7話 入山
途中に休息日も挟みつつ、1週間ほどで雪山のふもとまでたどり着いた。
モンスターも道中に現れたが、向こうが襲ってくる前にこちらが倒してしまった。
気配を察知する能力も大活躍だが、侮れないのは【ファイアーボール】の威力だ。
初級スキルだからって馬鹿にできないよ、ルイン。
「リリアナ様、こちらを」
ルジーが防寒着を買ってきた。
毛皮で出来た上着、マフラー、手袋などなど…。
ズボンや靴も雪山仕様だ。
「今はそこまで寒くありませんが、山の中腹からは防寒着が必須です。荷物としてまとめておいてください」
「荷物が多くなってしまうね」
「命を守るためには仕方のないことです」
私は高々とそびえ立つ雪山を見上げた。
上に行くにつれて、雪の量が増しているのが分かる。
頂上には灰色の雲がかぶさっていた。
「出発はいつ?」
「今すぐに出れば、暗くなる前に1つ目の山小屋まで行けるでしょう。もしお疲れでしたら、明日に延期しても構いません」
「今の天候は?」
「良好です」
雪山に限らず、登山の際には天候に注意すべしと聞いたことがある。
山の天気は変わりやすいとも。
今が良い状態なら、早々に出発するのが良さそうだ。
「出発しようか」
「かしこまりました」
それぞれがそれぞれの荷物を背負い、登山道に入る。
ふもとには全く雪がない。
数年ぶりに雪と触れ合うのは、果たしていつになるだろう。
「そういえば、少しばかり調べ物をしまして」
隣に並んで歩くルジーが、1枚の紙を手渡してきた。
「これは?」
「ここ1週間以内に雪山へ入った人たちのリストです。13行目のところを見てください」
言われるままに13行目を見ると、「代表者:ルイン 人数:10名」と書かれている。
「随分とあの一団にこだわるのね」
「これまで生きてきた中で、5本の指に入る嫌な奴です。出来れば関わりたくない。幸い私たちより早く山に入っていますし、彼らは旅慣れているでしょうから、会うことはないはずですが」
「まあ、私もできることなら会いたくないけれど」
私がリストをルジーに返すと、彼は「ルイン」の文字を忌々し気に一瞥してからカバンにしまった。
目標地点だった1つ目の山小屋に到着し、私たちはそこで夜を明かした。
そして翌日は次の山小屋へ、また翌日は次の山小屋へと登って行き、登山4日目。
ようやく山の中腹に達し、数年越しに雪の冷たさを感じることが出来た。
それと同時に気温も下がり、今までただのお荷物だった防寒着の出番がやってくきた。
そこからさらに登り続けること2日。
私たちは息をすることもできない猛吹雪に襲われ、山小屋と山小屋のちょうど中間あたりで立ち往生してしまった。