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30話 祝勝会

 青犬盗賊団の討伐作戦から2日後の夜、私はギルドへ召集された。

 盗賊と激戦を繰り広げた冒険者たちがそろっている。

 テーブルには酒やごちそうが並べられ、パーティー会場のように飾りつけされていた。

 作戦が大成功に終わったことで、ギルド内は明るい雰囲気に満たされている。


「青犬盗賊団は知っての通り昨日壊滅。赤犬盗賊団も、首領ザグマイトを失ったことで組織としての体をなしていない。実質的に、二大盗賊団が崩壊したと言っていい」


 ジークさんの言葉に、みんなが惜しみなく拍手を送った。

 盗賊たちの数が多くオインの牢屋だけでは足りなかったため、一部は近くの街に移送されたと聞いている。

 それだけ多くの盗賊がいて、人々の生活を脅かしてきたということだ。


「今回の一件は領主様の耳にも入り、大層お喜びだそうだ。ついては、作戦に参加した全員に領主様から特別報酬が送られる」


「特別報酬」というワードにギルド内がどよめいた。

 参加者全員に報酬を払うとは、何とも太っ腹な領主だな。


「明日の午後から、俺と幹部、そしてリリアナで報酬を受け取りに行ってくる。帰り次第、各自に分配するつもりだ。それに先駆けて街の人たちからも感謝が示された。このように食事と酒も用意してもらっている。今日は祝杯を上げようじゃねえか」


 ジークさんは手元にあったコップを掲げ、全体を見回してから言った。


「みんなの頑張りに乾杯!!」


「「「「「乾杯っっ!!!!!」」」」」


 みんなが声をそろえ、宴が始まった。

 お酒が飲めない私は、ぶどうジュースを飲みつつごちそうにありつく。


「リリアナ姉ちゃん!!」


 声に振り返ってみると、そこには大皿を持ったリーアがいた。


「これお母さんが作ったんだぜ!!食べて食べて!!」


「お、ありがとね~。リーアも来てたんだ」


「お母さんのお手伝いなんだ。食べたいものがあったら言ってくれよ」


「ふふっ。本当にありがとう」


 大皿を受け取って頭を撫でてあげると、リーアは顔を真っ赤にして逃げ去っていった。

 ふっ、かわいい奴め。

 それにしても、やっぱりエニーさんの料理は美味しいな。


「お疲れ様でした~リリアナさん」


「おっ、リゼア。元気?」


「元気ですよ~。それにしても、冒険者になってから2週間足らずで賞金首を2人捕らえるとは、さすが大型新人ですね」


「まあ、ザグマイトの場合はやらなきゃこっちが殺されてたしね。デーブにしても、私1人じゃ絶対無理だったし」


「またまたご謙遜を~。でもこれで、こなせる依頼の幅が広がりましたね」


「ん?何のこと?」


 私がきょとんとすると、リゼアもまたきょとんとした。


「あれ?まだ聞いてなかったですか?特別昇格の話」


 特別昇格…聞いた覚えがないな。


「リリアナさんの実力と実績を鑑みて、特別にDランクまで昇格ということになったんですよ~。Cランク以上は王都で行われる試験に合格する必要があるので、こちらでは勝手に上げられないんですけど」


 私は今Gランクだから…F、E、D…。

 一気に3ランクも昇格したのか。

 確かにこれで依頼の幅が広がり、お金も稼ぎやすくなる。


「おめでとうございます」


「ありがとう」


 リゼアは仕事があると言って、ギルドの奥の方へ行ってしまった。

 こんな日にも仕事とは、ギルドの受付嬢って意外と忙しいんだな。


「ぶどうジュースのおかわりはいかがですか?」


「いただきます…ってルジーじゃん」


「本当にお疲れ様でした。地下牢に囚われた時から考えれば、リリアナ様が強くなられて皆様に頼られているのは万感の思いです」


「大げさだなぁ。でも、これで安心して農家になれるでしょ?」


「はい。土地も見つかりましたので、明日中には出発いたします」


「そっか。落ち着いたら会いにきてよ?」


「もちろんです。リリアナ様もぜひいらしてください」


「行く行く」


 ルジーは私のコップにぶどうジュースを注ぐと、自分もワインを飲んだ。


「主人の飲食中は給仕に徹するのが基本中の基本って言ってなかった?」


「私はもう、リリアナ様の執事ではありませんから」


「分かってるじゃない」


 私は食器を置いて、ルジーの肩に手を掛けた。


「今まで本当にありがとうね」


「何ですか。今生の別れでもあるまいに」


 ルジーは優しく微笑むと、ワインを飲み干して再び給仕にかかった。

 明日もらえる報酬で、何か引っ越し祝いを買って渡すか。

 ついでに私も冒険者らしい装備を買おっと。

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