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RIGHT MEMORIZE 〜僕らを轢いてくソラ  作者: neonevi
▽ 三章 ▽ 其々のカルネアDeath
104/111

3-45 Tethered〜 永きドウテイ永遠のゲンショク

side八参


タトっ…タトっ…タトっ

「ハァ、ハァ、ハァ」


タトっ…タトっ…タトっ…タトっ

「ハァ、ハァ、あー〜クソ」


タトっ…タトっ…タトっ…タトっ…タトっ

「フゥー〜、足痛ぇし歩き辛ぇー〜」


黒スケは急に消えちまうし、あとろんなけ掛かんだよコレぇ。


タトっ…タトっ…タトっ…タトっ…タトっ

(つえ)、渡して失敗した… 」


つか運んでたヤツらを見て戻ったってことは、多分あの男女を助ける気なんだろうなぁ〜あの人。


" 何故貴方方のその言語を彼が使えたのですか "


知るかっ

じゃあなんだ?シロさんをやり玉にあげりゃ帰れるんか?

なんでバカどもはいっつも事実を見ねぇっ

最初に化け蜥蜴と戦ったのは誰よ?

水場を見つけたのは?

危険な場所を進み帰る算段をつけたのは?

巨大なモンスター相手に勝てたのは?


タトっ…タトっ…タトっ…タトっ…タトっ

「あ〜やっぱ腹立つわ。あんな生意気女みちょ、ほかっときゃいんらよぉ」


テメェらが怖いだのどうしようだのって縮こまってる間になぁ、シロさんは考えて考えて考え抜いて動いてんだよ。

怖いのも痛いのも、テメェらと同じに感じてんのにだ。


「八参君っ」



タトっ…タトっ…タトっ

「………………………… 」



ザっザっザっザっザっ

「八参君っハァハァハァっ」


タトっ…タトっ…タトっ…タトっ…タトっ

「………何らよ、なんか用かよ 」


ザ…、ザ…、ザ…、ザ…、ザ…

「ハァハァハァ…ありがとうね、剣」


タトっ…タトっ…タトっ…タトっ…タトっ

「知られーよ。俺ぁ貸せって言われたから渡したらけら」


ザ…、ザ…、ザ…、ザ…、ザ…

「ふぅーーっ、そっか。でも足、痛そうだね。腕の傷は大丈夫なの?」


タトっ…タトっ…タトっ…タトっ…タトっ

「別に。ろってことねー」


大丈夫じゃねぇって言ってどうなんだよ。

我慢するしかねぇだろ。


ザ…、ザ…、ザ…

「………そっか」



そうやってイラつきあしらうも、左側(カベ)の向こうの松宮姉はずっと同じペースで歩き続ける。



「はぁ…、あの女は?」

「比奈?比奈はシロさんが連れて来てくれてる」


だよなぁ。


「なぁアンタさ、死後の世界とかって信じるか?」

「何急に、ここがそうだって話?確かにさっきの黒ずくめは死神っぽかったかもだけど……やめてよ〜、二回も死ぬとかまるで地獄じゃない」


" どうしたらこんな事が出来るんだっ "

" あの子を返してっ "

" 鬼畜野郎っ悪魔っ "

" 死ねっ地獄に堕ちろっ "


「へっ、違ぇねぇら」

「ここ地獄っっ???」


コイツ、ちょっと単純(アホ)だな。


「いやそうじゃなくてもよ、現実じゃあり得ねぇことが多過ぎんらろ?」


「へ〜ぇ、八参君でもそう言うこと考えるんだ。けどそれよかさ」

「ナメ過ぎらろおま… 」


そう言い掛けた反論の途中、松宮姉のあまりの屈託の無さに言葉が詰まった。


「その話し方、口でもケガしたの?」


「……あぁ、ほあ、切っあ」


「…いちいち見せなくていいよ汚い」

「何らよ、お前が聞くかららろ?」


また急に声のトーン変えやがって。

指を服で拭う(こんなん)で気に障るとか情緒不安定かよ。


「じゃあさ、帰ったら何がしたい?」

「いきなり気が早ぇーよ」

「いいから何?」


「何って…… 」



「行ってみたい所とかないの?やってみたい事とか〜、食べ物とかだって色々新しいのがあるよ?ジャーキー感動してたじゃん。お菓子とかスイーツなんて進化がモノスゴイんだから」


松宮姉は言い淀むのを許さないとばかりに追撃をかましてくるけど


「なんもねーな」


「そうなのぉ?あ、でも仕事は探さなきゃだよね?」


仕事?


だからそんな先、俺にはねーんだって。


「となると住むとこは?実家に戻るの?」


実家?


" …親父、悪い。俺さ、多分捕まるわ "


" 喧嘩か?それとも何かパクったんか?"


" …………… "


" …………取り返しはつくんか?"


" つかねぇ。親父には、悪いと思ってる "


" ……後悔、してんのか?"


" してねぇ "


" そうか、んなら気にすんな。お前の言う通り俺ぁただのダメ親父だからよ。けどな、取り返しはつかんくてもやり直しはきく。諦めんなよ?な?"


散々迷惑掛けた挙句、葬式を頼みに帰るってか?


「ハっ、やっとこ出て来たばっかで仕事なんてやってらんねーし、親父の説教も聞きたかねーよ。まぁ手持ちが無くなるまでブラブラすっかな?バカな俺らしく」


けどその前に…



「………ふ〜ん」


「俺のことはいっからよ、お前は自分のバラ色の人生を満喫してくれや」


「まっねー。自慢じゃないけど私モテるからさ、退屈してる暇なんてないんだよね〜」

「らろーな。大抵の男は顔がそこそこで、乳のデカいちょっとアホな女が大好きらからよ」


「…なかなか言うじゃない」


「なんらよ。これ以上ない褒め言葉らろ?」


「まぁそうね、否定はしないわ。これで充分楽勝だから」


そう言って余裕を見せる松宮姉は、挑発的かつ勝気な笑みを浮かべた。


「ヘイヘイ」


「ねぇ、無事に帰ったらデートしない?」


「デート?何らよ急に。誘いが多くて忙しいんらろ?」

「そうだけど、生還のお祝いはしたいじゃない。そうなるとさ、八参君くらいしか思い当たらないんだよね〜」

「なもん同僚とやっとけよ」

「それはそれ、これはこれ。ど?それにさ、約束がある方が頑張れるでしょ?何事も」


「へ、流石勝ち組CA様は上かららなぁ」


はぁ…

空虚さが埋まったと思ったら、今度は色までつけて来るんかよ。


「それで?返事は?」


" ワタシの交感位では残念ながら "


それでもシロさんは揺るがなかった。

だから俺はシロさんと…リュウコウさんを必ず無事に帰すんだ。

その為なら何だってしてやる。


「返事わぁっ‼︎ 」

「ぅお⁉︎ おぉ… 」


ったくコイツはどんだけ強引なんだよ。

断られるなんて微塵も思っちゃいねぇし。

けど、ホントにモテんだろーな。


自分に負けそうだぜ…


「……フラグ臭ぇけど、まぁちゃんと無事に帰れたら…な」



「違うよ。約束の為に、絶対帰るっだよ…〜」



「…な、何?何でいきなり泣きそうなんらよ」


「はぁ?泣いてないから」








side宇実果



ザク、ザク、ザク、ザク、ザク

「ハァハァハァハァ、追い付いたぞ〜八参に宇実果さん」


「〜っ、大丈夫ですか?比奈、見た目よりずっと重いから」

「あ、アンタほど余分な脂肪はついて無いけどね。あ、耳元でごめんなさい」


「ハァハァ、大丈夫」


すぐに言い返す比奈はいつもの調子が戻って来た風だけど、それでも何となく、私達の空気を伺っている節を感じた。


それは、何も言わずに静かに見守っている真黎さんも同じで…



" ハァハァハァ、そいやさ宇実果さん "

" はい "


" ハァハァっ、実は八参さ、病気で、今年保たないらしいんだよ "


""" え‼︎⁉︎ """


" 脳の病気で、今呂律がおかしいのもそのせい。ハァハァ…迷ったけど、アイツ色々危なっかしいから伝えておく "


" 私、ちょっと行きますっ "



このくり抜かれた50時間で、今まで生きてきた27年間の数十倍の命が目の前でこぼれ落ちた。

気が狂いそうな感情乱高下も、これでやっと終わりだと告げられた矢先にまたこれ…



「ハァハァ八参ィ、辛いなら(つえ)、返そっか?」


「ハァハァ、なんらよシロさん余裕らなぁ。もしかしてその息の荒さは興奮のせいってか?まぁある意味ここは密室で、そんなけ密着っつか緊縛ってちゃ〜しゃあれぇしゃあれぇカカカカっ」


「ハァハァハァ、何言ってんのお前。残念ながらテントはる元気まではねーよ。ハァハァ、すみませんね和同さん、不快な思いをさせて。アイツ童貞なんで僻んでんですよ」

「いえ、そう言うことなら大丈夫で「ま、全くそぉーゆーことじゃねーーよぉクソ男女ぁぁ」


ザク、ザク、ザク、ザク、ザク、ザク、ザク

「ま、子八参の進級事情なんてどーでもイイけどさ、絡みから返しまで、もう少し直しとかないと臭過ぎてすぐバレるぞ?」


そう言ってシロさんはスタスタ進んで行く。

汗塗れのまま、涼しい顔をして。


スタスタ、…スタスタスタ

「………(ペコ)」


そして後に続く真黎さんは、何故か八参君に丁寧なお辞儀をしていった。


それはやめたげてっ



「…………… 」


「デート、楽しみだね〜?ヤマチン♪ 」


「ゴラぁ、犯されてぇろかてめぇ… 」

「いやん、痛くしないで?ほら急がないと、ド・ベ・チン、だよ?」


怒りかはたまた羞恥なのか。

巻き舌で凄む八参君だけど、私は漏れ出そうな笑いを堪えるばかり。



やっぱ良いなぁこの空気。

素敵だなぁこの人達。

辛くても苦しくても届かなくてもさ、こうやって笑って前を向ける人が、少しずつでも何かを、誰かを変えるんだよ。



タトっタトっタトっタトっタトっタトっタトっ

「うぉオオァァーーーーーーーーっ‼︎ 絶っテェーー帰ってゴボウ抜きしたらあーーーーッっ」


「う〜ん… 」


まぁ力になるならそれも良いでしょう。




私は革信する。


この原色だけをグチャ混ぜにした50色は、私の今までと、様々なこれからを注ぎ足し続けていく70万色にも決して




塗り潰されたりしないのだろうと。









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