば。


『ギギィ〜』

「フハハハハァっ良いではないかコソ泥ぉ。他人とは言え、貴様の方が余程座っているな」


それに対し高笑いしたバルハトは続ける。


「いいか、身の程を弁えぬコイツは俺が殺す。マルソラ、ダッダフォルク、リトカー、ケーシャン、誰か1人でも逆らったら人質全員を始末しろ。他の者の人質も、1人残らず全てだァッ」


バルハト…お前ぇ


「おいコソ泥。貴様のその隠密性(のうりょく)、コソ泥としては一流だ。名くらいは聞いてやる」


「…それよりバルハトさん。アンタの弟が死んだこと、知ってるか?」

「弟?ホルスが死んだのか?……大人しくしていれば良いものを、父の愚かな部分を真似るからそうなる。だが生まれつき脆弱な劣等など、居ても居なくとも変わりはしまい」


「そう、か。確かに自業自得ではあるな」


ーシュッ『ガキィッギィンッギィッ』


力任せに振るわれる荒々しい剣。

初動の見え辛い不思議なシロの剣筋が舞うも、その攻撃を慎重に受け、危なげなく捌いていくバルハトが鋭い反撃を返すと


『ギンッカキギィン』

「ッ〜、クッ… 」


肩、腕と、シロの防具が削られる。


「所詮は馬の骨」


その剣技は当然のことながら、体格・膂力においても差のある2人。


私も突っ込むべきか?

いや、それは肉壁にされているマルソラ隊長らが無事では済まない。

それに自身の身に危険が迫れば、バルハトは容赦無く人質を害せと命ずる。

そうなれば動くしかない隊長らと戦わざるを得なくなり、その結果隊長らは勿論、彼等の家族の命まで散らすことになってしまう。


他に何か手は?

このままではいずれ…


「フンッ」

ーービュォー


思考を巡らす最中、繰り出されるいなしからの返し突き。


「ッ〜ー」


なんとか身体を反らし、すんでの所で避けたシロ。

だけど体勢が崩れ無防備に。


マズイっ


「シロォーーーーーっ」


ーーフォンフォンフォン『ドスッ‼︎ 』


咄嗟に投げた私の剣が、バルハトを掠めるよう間を割って壁に突き刺さる。


ビキィ

「ミレイン、貴様… 」


その隙をつき立ち上がるシロ。

二度剣を交え勝てないと悟ったか、破れた窓へと一目散に走る。


ダタタッ

「この俺からはァ」


けど逃すまいと反応するバルハトの剣が背中に迫る。


ダメ避けてシロっ


ーービシュー


間に合わない。

そう思われたシロは加速、振り抜かれた剣をすんでで避け、その背中が破れた窓から消えると


「逃がさんぞコソ泥ォオーーーーぅッ〜‼︎ 」


追うバルハトは猛るままに身を乗り出し、獣の如き荒ぶりで曇天に吠えた。



最上の結果は得られず。

けれど落胆は無い。

こうしてバルハトの眼前まで詰められたのは、シロの奇襲(あしどめ)があったからこそ。


そして全てをかなぐり捨てたならば、ブレィアスト隊長の剣はバルハトに届く。


そう無情な取捨選択を覚悟した時



ーー〜『ゴドッドっゴロゴロゴロ〜 』



投げ込まれたのち床を転がるのは、第2内裏衛士隊長(ノァレィヴナー)の生首。


「ドラザン……。テンメェ〜クソロン毛ェ」


背後から突如現れたのは、扉を守ってい第1内裏衛士(ノァレィヴ)らの隊長であり、このイグアレムスにおいて最も恐れられている1人。


知る人ぞ知る死出の案内人。

< 黄泉交わし >こと処刑人アスワン。


国内有数の異名持ち同士がここに、初めて殺気を漲らせ対峙した。








10/4

日本初の女性総理と共にこの国は再び歩き出す

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