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第1章 港町・カンネラント(2)

 彼はオリバー・イグレール。力強い瞳と強靭かつ屈強そうな肉体を持つその男は、一目見ただけでも強者と分かる。数年前に年齢が理由で戦からは身を引いているが、それでも未だ大半の現役冒険者には負けないくらいの実力がある。



「久しいな、リチャード。元気か?」

「ああ、一応。イグレールさんは……何でこんな街に?」



 オリバーは冒険者協会の副会長という地位を持っている。そのため普段はもっと内陸部にある王都や大都市におり、港町であるカンネラントにいるのは、かなり珍しい事だ。



「それを含めて、話がある。……そっちの三人も、来るか?」



 三番窓口で手続きを受けていたノア一行も、一度顔を見合わせてから、揃って頷いた。表情から好奇心が窺える。



 オリバーと共に、窓口の奥側にある控室に入る。職員でもなければ窓口の向こうなど立ち入られないので、凄く興味がありあちらこちらを見回したかったが、流石にリチャードは自重した。

 ノアがきょろきょろと視線を彷徨わせて、リサに叩かれたのは秘密だ。



「さて、まず確認だが……お前、パーティ組んだのか?」



 協会に四人で来たのを見ていたのだろう。オリバーもパーティ推奨派に属しているからか、少し視線に期待が籠もっている。


 だが、確かにノアとリサとアレシアとは少しだけ時を共にしたが、パーティを組んだという訳ではない。



「いや、そういう訳ではない」

「あー、まあ、しゃーねえか。……じゃ、早速だが本題だ。これを見ろ」



 オリバーが机の上に、一枚の依頼書を四人に見えるように置いた。

 依頼書に書かれているのは、場所や討伐証明部位、依頼主や報酬だけでなく、討伐対象の種族と大まかな絵も書かれているのだが――



「……これは…………氷竜(ブリザードドラゴン)?」



 その体が触れた場所は瞬時に凍り付き、息を吐けば夏でも猛吹雪が起き、大空を飛べばこの地球上の大陸全ての天候を雪に変える――――それが氷竜(ブリザードドラゴン)



 事の発端は漁師が魚を捕りに海へ漕ぎ出した時だ。遠くの方に流氷が見えたのだという。

 今は寒い時期が終わり、段々と暖かさを増していく季節のはずだ。更にカンネラントでは、かなりの厳冬でもない限り、流氷は見られない。


 今年の冬は、どちらかというと暖冬だった。漁師達は冒険者協会に事情を報告し、協会職員が秘密裏に調査したところ、氷竜(ブリザードドラゴン)の咆哮に見舞われ――数人の職員の命が失われたという。



「ああ。んで、これを依頼にしたところまでは良かったんだがな……どこかから秘密が流れ、あの有様だ」



 冒険者には階級があり、その階級によって依頼の受けやすさや知名度が変わってくる。知名度が上がれば指名依頼を受ける事もあり、そういった依頼の報酬はかなり高額だ。


 少しでも多く稼ぎたい冒険者は階級を上げる事に尽力する。そして昇級への一番の近道が、当たり前だが強い魔物を討伐する事だ。


 街に集まっていた冒険者らも、昇級狙いなのだろう。でなければ、普通は(ドラゴン)に喧嘩など売るはずがない。



「これは……リチャード。お前じゃなきゃ無理だろ?」

「……そう、だな」



 冒険者協会の職員を、これ以上失うわけにはいかない。かといって、()()()冒険者に任せるのは、リスクが高すぎる。しかしリチャードならば、いや、リチャードだけにしか頼れない。


 だが、相手は(ドラゴン)だ。咆哮ひとつで人を殺められるくらい、その力は未知数であり、一人では無謀にも程がある。



「オレ達も行くぜ」

「足手まといにはならないように頑張るわ」

「サ、サポート、なら……」



 ノアとリサとアレシア。

 三人はまだまだ未熟だ。お世辞にもリチャードと同程度の実力があるとは言えない。けれど、バランスがよく取れていて、且つ回復魔道士がいるという利点は大きい。



「リチャード。……任せたぞ」

「ああ、待っていてくれ」




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