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RIGHT MEMORIZE 〜僕らを轢いてくソラ  作者: neonevi
▽ 三章 ▽ 其々のカルネアDeath
111/112

3-52 Wish 2pon a Dime〜 センベツ

sideシロ


スゥゥ…

「あはははっ裏切りとは最後に愉快なものが見れた。に、憎らしいが…私はここまでだ『ドシュ』グブっおォ〜」


九鬼さんから抜け出した黒い影は、捨て台詞の最中に光る槍に貫かれた。


「甘いぞ不埒もの」


シュルルルルッ


聞き覚えのある特異な声の主は、渦巻く黒い外套と共に現れた。


「その往生際の悪さはとことん醜悪。愚行の贖いを含めた代償を、キッチリと払ってもらおうか」


「アガぁっ、おガガガガっ、グガァァぁぁぁあーーーーーーーっ」


パキパキパキッバシャーーン


黒装束が長い指先を引っ掛ける様に動かすと、ヤツは断末魔と呼ぶに相応しい悲鳴を上げ、貫かれた腹から粉々に砕け散った。


「死んだ、のか?」


「どうでしょうか?憑代から真体の腑まで掻き毟ってみましたが… 」

ボトボト、ボトボトボトっ


開いた手からこぼれ落ちたのは、掌には収まらない量の生々しい内臓…らしきもの。


「どうもこれらは別物ですなぁ」


「「「「「〜ッー〜⁉︎⁉︎ 」」」」」


そう言って黒装束は愉快そうに言うものの、そこには言い知れぬ忌々しさが込められていた。


やっぱりコイツはヤバイ。


さっきまで新美さんにブチ切れていた八参も、黒装束の余りの存在感に固まっている。



「すまん…な皆んな。迷惑を、掛けた」


そこで気が付いた九鬼さんが身体を起こす。


「九鬼さん身体は?大丈夫なんですか?」

「銃創は、ヤツが浅い所で止めていたから問題ない。それよりも君に殴打された所の方が痛いかな?」

「す、すいません」


「おい新美テメェ、何で邪魔しやがったァァ」


そうだ、新美さんなんで…


「ぁ〜、一応加勢にきた感じ?『バキィバチッドフッ』ドザァー


「ザケてんじゃねェェぞゴラァァーーーー」

『バキッドゴっ、バチッバキッ』


八参はいつも通りな新美さんを殴って蹴倒すと、そのまま飛び掛かり殴り続ける。


「玉君っ、玉君しっかりして」


他方、真っ赤な包帯をいくつも巻かれている野木さんは、奥さんの必死の呼び掛けにもグッタリと反応がない。


あぁー〜〜っもうっ

何からどうすんだよ。



「無事、繋がった様でなによりです」


そんな中、黒装束の独特な声が響くと、全員が口も動きも止める。


繋がったって…ホルスっ

《ううん、知らない》


だけど黒装束のこの口振りは明らかに…


そうだホルス、リュウコウ君のことを教えてくれ。


《リュウコウ、は、シロとボク、を繋いで、消えた》


消えた?消えたって?


《……… 》


あの光は何だったんだよっ


「従者どの、ご説明を」


オレの中でしているホルスとのやり取りを、まるで聞いていたかの様な黒装束の言葉。


いや、別件だよな…


「説明?ってなんの?すか」


新美さんに馬乗りのまま、何のことだと言いたげな八参に、黒装束は往年の執事のような上品さで手をかざす。


「あぁっ、あの白い岩から光がこう虹みたいに伸びて来て、シロさんとこに行ったんだよ」


黒装束(コイツ)、聞こえてる。


そう思い、仮面越しの表情を読み取ろうとした時


「ウッー〜グぅぅブふッ」


突然よろめいた九鬼さんが、口から大量の血を吐き出した。


「九鬼さん、本当は傷が… 」


ショックを隠せない派手目の女と、口に手を当てる和同さん。


「気に、しないで良い。君が…止めていなければ、俺はこの中の誰かを手に掛けていた」


「もしかしてあの岩の力で治せますか?オレの腕のように、2人の傷も」


「それは不可能です。しかし其方のものならば、貴方様のお力の残滓でお救い出来ましょう」


そう言って黒装束は野木さんを指差した。


「ほ、本当ですかっ⁉︎ 」


歓喜する奥さん。


「その言い方だと… 」

「えぇ、不埒ものに毒されたなり損ね者は、かえって死を早めてしまいます」


「いい、俺のことは…。早く野木君を助けてやってくれ」


選択の余地はない。


「酷い箇所から包帯を外して下さい」

「わ、分かりました」


野木さんの側に近付いたオレは、左手を彼の傷口に添えると


ビクっ

「…ッ〜っ」


包帯についた血液までがキラキラとした粉末の様になり、傷口の中へと吸い込まれ元通りに。


その光景は正に奇跡。

直にやっているオレですら目を見開いた。


「……ぅ、ん… 」

「玉君っ」


「美沙…子?それに皆さん…、助かったのか?俺達」

「うんっ、うんっ」ギュゥゥーー


気丈そうな奥さんは、野木さんが少し困るくらいに強く抱き着いた。



そしてオレはその不可思議な残滓とやらが残っている内に、八参の足、和同さんの腹、野木さんの奥さんの手(捻挫)、派手目な人の顔の擦り傷まで治し新美さんを見ると、彼は申し訳なさそうに首を横に振った。



「あの、それで改めてお尋ねしたいのですが… 」

「そこまでで充分でございます。私はその為に参りましたので」


やっぱり読んでるな。


「まず不埒者に拉致…連れ去られたお二人ですが、その行き先は貴方様が知っておられます」


何で言い直した?

《まぁまぁ》


「いや、シロさんが知るワケねぇだろ?」


ってことは…

《うん。ボクの世、界のことだ、ねおそらく》


シュルル〜


「これは、不埒ものより抜き出したもの。触れて下さいませ」


浮遊し伸びて来た黒い糸。


左手でそっと触れると


「《………、………、……… 》」


森、渓谷、滝、神殿、山、星空と、いくつかの風景が映し出された。


《……シロ》

ん?

《多分分、かったよ》

「本当かっ‼︎ 」


「「「「「???」」」」」


思わず声にしてしまったオレに、皆んなの視線が集中する。

だけど黒装束と話していると思ったのか、誰もそれにツっ込んではこない。


「宜しいでしょうか?」

「えぇ、ありがとうございます。八参、見当がついたぞ」

「マジかっ」


「では本題の方へ。これより皆様をお送りいたします。ただし一名を除いて…となりますが」


そこで和同さんの顔が強張る。


「それは… 」


黒装束は九鬼さん見て首を横に振る。


「何とかなりませんか?せめて、せめて一緒に帰りたいんです」


「申し訳ございません。この者の今の状態では如何とも… 」



「クッキー、借りは返すよ」


どうしようもない重い空気の中、顔面内出血だらけの新美さんが一歩前へ。


「足掻くものよ。無論、その行為の意味は分かっているな?」


「当然だ」


そして新美さんは黒装束に対しらしくない口調で返事をすると、苦しそうな九鬼さんに近付いて手を添えた。


「……これで良し。シロさん、クッキーも治してやって」

「あぁ、はい」


ホルス、新美さんは何だ?

《ゴメン、さっきの影、が混ざって、よく見えな、い》


そうか…


そして一応黒装束の方を見るも、彼は無反応だったのでそのまま銃創に手を添える。


「…さっき目の当たりにしたが、信じられん。また借りが出来てしまったなシロ君」

「もうやめましょう」


「九鬼さん… 」

「…カ、薗女、だったな。俺の画像は出さない方がいいぞ。残念ながら庇ってやれないからな」


「……うん、分かった」


涙ぐむ派手目の人。


薗女って言うのか。


…あれ?


「芳川薗女?」

「ン?」

「ストーカー女」

「違うっ、私は事件を追って… 」

「事件?」

「薗女。事情は知らないが、シロ君に限ってそれは無い」

「分かってる。伊佐木さん、その節は、大変ご迷惑をお掛けしました」


咄嗟に反論しかけた態度から打って変わり、素直に、そして深々と頭を下げる薗女さん。


「いえ」


事件ってなんぞ?


「九鬼さん」

「野木……、操られていたとは言えすまなかった」

「俺の、せいで……おでのせいで、ズビバせんでしたッ」


大粒の涙をポロポロとこぼす野木さん。


そのあと野木さんの奥さん、和同さん八参は言葉が出ず、やり取りは九鬼さんの頷きで終わると


「それでは、宜しいですかな?」


タイミングを待っていた黒装束が言う。


「ちょ、ちょっと待ったシロさん。リュウコウさんはどうすんだ?」


「会ったよ」

「ン?」

「お前が言った光の中でオレ、リュウコウ君に助けてもらったんだ」



「…………は?…いや、どう言うことだよそれ。いや、シロさんがそこから戻ったんだから、リュウコウさんも生きてるってことか?」


「…………… 」


「…な、なんだよ……、何だよそれェェーーーーーーーーッ」


オレの無言で全てを察した八参が、喉が壊れそうな程の声で叫んだ。



少しの間訪れる静寂。



3分か5分かが経った頃、こっちを見る黒装束の視線に頷きを返す。


「それでは御来賓の皆々様、二度とお目に掛からないことを願っております。御機嫌よう」バサァー〜


そう言って皮肉交じりの黒装束が、フィナーレを飾るよう仰々しく腕を振り上げると、直上から光の筋が幾本も降り注ぎ、やがてそれは重なり合い一つの大きな柱となってオレ達を囲んだ。



八参っち、勘弁してね



次の瞬間





ーーー『『ブワァァァアーーーーーーーーーー』』ーーー



凄まじい速度で流れていく、青白い雲のトンネルの中に…



うわ、うわわわわっ


《あわわわ、わっ》




そしてまた次の瞬間




ーー『ボシューー〜〜っ』ー〜


「ー〜ッ⁉︎ 〜」


な、何だ…


冷たい感触に歪む視界。


…。。コポコポ。。。。ポココ。。。。。。。

。。ゴポゴポっ。。。。


水…中?


聞き慣れた音に確信を深め、真上に見える光に向かって手足を動かす。


…。。コポコポ。。。。。ポコポコ。。。。。


ーバシャァ

「〜プハァっ……、…… 」




『『ザザァァーーーーーーーーン』』


一一一一一二二二二二二二三三三三三三三三三二二二二二一一一一一二二二二二三三三三三二二二二二一一一ーーー



浮上して見渡す一面は海。

岩の壁なんてどこにも無い。


〜「ハハっプハッ、帰って来たんだな、本当にッ」〜

《そうだね、フフ》


口に入ってきた塩っぱい海水を吐き出して、大空に煌めく眩ゆい太陽に手をかざした。


バシャァー、バシャバシャ、バシャっ、バシャ

「プハァっ」「ブハァっ」「ブハァッ」「オブっ」


すると和同さん芳川さん、野木さん夫妻が顔を出す。


〜「美沙子ッ」「玉君っ」〜


バシャァバシャバシャ

〜「オブっ〜バハぁっっ」〜


抱き合う夫婦のすぐ目の前、一拍遅れて八参が浮上。


バシャバシャっバチャ

〜「あブっハっ、助ブっ… 」〜


もがく八参を皆んなが助けようとすると


グイっ

「暴れないで」


そばにいた和同さんが、八参の襟をサッと背後から引き上げた。


〜「あばッ、ぅっプハっ、悪ぃ男女」〜

〜「アンタさ、泳ぎくらい出来ないと、宇実果に幻滅されるよ」〜

〜「違うっ、海っプハっ初めてなんだよっ」〜


『ザザァァァァァザパァーーーンッ』


確かにこの沖の波はかなり激しくしかも着衣のまま。

普段の遊泳とは勝手が違う。


〜「九鬼さんと新美さんは?」〜


辺りを見回す野木さん。


〜「九鬼さんは分かりませんが、多分新美さんは… 」〜


何らかの力で九鬼さんを助けた新美さんは、黒装束に釘を刺されていた。

その事実だけで…


とりあえず互いの無事を確認し合ったオレ達は、深い波間に揺られつつ再度辺りを見回すと、すぐに水平線に広がる陸地を見つけられた。



〜「陸地だっ、助かったな」〜


〜「…どう思います?」〜

〜「プハ、どうもこうもねぇだろシロさん。早く行こうぜ」〜


〜「ヤマ、この波で5km以上泳げる?私はアンタ連れては無理」〜

〜「ヤマ?つかそ……… 」〜


〜「俺、泳ぎは得意なんで、八参君引き受けますよ。美沙子、大丈夫だよな?」〜

〜「勿論」〜

〜「んじゃタッチ」〜バシャっ

〜「おま、男女ッ、いちいち突き出すな。つかちょっと慣れたぜ、大丈夫そうだ」〜


《…………… 》


どうだ?ホルス。

《離れては、ない。むしろ少し、だけ近寄、った》


そうか。


冷静なホルスの分析に、遭難の不安が和らぐ。


〜「きゃあっ⁉︎ 何か足先に」〜

〜「うォォ鮫だァッ‼︎ 」〜

〜「「「「鮫ッ⁉︎ 」」」」〜


芳川さんの悲鳴に八参の叫び声、皆んなの顔が一気に強張る。


《……魚の群れ、だね 》

〜「大丈夫っ普通の魚群だっ」〜


視界共有で確認すると、結構大きな魚の群れがオレ達を掠めて行った。


〜「ヤマ、陸に着いたら蹴る」〜

〜「あん?本当に鮫だったかも知んねぇだろがっ」〜

〜「ゴメン、私が騒いだから」〜


あの2人、いちいちぶつかるな。


〜「皆んな聞いて下さい。今はここに出た直後より少しだけ陸に近付いています。幸い時間は昼間ですし、無理に体力を消耗せずこのまま波に任せませんか?」〜

〜「はは、なんか色々目からウロコですよ」〜


そう言って野木さんは、陸地までの距離を測るよう目を眇める。


〜「誰か今、鏡持って無いですか?」〜

〜「持ってる」〜


手鏡を掲げた和同さんに、芳川さんが答える。


〜「光は10kmは届くから、陸に向かって…あ」〜


和同さんの声に釣られてそこを見ると、旅客機が目的の陸地に向かって降りようとしていた。


〜「あそこ、空港なんだ」〜

〜「じゃもしかあれに皆んな乗ってる?」〜


野木さんと芳川さんがそう言った時


『ボシャンボシャンボシャン』


ン?


背後から聞こえた水音に振り返ると



『ボシャンボシャンボシャン』

『ボシャンボシャンボシャンボシャンボシャン』


海中に居るのとは関係なく、全員の顔から血の気が失せた。


『ボシャンボシャンボシャン』『ボシャンボシャンボシャン』




数メートル〜十数メートルの空中(イチ)に次々と人が出現し、そのまま身じろぎひとつせず人形の様に海の中に落ちていく。


『ボシャンボシャンボシャン』『ボシャンボシャンボシャン』『ボシャンボシャンボシャン』


〜「玉君っ」〜

〜「……… 」〜


〜「何なんだ…よ、こりゃ… 」〜


人が人とも思えないその様は、不気味を超え戦慄が走るほど。


『ボシャンボシャンボシャンボシャンボシャンボシャン』

『ボシャンボシャンボシャンボシャン』ボシャンボシャン』『ボシャンボシャンボシャン』


《シロっ》

〜「っ…どうしたっ」〜


そんな現実とは思えない状況の中、いち早く気が付いたホルスに動かされた指の先には…



ーーー『『ヒュィーーーーーーーーーーィ』』ーーー


40度以上の傾斜角で滑空してくる旅客機が



ーーーーー『『『ドバッガシャァァーーーーーーーーンッツ‼︎‼︎ ボシュゥン‼︎‼︎バキバキバキッ』』』ーーー


機首を上げることなく爆発的な水柱を立て海面に衝突。



〜「「「「「「《…………… 》 」」」」」」〜



バラッバラになる機体は破片を撒き散らした後みるみる沈んで行き、あっという間に尾翼までスッポリと波に飲まれて消えてしまった。






それから約20分後、救助にやって来た海保のヘリにより、オレ達は無事に救出された。










▽ 三章 ▽ 其々のカルネアDeath




〜糸冬〜







次回からは


▽ 四章 ▽ イエナイ疵痕は穏やかに心蝕す


へと入ります。



あぁ〜〜〜仕事の具合が悪い時に逃避を兼ねて筆を執り、改修や何やと大いに手間取りつつやっとここまで来たぁ

読み難い所も多々ある稚拙な作品ですが、ここまでお付き合い下さいました奇特な方に心よりの感謝を。

本当にありがとうございます。

ここから少しずつ物語は広がりを見せますので、もし良ければブックマークや評価感想で応援してもらえると大変嬉し……クッソサイコーーーっです‼︎

今後もよろしく。

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