野狐 ---やこ---
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今回は、数十年も前、私が中学生の頃のお話。
その当時、実家の隣の家には老夫婦が住んでいて、おじいさんは小さな神社の神主さんをしていた。
おじいさんの家には、神棚と言うよりは祭壇と言うほうが似合うような場所があり、いつも果物や野菜、お酒等がお供えしてあった。
柏手や祝詞は毎日のように聴こえてきて、私の中では日常の生活音となっていた。
ある日のこと、私は自分の部屋で本を読んでいた時に、ひゅんひゅんと白いものが視界に入るのに気がついた。
(ん?何だろ)
周りを見ても、何も無い。
(気のせいか‥‥‥)
本を読み始めると、また、自分の周りを白いものがひゅんひゅんと動いているように見えた。
しかも、時々、ふわふわ~と何かが触れる。
最初は飼っている猫が側に来たのかと思ったが、猫は見当たらない。
そして、喉の奥に毛が入り込んだ様な変な感じがしていた。
咳払いをしても、どこかスッキリしない。
(何だろう‥‥‥)
考えても分からないので、その日はもう寝ることにした。
翌日、母に話したが、取り合ってはくれなかった。
私は、隣のおじいさんに相談することにした。
おじいさんなら、不思議なことも聴いてくれると思ったのだ。
おじいさんは黙って話を聴いてくれた。
そして、真面目な顔で答えてくれた。
「それはおそらく、野狐だな」
「野狐?」
「多分な。いいか、無視するんだ。気にかけちゃ駄目だ。無視していれば、そのうちいなくなる。多少悪戯されても、無視するんだ」
「無視すればいいのね。分かった」
私は頷いて、お礼を言った。
その晩から、視界に白いものが入ってきても、見えていないかの様に無視した。
数日は白いものがひゅんひゅん動いていたが、ある日から、まったく見えなくなった。
ふわふわとした感触も、喉の奥の詰まった様な変な感じも無くなった。
スッキリとした感じがした。
後日、隣のおじいさんから、あれからどうなったのか訊かれたが、何も無くなったと答えると、嬉しそうに良かったと笑っていた。
あの白いものが見えていた時、特に悪戯とか変な事は無かったし、嫌な事も無かった。
でも、あのまま気にかけていたら、どうなっていたのかと考えると、ちょっと怖い。
何も無くて本当に良かったし、ハッキリと姿も見えなくて良かった。
怖い姿だったら、忘れられないと思う。
大人になった今も(いいオバサンだけど)、ひゅんひゅん動く白いものは全く見えない。
あれは本当に、野狐だったのか、何だったのか、確認しようがないけれど、ふわふわ~と感じた感触は今でも覚えている。
あれは、毛足の長い何か‥‥‥だったと思う。
皆さんは、視界に何か分からないものが入ってきたらどうしますか?
読んでくださり、ありがとうございます✨
また、おつきあいくださると嬉しいです。
皆さんに良いことがありますように✨