表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/47

27話 【番犬】足技のヨド

 デーブがいるのは地下。

 この背教は少し特殊な構造で、地上に3階、地下にも3階の層がある。

 ひたすらに駆けていたら、突然に鈴の音が響いた。

 足元に視線を落とすと、細い糸が張られていてその先に鈴が繋がっている。

 こんなトラップ、最初に調査で忍び込んだ時はなかったはずなのに…。


 案の定、鈴の音を聞いて盗賊たちがぞろぞろと現れた。

 どうする?

 あくまでも先へ突っ走るか…?

 いや、減らせる敵は減らせるうちに倒しておいた方がいいか。

 デーブと戦っている時に助太刀でもされたらたまらないもんね。


「誰だ!!って、誰もいないじゃないか」


 幸い、まだ私の姿は見つかっていないようだ。

 なら今のうちに…


「…っ」


 一番近くにいた盗賊に向けて、【ファイアーボール】を撃つ。

 確実に一発で気絶させられるよう、スピードと重さを重視した攻撃だ。


「お、おい、どうした!?」


 駆けよってきた盗賊も、同じように気絶させた。

 こいつら、まだ私の姿が見えていない…?

 これはラッキーだ。このまま殲滅してしまおう。

 私はテンポよく【ファイアーボール】を撃ち続け、あっという間に出てきた盗賊をみんな倒してしまった。


「んん?みなさん、どうなさったんですか?」


 いや、1人だけ残っていた。

 ポケットに手を突っ込んだ細身の男が、音もなくこちらに現れる。

 バタバタと倒れている盗賊を見て回り、それから私の方をまっすぐ見つめる。


「姿を隠していらっしゃるのですか。なかなか精度の高いスキルですが、まだ甘い」


 まるで私の姿が見えているかのように、男は話し続けた。


「おそらく同じ場所から攻撃を撃ち続けたのでしょう。彼らの倒れ方と焦げ跡の位置を見れば分かります」


 確かに私は、ほぼ場所を変えずに【ファイアーボール】を連射した。

 しかし倒れ方と焦げ跡からその場所を導き出すとは、この男ただものじゃない。


「狙いはデーブさんですかね?であれば見逃すわけにはいかない。私と戦いましょう」


 そう言うなり、男は高く飛び上がった。


「逃がしませんよっ!!」


 ピッタリ私のいた位置に、男の鋭いかかと落としがさく裂した。

 しかし、間一髪のところでそれを回避する。

 デーブと戦う時に、この男がいたら非常に厄介だ。

 それなら、今のうちに倒しておいた方がいい。


「あなたは誰?」


 私は姿を現して正面から対峙した。

 男はニヤリと笑い、深々と一礼する。


「戦っていただけるようで光栄ですよ。しかし、名前を聞くならそちらから名乗るのが礼儀では?」


 盗賊に礼儀を教わるとは思わなかった。


「私はリリアナ。冒険者よ」


「冒険者…?なるほど。上が騒がしいのはそういうわけですか」


 男の雰囲気が変わった。

 今までとは比べ物にならない殺意が私を襲う。


「私は青犬盗賊団【番犬】、足技のヨド。その命、取らせていただきますよ」


 ヨドが再び飛び上がる。

 私は【加速】してかかと落としを避け、再び一定の距離を取った。


「上だけ警戒していてはだめですよ!!」


 ヨドは地面を蹴り、低空で頭から懐に飛び込んできた。

 私にぶつかる直前で地面に手をつき、体を縦に回転させる。

 目の前を男のかかとが通り過ぎていった。

 さらに下からつま先が襲ってくる。

 私は後ろに飛びのいてそれを避けた。


「なかなか速い。ですが、避けているだけでは勝てませんよ?」


「誰が避けてるだけなんて言ったっけ?」


「は?…ぶふっ!!」


 ザグマイトと同じように、ヨドの上半身にも十字の傷が走る。

【鎌鼬】だ。


「馬鹿な…!?詠唱も予備動作もなかったぞ…!?」


「そ~お?聞こえなかっただけじゃない?」


 わざわざ【無詠唱】【無動作】のことを言う必要はないだろう。

 自分の武器を見せれば、相手に対策する余地を与えてしまう。

 ヨドに言ってデーブに告げ口されたら面倒だ。


「くそっ…私の負け…です…」


 ヨドはあっさりと意識を失った。

 ザグマイトより脆いな。盗賊団内での立場を考えれば、妥当なレベルなのだろうけど。

 私は【番犬】を1人縛り上げると、さらに先へ進んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ