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41話 遺跡の地下

 どうしても地下へ行く道が見つからなかったため、【ファイアーボール】で床に穴を開けて下へ降りた。

 地面に降り立つとほこりが舞い、ひどいカビ臭さで鼻が曲がる。

 マントで顔を覆ってほこりとカビを緩和した。


「人間やモンスターの気配はなしと。でも偶然できたものじゃないね」


 間違いなく人工的につくられた空間だ。

 真っ暗な闇の中を【暗視】に頼って見渡す。


「あれは…」


 正面に木製の扉がある。

 ひどく汚れてところどころ腐っているが、何とか扉としての体は保っていた。

 近づいてゆっくり押すと、ギギィと不気味な音を立てて開く。

 向こう側から、より強烈なカビの臭いが漂ってきた。


 私はマントを顔に強く押し付け、わずかに開いたドアの隙間からするりと中に侵入した。

 何だかものすごく胸騒ぎがする。

 気力Sの私が吐き気を感じるほどの不快な雰囲気が部屋中に満ちていた。

 ひょっとしたら、ウィブロックたちが感じたのはこの感覚なのかもしれない。


 ふと、足元でペキペキと音がした。

 見てみると、私が何かを踏んだことで散らばったと思われる欠片が散らばっている。


「これは…骨?」


 触ってみると分かった。

 何かの骨だ。

 それもネズミのような小型動物のものではない。

 それなりにサイズのある動物のものだ。

 私は胸騒ぎを抱えたまま、視線を地面の少し先へ動かした。


「ひっ!!」


 2つの頭蓋骨が落ちている。

 どこからどう見ても人間の頭蓋骨で、1つは後頭部が大きく欠けている。

 心臓がバクバク鳴り始め、体中を悪寒が駆け抜けた。

 冷や汗が出る。

 逃げ出したくなる気持ちを抑え、顔を上げて部屋全体を見渡す。


「…っ!!」


 1、2、3…合計で5つの頭蓋骨がある。

 その他にも大量の骨が散乱していた。

 おそらくは人間5人分の骨だろう。

 その多くが砕けているが、中にははっきり肋骨だと見て取れるものもある。


「何なの…」


 雪山で見た血染めの雪もなかなかの光景だったが、得体のしれない遺跡の中で見る大量の人骨はさらに気味の悪いものだった。


 この人骨は誰のものなのだろう。

 ここで死んだのか、それとも死んでから運ばれてきたのか。

 死因は何なのだろう。


 まるでたくさんの疑問を抱える私をいざなうように、部屋の中央に一冊のノートが落ちていた。

 表紙に残されているどす黒い染みは血痕だろうか。

 拾い上げて表紙をめくった瞬間、全身に鳥肌が立った。



 ――ガリア暦1126年、これを記す。



 ガリア暦1126年といえば、ウィブロックの一隊がこの森に入った年だ。

 これがただの偶然だとは思えない。

 私は震える手で次のページをめくった。



 ――著者:ベリーダル、リアン、ベルティ、レグリー、シーニャ。



「これって…ウィブロックと共に森に入って失踪した人たちだ」


 そして、この部屋には人骨が5つ。

 明らかに偶然ではない。

 ここが、250年前に失踪した冒険者たちの墓場だ。

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