18話 賞金首
さすがに4人の縛られた男を引き連れて街に入ると目立つので、門のところにいた人にギルドから応援を呼んできてもらうことにした。
しばらく待った後、ジークさんが駆けつけてくる。
「リリアナ!!賊を捕まえたって本当か!?」
「本当です。ほらここに」
私が盗賊たちを突き出すと、例によって圧倒的な威圧感をまとったジークさんがぎろっと睨む。
盗賊たちが「ひっ」と悲鳴を上げた。
「てめえら、どこの盗賊団に所属してんだ?」
「あ、青犬盗賊団ですっ」
「青犬…なるほどな」
ジークは私に代わってロープを持ち、盗賊たちへついてくるように指示する。
ギルドマスターの風格と大柄な体格に圧倒され、彼らは逆らうことなどできない。
「手柄だったな、リリアナ。青犬は最近この辺りを騒がせてる盗賊団だ。メンバーを捕まえられたのは大きい。あとで、特別報酬を出そう」
「ありがとうございます」
「おう。じゃあ俺は、取調所でこいつらの取り調べをしてくる」
ジークは堂々と盗賊たちを引き連れて、街へ入っていった。
私も、今日獲得した核晶を換金するべく冒険者ギルドへ向かう。
「全部で銀貨2枚ですね」
リゼアから報酬を受け取り、財布にしまった。
「お手柄でしたね~。青犬盗賊団のメンバーを捕まえるなんて」
「青犬盗賊団って、そんなに有名なの?」
「有名も有名ですよ~」
リゼアはカウンターの下から、2枚の紙を取り出した。
それぞれに、違う人物の似顔絵が書かれている。
「これは、青犬盗賊団リーダーのデーブと赤犬盗賊団首領のザグマイトの手配書です。2人とも、この辺りでは一番有名な賞金首なんです」
「そんなヤバい人たちなんだ。でも、私が捕まえた奴らはすごい弱かったよ?」
「リリアナさんの弱いはあてになりませんが…。まあでも、彼らは道を踏み外した人たちを手当たり次第に引き入れてるんです。強い人はめちゃくちゃ強いですが、弱い人はとことん弱いんですよ」
「ピンキリってことか」
「そうです」
多分、私が捕まえたのは弱い部類のメンバーだったんだろうなぁ。
だけど、それで特別報酬がもらえるならラッキーだ。
「これからも、盗賊がいたら無理のない範囲で捕まえてくださいね?赤犬、青犬以外にも盗賊はたくさんいますし、彼らを捕まえることはヘイリア領の安全に繋がりますから」
「分かった。心得ておくよ」
今度から、遠くに出かける時はロープが必須だね。
それから3日後。
私は突然、冒険者ギルドへ召集された。
特に持ち物は必要ないとのことだったので、指定された時間にギルドへ向かう。
到着すると、テーブルを囲んで4人の冒険者が座っていた。
うち1人はジークさん、あとの3人は知らない人だ。
「来たか。こっちだ」
ジークさんに手招きされて、彼の隣に座る。
その表情は、今までで一番の真剣なものだった。
「メンバーがそろった。会議を始めよう」
ジークさんは、机の上に1枚の紙を置いた。
見覚えがある。
リゼルに見せてもらった、青犬盗賊団リーダーの手配書だ。
一緒に会議の席に着く4人は、感じたことのない異様な雰囲気をまとっている。
私は圧倒されて息苦しく感じた。
新人の自分がここにいることに、猛烈な場違い感を感じたのだ。
ジークさんが、おもむろに口を開く。
「チャンスが来た。青犬盗賊団を潰すぞ」