45話 意識消失
攻撃を回避しつつ、どうやって水龍を倒すか考える。
【ポイズンバレット】を水龍とミーア湖に乱射し、全身に毒を回せば倒せるかもしれない。
しかし、それは周りの草花にも影響を与えてしまう。
薬草や研究価値のある植物だと考えると、環境を破壊するのは避けたいところだ。
同様の理由から、【ファイアーボール】で水を干上がらせるのもなし。
そうなると、目の前のモンスターを倒す方法はただ1つ。
透けて見えている体内の核晶を破壊することだ。
核晶は脳や心臓などと同じ急所で、それを壊しさえすれば、どんなモンスターでも倒すことが出来る。
その代わりに討伐成功の報酬は得られない。
「きっと高ランクのモンスターだろうから討伐報酬も高いはずなんだけど…。仕方ないか」
核晶へスキルによる攻撃が影響を与えるのは【鎌鼬】でゴブリンを解体した時に確認済みだ。
あの時は核晶が傷だらけになって怒られたなぁ。
ぐにゃぐにゃとして不定形な龍だが、体の中における核晶の位置は変わっていない。
向こうの動きを読んで攻撃すれば、核晶に命中させることが出来るだろう。
水龍の攻撃パターンも分かってきた。
回避だけの戦いはここでおしまい。
ここから反撃の時間だ。
「…っ」
狙いを定めて【鎌鼬】を撃った。
水の体を切り裂いてしっかりと核晶を捉えたが、ほんの少し傷がついただけで破壊には程遠い。
高ランクのモンスターとなれば、ゴブリンなんかより断然硬いのだろう。
しかし、大概の硬いものは同じく硬いもので叩けば割れる。
問題はその硬いものがどこにあるかだ。
【ファイアーボール】にしろ【ウォーターボール】にしろ、密度を上げれば硬度も上がるという単純な話ではない。
水龍が頭を強く水に打ち付けた。
湖の水が高く跳ね上がり、水のカーテンが出来る。
目くらましのつもりだろうが、【気配察知】があるからめちゃくちゃ動きは分かるんだよね。
向こう側では水龍が大きく口を開けている。
私は水の玉が放たれるタイミングを見計らって、素早くその場から飛びのいた。
水のカーテンを突き抜けてきた水の玉が、何もない地面をえぐって木々をなぎ倒す。
相変わらずえげつない威力だ。
もう目が慣れて来たので当たる心配はほぼないけど。
それにしても水が龍に化けるとは思わなかった。
私の【ウォーターボール】も龍になってくれたりしないかな。
ならないですよね。知ってます。
「…痛っ」
突然、頭がずきんと痛んだ。
何だろうこの感覚は。
体が熱くなり、目の前の景色が揺らぎ始める。
息が苦しい。
モンスターが目の前にいるのに、まともに立っていることが出来ない。
「う…ぐ…あ…」
私はゆっくりと、仰向けに地面へ倒れこんだ。
青空が広がっている。
体に力が入らず立ち上がれない。
「立た…なきゃ…」
そう呟いたっきり、私は水龍を目の前にして意識を失った。