ナースコール
見つけてくださり、ありがとうございます✨
今回は、よくある話です。
今回も、独身時代の看護師-----当時は看護婦だったけど-----をしていた時のお話。
病棟には、大部屋と個室がある。
個室に入る方の理由は様々で、希望した方や治療上必要な方‥‥‥等々いろいろある。
どこの病院でもそうなのか、たまたま私が働いていた病棟だけのことなのか不明だが、個室で患者さんが亡くなると、その晩はその個室は空けておいて誰も入院させない。
婦長さんから話を聴いた時、特に疑問も感じず「そうなんだ~」と質問もせずに流していた。 まぁ‥‥‥私はそんなに熱血ナースではなかったということだ。あまり自慢出来る事でもないが。
ある夜勤の時のこと。
仕事は『申し送り』から始まるが、その申し送りで、個室に入院していたAさんが日勤帯で亡くなったとあった。高齢であり、癌の末期でもあったAさんは入退院を繰り返していて、顔馴染みと言ってはあれだが、よく見知った患者さんだった。
それなりに話もしていたので、ショックでもあり寂しいな‥‥と感じていた。
そして、Aさんが入院していた個室は空き部屋となっている。翌日には、新しい入院患者さんが入るらしいが。
夜勤帯でする仕事が一段落した頃、突然、ナースコールが鳴った。
深夜であり、病棟はシンと静まり返っている。
廊下にも誰の気配も無い。
私の病棟は夜勤の看護師は3人、今夜は私が一番ぺーぺーの若い看護師だったので、私がナースコールの受け答えをしに行った。
ランプが点っているのは個室の〇号室、今日Aさんが亡くなったあの個室だった。
〇号室は、ナースステーションから一番近くて、覗けば扉がすぐ見える。
ナースコールが鳴る前に誰かが入った様子はなかった。
私 「あの‥‥〇号室で鳴ったんですけど‥‥」
先輩Nさん「鳴るわけないでしょ、何かの間違いでしょ。電磁波とか言うやつかな」
ベテランHさん「消して様子みていいよ。真っ暗で誰もいないもの」
私 「そうですよね」
私は〇号室のボタンを押して、点灯を消すと、また仕事に取り掛かった。夜勤もそれなりにやることはあるのだ。
しばらくすると、また、ナースコールが鳴った。
今度も私がボードを見に行った。
私 「また、〇号室です。どうします?」
先輩Nさん「嘘、また?」
ベテランHさん「んーーあれだね。とりあえず、行ってきて。そして、普段通りに笑顔で、どうしましたか?って声をかけてきて。たぶん、それで治まると思う」
Hさんは、私に懐中電灯を渡すと、にこやかに笑った。
どうやら一番若い私の役割のようだ。
正直、恐い。もし、泥棒とか不審者が潜んでいたら本当にヤバい。
でも、行くしかなかった。
懐中電灯をしっかりと握りしめ、真っ暗な個室のドアを開けた。
多少ひきつりながらも笑顔を作り、声をかけた。
「どうしましたか?」
当然ながら、真っ暗な部屋には誰も居なくて、もちろん返事もない。
懐中電灯で部屋を照らした。
綺麗にベッドメーキングされたベッド。
何も置かれていない床頭台。
きっちりとカーテンが閉まった窓。
やはり、誰も居なかった。
私はそーっとドアを閉めると、早足でナースステーションに戻った。
先輩Nさん「どうだった?」
私 「誰も居なくて静かでした」
ベテランHさん「やっぱりね~。でも、これで満足したと思うから、もうナースコールは鳴らないと思うよ」
Hさんの言う通り、その後、ナースコールは鳴らなかった。
朝になり、日勤のメンバーに昨夜の出来事を話した。
婦長も医師も他の看護師も、この出来事を否定せずに聴いてくれた。
ある年配看護師は言った。
「こういう事って結構あるのよねぇ。顔を出すと治まるのよ。寂しいんじゃないのかな」
皆、頷いている。
どうやら看護師あるあるらしい。
亡くなっでも、魂はまだあの部屋に留まっているのかもしれない。
最近読んだ本にこんなことが書いてあった。
自宅以外で亡くなった場合、魂は自分が亡くなったことが分からなくて、その場に留まってしまうことがあるらしい。だから、家族がちゃんと声をかけて、連れて帰ってあげないといけないと。
私はそれにプラスして思う事がひとつ、ちゃんと本人の名前を言って連れて帰ったほうがいいと思う。
だって、全然関係無い人を連れて帰ったら、嫌だもの。
皆さんの身内が亡くなった時に、思い出してくれると嬉しいです。
もちろん、どうするかは自由ですよ。
そして、その結果何か起こっても、私は何も責任はとれませんけれど‥‥。
読んでくださり、ありがとうございます✨
またおつきあいくださると嬉しいです。
皆さんに良いことがありますように✨




