13話 ゴブリン討伐
地図を見つつ、ゴブリンの巣だという場所まで向かう。
到着したところで、改めて依頼を確認し直した。
討伐対象はゴブリンで、推定生息数は20体。
モンスターを倒して解体すると、中に核晶という石が入っている。
それを持ち帰ってギルドの受付嬢に渡すことで依頼が完了、お金がもらえる。
「さて、行くか」
ゴブリンの住処は小さな山のふもとにある洞窟だ。
少しだけ足を踏み入れ、中の気配を探る。
多分これが、【気配察知】というスキルなのだろう。
【無詠唱】【無動作】のおかげで全く知らずに使ってたけど、さしずめ地下牢でバレないよう訓練しているうちに習得条件を満たしちゃったのだと思う。
「情報と同じ20…いや、ちょっと多い?30体ってところかな」
洞窟の奥の方でゴブリンたちが固まっている。
ほぼ動いていないことからして、休んでいるようだ。
ひょっとしたら、みんなで寝ているのかもしれない。
「寝込みを襲うなんて、まさに【暗殺者】だね…」
苦笑しながら洞窟の奥へ進む。
大体予想した通りの場所で、見張りと目が合った。
見張りの背後が広場になっていて、ゴブリンたちが寝っ転がっているのが見える。
「キキキ…」
「しー。静かに」
見張りが危険を知らせる前に、素早く【ファイアーボール】を放つ。
撃ってしまってから、【ウォーターボール】にすれば良かったと後悔した。
【ファイアーボール】だと、温度を間違えた時に核晶まで焼いてしまうかもしれない。
このゴブリンはあとで解体することにした。
取りあえず、寝ているゴブリンたちを一網打尽にしよう。
「今度は【ウォーターボール】で…」
幸いなことに、ゴブリンたちは1か所に固まって寝ている。
まとめて倒すことが出来そうだ。
目一杯の大きさで【ウォーターボール】を展開し、ゴブリンたちのちょうど上になるよう位置を調整する。
そして、勢いよく墜落させた。
眠ったまま逝けるだけ幸せだと思ってね、ゴブリンたち。
ゴブリンたちの気配が変わった。
無事、討伐が完了したようだ。
「さあ解体だ…」
当然のことながら解体も初挑戦だ。
核晶はお腹の中にあるらしいから、そこを切り開けばいい。
…と、ここまできて重大な事実が発覚した。
「どうやって解体するんだろ…」
解体のやり方が分からない。
街には解体を専門に請け負う職人がいるが、この量のゴブリンは持って帰れない。
かといって、核晶を持ち帰らなければ報酬がもらえない。
「そうだ。ちゃんと調節すれば…」
私は死体を1つ取り分けると、唯一の切断系スキルである【鎌鼬】を放った。
ゴブリンの体が宙に浮いたかと思うと、真っ二つに断たれて薄い水色の石が転がり落ちる。
私はそれを拾って、まじまじと見つめた。
「ちょっと傷ついちゃったけど…大丈夫だよね」
【鎌鼬】が立った場所に、一筋の傷がついている。
それでも形は保っているので、この方法で強引に解体することにした。
20分ほどかけて全ての核晶を取り出し、集めてカバンにしまう。
そして残った死体を灰になるまで燃やし、達成感と共に洞窟を出た。
ギルドの戻り、カウンターのところでリゼアに声を掛ける。
「帰ったよ。ちゃんと終わらせてきた」
私がカバンから核晶を取り出すと、確認したリゼアが顔をしかめた。
「リリアナさん、どれだけ手荒な解体したんですか…」
「え?」
「どの核晶も傷だらけじゃないですか。どうやって取り出したんです?」
「【鎌鼬】で斬って…」
「何やってるんですか~…」
リゼアがため息をついた。
「冒険者には、解体用のナイフかモンスターを収納するスキルが必須です。さすがに常識じゃないですか」
知らなかった。
次の依頼までに、ちゃんとそろえておくことにしよう。
「核晶が傷ついているので、報酬のお金が減額されます。さらに登録料を差し引いて、こちらが今回の報酬です」
リゼアが差し出したトレーには、1枚の銅貨も載っていない。
「えっと…?」
「もろもろ差し引いたら、プラスマイナスがちょうど0になっちゃいました~」
「そ、そんなぁ…」
私はがっくりと肩を落とす。
まさかまさか、私の冒険者生活は報酬0というスタートを切った。