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RIGHT MEMORIZE 〜僕らを轢いてくソラ  作者: neonevi
▽ 三章 ▽ 其々のカルネアDeath
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3-41 Star Trap〔P2〕

side八参


「オラ勝ったぜぇーーーっ……てあれ?」


揚々と拳を突き上げながら戻った機内には、歓声どころか人影ゼロ。


全員避難したのか。

ま、いいや、とりあえず何か食うべ。



グチ、グチャクチャ


ン?何だこの音は…



「…た、助…けて、八参く… 」


ま、松宮姉っ⁉︎




「ふゴガぁっ、ぅおっ⁉︎ 」



……………



ドクンドクンドクンドクンッ



………あれ?



ドクンドクンドクンドクンッ



「ハァハァ、あぁ… 」





。。。。機内(ビジネスクラス)






息苦しさを感じつつ傍にある水に手を伸ばし、渇ききった喉と炙るような心臓に水を流し込む。


「ゴクっゴクっゴクっゴクっはぁーーー〜っ」


クソッタレな夢ぇ見せやがって。


と思いながらポケットの携帯を取り出す。


「ッ… 」


もう5時間も経ってやがんのか。


ーズキッ√

「イっ痛つ… 」


走るのは当分無理だなこりゃ。


逸る気持ちでビジネスシートから立ち上がり、夢と同じくシンとした機内を歩きシロさんの所へ。



「……グッスリ寝てんな」


ブランケットに包まって横になっているシロさんは、寝息も聞こえない程静か。


まぁ無理もねぇか。

この人が居なきゃ最初っから戦いになってなかったし、最後だってこの人が残ってくれたから、怪物がくたばるまで俺らはギリ保った。

本人は大丈夫と言ったけど、先頭で戦ったダメージが早々抜けるわけねぇ。


「ーー〜っ」


あー〜っ救いようが無ぇえっ

アドレナリンが出ちまったとは言え、またこの人を巻き込んじまったっ

いい加減この人は半端をしねぇ性格だって解ってんだろ?

ならあの時引かなきゃいけなかったんだ。

下手すりゃ共倒れんなって、墓場で土下座するってか?



「何してんの?お前」

「うおっ⁉︎ 」


いつの間にか起き上がっていたシロさんは、頭を抱え蹲る俺を冷ややかに見下ろす。


「……水、飲んだの?」


「ん?あぁ、飲んらけど?」

「トイレ行って歯ぁ磨いてくる。寝起きは先に歯ぁ磨けよ、身体に悪い」


「あの、何かご用意いたしましょうか?」

「…………… 」


そして見張りをしつつ待機していたCAの申し出に、首だけ振って行ってしまった。


いつから気付いてた?

いや、俺が起きるのを待ってたのか?


「……歯ぁ磨け?オカンかよ」


「あの、こちら、どうぞ」


俺の持つ無くなりかけの水を見たCAは、少しおずおずとしながら中身満タンの物を両手で差し出した。


「あぁ、悪ぃ」



数時間前、戦い終えた俺達を機内で出迎えてくれたのは、耳鳴りがしそうな沈黙と仄かな異臭だった。



" 生きてる人〜〜………シーーーン。はい全員ご臨終です "


窓際で折り重なる死体と床を濡らす血溜まり。

座席ごと貫かれている親子の死体。

4人で慎重に機内を見回るも敵は見当たらず


" 本当に大丈夫なのか?信じて良いんだな? "


生存者はコックピットに居た副機長と、異常の起きたタイミングでそこに居合わせたCAの2人だけ。

そして事情を聴きてみると異変が起きたのは数分前(ついさっき)

だが突如の悲鳴に驚いた2人は、息を潜めて隠れており敵を見ていなかった。


" なら敵は避難したヤツらを追い掛けたってことらろ?怪物も倒したし、早く呼びに行かれーとっとと〜っ… "

" こんな状態じゃ死ぬだけだ "

" け、けろっ "

" そうそう先ずは補給と休息でしょ。ほら、臭いが出る前に死体片付けるよ〜 "

" なぁ副機長(アンタ)っ "

" おお、俺はここを離れられないっ "


そう言って声をうわずらせた副機長は再びコックピットに閉じこもった。



「…あの、何か?」


けどシロさんの今の態度、流石にこの女を疑ってはいないよな?

ん〜〜、この細い身体じゃ絶対無理。


「おたくの青白さってさ、()のケガのせいらけじゃねぇよな?ハーフ?」


「祖母がカナダ人です」

「ふーん、ぽいね。副機長(アイツ)とデキてんの?」


途端、CAはブルブルと首を横に振る。


「そっか」


1人だけ残ったから何となくそうかなって思ったけど、女の考えってのはやっぱ分かんねーわ。



「はぁ… 」


死んだ人間の中に見知った顔が無かったのはまだ良かったけどよ、怪獣で終わりじゃねぇのかよ全く…


とは言え焦る気持ちに蓋をして取った仮眠は、悪夢にうなされはしたものの、ベロが痺れたみたいのも頭のグルグルも、幾分かはマシにしてくれた。








。。。。。洞穴




ザザっ、ザザっ、ザザっ、ザザっ…


「足は大丈夫か?あんま無理するなよ」


シロさんが有る物で応急処置をした黒スケリーダーは、シロさんがこれ以上乗せなくていいと言うも頑なに抵抗し、一体きりで残った。


" ホラ、頑張ってくれたから最後のバナナもやるな "


見た目の迫力を抜けばまるでペットの餌付け。


何でコイツはここまで従順に付き従う?

走れねぇ俺は2ケツ超助かるけど。


「なぁシロさん。アイツの言ったっつー帰れるって約束は、場所も期限も言ってなかったんらよな?」

「信じられないか?」


「…いやそうじゃねぇけろ、分かんねぇことだらけらからさ」

「まぁそうだな。だから今の内に合流しないとなんだけど……また景色が変わってるな」


そう言われ周りを見ると、前通った時とは確かに違っていた。


この人は本当良く見てんな。


「ま、とは言え道は一本。このまま進むぞ」

「あぁ」



そこで会話を切って数分後。




ザザァ、ザ、ザ…

「っと、おいろうした黒スケ?」


『シュルルルルゥ」


突然ペースダウンした黒スケは身を低くし警戒する。


「……何か居るろか?」

『バッ‼︎ 』

「シッ」


何も見えず身を乗り出し掛けた俺の頰スレスレ、振り上げられたシロさんの腕には刺す様な気迫がこもっていた。


「………呼ばれた、…………… 」


呼ばれた?

アイツか?


「………、……、…… 」


ジッと動かないシロさんと、耳を澄ましキョロキョロと辺りを伺う俺。


ズサっ…ザ、ザ……ザ…ザ、ザ…

「…………、………、……、…… 」


シロさんは何も言わず黒スケから降りると、一歩二歩歩いては立ち止まりを繰り返し、最後は壁を前にしてしゃがみ込んだ。


「八参、こっち来い」


「お、おう」


手招きするシロさんの横へ行き、俺もしゃがみ込むと


ウッ⁉︎ 居たっ


ザ…、ザ…、ザ…

「…………………… 」


岩壁に空いた穴。

ガキの頭程の隙間の向こうに、薄汚れた恰好でヨタヨタと歩く長身の男が見えた。



「……なぁ、あれは人間か?」


「何が、どうなってる」


だけどシロさんから返って来たのは苛立ち。


「九鬼さんっ」


九鬼?


「いや髪が…え?」



「…っ‼︎ …ぁ、〜…ぁ、だ、誰だ?どこに居るっ」


ボウボウのヒゲから漏れ出たそれは、掠れ掠れだったが、確かに聞き覚えのある声だった。


「九鬼さんっ、オレですシロですっ。どうしてそんな所にっ」


「しろ?シロ、君…なのか?ど、どこだ?どこに居る?こっちからは君が見えないっ、見えないんだっ」


その言葉通り、焦る九鬼のおっさんはウロウロするばかりで、一向に俺らを見つけられない。

たかだか10m程度の距離なのに。


「九鬼さん止まって、うん。そこから11時の方向に向かって進んで下さいっ」


「わ、分かった」


両手を前に出し、九鬼のおっさんはこっちへと向かおうとする。



「………ど、どうなってんらよ… 」


にも関わらず、おっさんの身体は明後日の方向へと進んだ。


「九鬼さん止まってっ」

「あ、あぁ」


「ちょ、どうすんだ?」



「……………九鬼さんっ、12の各方向に一歩進んで元の位置に戻る、を順にゆっくりと繰り返してもらえますか?」


「ここを、中心にで良いんだな?」

「はいっ」


それからおっさんは指示通り、一歩進んで戻るを12回繰り返した。


だが万華鏡の柄がサッと変化するように、おっさんの身体の向きは一歩ごと戻るごと不自然に入れ替わる。


…ワケわかんねー。


どーすんだよこんなの。



「……どうだ?何か分かったか?」


「………九鬼さん、もう一度お願いしますっ」


そして再度繰り返されるも、その向きはてんでバラバラ。

法則性どころか一度目との共通点も俺には見出せない。



「………やはり、ダメか」


おっさんは結果を知っていた様な口振りで呟いた。


「もう一度お願いします」


「シロ君、俺はもうずっとここを彷徨っているんだ。おそらく1年半…くらいな」


1年半?


「君はどうしてまだここに居るんだ?あの怪物はどうなった?ウチの大将や他の人達は無事なのか?」


「…オレ達は、あの後もう一度、最後の力を振り絞って戦いに挑みました。けどやはり巨獣には到底敵わず、本当に撤退をしようと言う時、突然現れた不思議な力によって何とか生き延びました」


「不思議な、力?」

「はい。それと信じられないかも知れませんが、オレ達の方は九鬼さんと別れてからまだ、数時間しか…経っていないんです」


「そッ〜………そん…そ、そうか。ここは、そう言う所だものな」


予想だにしなかった現実を突きつけられ、九鬼のおっさんは力が抜ける様にうな垂れた。


「………。シロさん、これ現実なんらよな?」

「どう言うことだ?」


((例えばだけど、コイツが九鬼のおっさんのフリした化け物かなんかって線はねぇのか?だってそうだろ?1年半?あの調子でどうやって生きてたんだ?))

((つまりオレ達を惑わす幻覚か、機内の人らを殺した犯人ないしって事か?))

((あぁ、可能性としてはアリだろ?))


「おっさん、信じねぇ訳じゃねぇけろこっちも色々あった。食い物とかどうしてたんら?」


小さく頷くシロさんを見て、同意を得た俺は問う。


「そう思うのは当然だな。でもな、何も摂ってなくても生きていられたんだ。こうして何故か」

「クソとションベンはっ」

「どっちも最初だけだ」



「……マジか、確かめようが無ぇじゃねーか」


「九鬼さん、もう一度さっきと同じことをしてもらえますか?」


「シロ君。戦っていた君らを置いて、離脱をした俺が、頼める事じゃないと重々承知している。だがもしも、もしも帰れそうなら、ウチの大将のことも、どうか宜しく頼む」


この言いようはやっぱ本物なんか?だとしても…


「シロさん。仮にこっちに来れたとしたって、ろうすんだ?」


俺は向こうまで1メーター以上あるだろう岩壁を掴む。


「九鬼さん、もう一度お願いします」

「シロ君… 」

「もう一度、お願いします」


譲ろうとしないシロさんに折れたおっさんは、言われた通りまた一歩ずつ同じ動きをする。


「九鬼さん、6時の方向へ後ろ向きに一歩進んで下さいっ」


「後ろに?」

「はいっ」


「……こっちに、来た?」


「九鬼さん、その場で12方向、また始めからお願いしますっ」

「あ、あぁ」


「九鬼さんストップ。その2時の方向で、また後ろ向きに一歩お願いしますっ」


「おおっ近付いてるっ。近付いてるよっ」



それからそれを十数回繰り返し、九鬼のおっさんは壁のすぐそばまでやって来た。


スゲェっ

やっぱこの人スゲェわっ


「けどシロさん、こっからろうすんだ?壊すか?」


「では九鬼さん。その場で全方向に腕を伸ばしてみて下さい」

「あぁ分かった」


「そこっ、手、伸ばしておいて下さい」


すると何度か目におっさんの腕が隙間に現れる。


「九鬼さん」

「何だ?」

「周囲に壁は在りますか?」

「壁?…、…、…いや?」


困惑するおっさんに対し、シロさんは確信めいた笑みで腕を隙間に突っ込んだ。


『ガッ』


「ですよねェーーーーーェッ」


『ガシィ‼︎ 」


次の瞬間


「うぉ⁉︎ オぉぉぉおっっ‼︎‼︎ 」


勢いよく後ろへ倒れ込んだシロさんの上に、岩壁から透過するよう抜け出てきた大男が覆い被さった。






し、信じられねぇ…








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