33話 冒険者ウィブロックの手記①
1週間後、シオンさんから装備と手記の写しをもらった。
暗闇での隠密行動を得意とする私に合わせて、鎧と外に羽織るマントは黒で統一されている。
手記は大変貴重な資料ゆえ、むやみに人に見せないよう言われた。
街に帰って手記を精査し、事前に森のことを可能な範囲で知る。
それから数日分の食料と水を用意して森へ入る予定だ。
家を借りるのはこの依頼が解決してからになりそうだな。
ルジーのいなくなった宿屋に帰り、自分の部屋で一息つく。
そして机に手記の写しを広げ、最初から読み始めた。
まず記されているのは、著者の自己紹介と内容のざっとしたまとめだ。
手記の著者はウィブロックという冒険者。
書かれたのはおよそ200年前だが、彼が実際に森に入ったのはおよそ250年前のようだ。
森に入ったのは合計で6人のBランク冒険者。
そのうち生還したのはウィブロックただ1人らしい。
この手記は第一章が森へ入るに至った経緯、第二章が森の中で目撃したもの、第三章が森についての考察という3つの章に分けられている。
第一章にはウィブロックの幼少期がどうとか夢がどうとか書かれていて、あまり興味がなかったので飛ばした。
大事なのは第二章。
魔境とまで言われる森に何があるのかだ。
ここからは、飛ばさずに注意深く読み進めていく。
――ガリア暦1126年2月7日。
私、ウィブロックを隊長とする探検隊は、ついに長年の念願だった森の調査を開始した。
その目的はミーア湖にたどり着き、周囲を調査して帰ってくることだ。
森に一歩踏み出した時、嫌な雰囲気を感じた。
盗賊でもモンスターでもない。
冷や汗が出るような不快感のある感覚。
かといって、長年の夢をいきなりあきらめるわけにもいかない。
幸いなことに隊の全員の気力は非常に高く、不快感を抑えて森の中へと入っていった。
序盤で登場したモンスターといえば、ブラックボアーやグリーンウルフなどの低級モンスターばかりだった。
もちろん、そんな雑魚に手間取る私たちではない。
独特の雰囲気のせいで若干動きは鈍くなっていたものの、全員が無傷で切り抜けて初日の夜を迎えた。
焚き火をしつつテントを張り、これからの冒険に思いをはせながら食事を取る。
そして、見張りを交代しつつ2日目の朝を迎えた。
2日目になっても、不快な雰囲気に慣れることはなかった。
しかしモンスターの強さは特に変わらず、気力で抑え込めば進めるレベルだ。
途中で昼食なども食べ、小さな泉にたどり着いた。
ミーア湖ではない。ただの泉だ。
水質は良好で健康に問題もなさそうだったため、飲み水をここで補充する。
少し休憩したのち、ミーア湖を目指して私たちは再び出発した。
その日も目的地には到着できず、前日と同じようにキャンプを張る。
目覚めてみると、隊の一員であるベリーダルが忽然と姿を消していた。




