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次の目的

「ちょっと待ってよ!!」


話を打ち切った私たちをヒルデが引き留める。


「馬鹿じゃないの?4000万マニなんて払える訳がないじゃない。まだ100万マニすら手にした事が無いのに」


「うん。だから個人でハウスを買った人はまだ居ないみたいよ?ただクランでみんなでお金を出し合って買ったクランはあるみたい」


「えっと・・・つまりヒルデの思い付きの為に私たちもお金を出せって事?それも1000万マニ単位で?」


サンドラがヒルデの発言を意訳して聞き返す。


「い、いや、落ち着いてサンドラ。3人で集まれる場所があれば色々と楽じゃない?それぞれ自分の部屋があれば私物を置けるし、早めにログインしちゃって他2人のログインを待ってる時に色々と時間潰しでにるだろうし・・・ね?」


「それはまぁ、無いよりは有った方が良いけど・・・」


「ちょ、待ってサンドラ。何あっさり説得されかかってるのよ?だんだん王都から離れるように冒険するんだから、王都に家があってもほぼ使う事は無いよ?死に戻った時に使うかな?ってぐらいで。家は生産系のプレーヤー向けだよ?きっと」


「あ、それは大丈夫だよ?家は王都だけじゃなくそれぞれの第2の街でも売りに出されてるのが確認されてるから。しかも王都より安くて2000万マニちょっとで買えるんだよ?」


何て言ったっけ?この論法・・・。

先に高い額を言って後からほどほどの額を言うとその額が安く感じるってやつ。


「いや、ヒルデ。2000万でも十分に高いから。無理だから」


「待って。新築に拘らなければもう少し安いハウスもあるみたいだよ?」


更にヒルデが食いさがる。


「ねぇ、そろそろ真面目な話をしない?私、やりたい事が有るんだけど・・・」


サンドラが今までの話は茶番と言った感じで新たな話題を振る。


「何をやりたいのよ?」


ヒルデが軽くふて腐れたようにサンドラに話を促す。


「私ね、心残りがあるのよ。ちょっとリベンジしとかないとって思ってる事が」


「で、何がしたいのよ?」


「あのね、私たち南の街の先の狼に全滅させられたじゃない?とりあえずリベンジして狩っておきたいなと」


「サンドラって根に持つタイプよね」


ヒルデが呟く。


「この恨み晴らさずおくものか・・・って感じだよね。情念の女サンドラ(笑)」


「エリザ、情念の使い方がなんか違くない?」


「うん。サンドラの言葉も少しおかしいけどね。私は狼リベンジ良いと思うよ。少なくともヒルデの家を買うよりは遥かにまとも」


「分かったわよ。それじゃ狼リベンジ行きましょうよ。スキルのランクアップさせて一旦弱体化する前にサクッと狼にリベンジしてあげようじゃないの」


私たちは宿屋を出ると南の街へ向かう乗合馬車の乗り場へ向かった。


「あれ?乗合馬車に乗るって事は到着するまで暇になるって事じゃない?移動中暇だよね?」


「ヒルデ、普通にログアウトして掲示板でも覗いてれば良いんじゃないの?」


「それよりもヒルデは夏休みの宿題は終わったの?」


「えっ?まぁ、ボチボチかな」


ヒルデが視線を逸らす。


「えっ、まだ宿題終わってないの?私ですらもう終わってるのに?」


夏休み当初に一気に終わらせるサンドラだけじゃなく、私もお盆中に宿題は終わらせてるのに。


「大丈夫だって。2学期が始まったら放課後に残ってやって提出すれば良いんだから」 


無茶苦茶言い出すヒルデ。


「駄目だよヒルデ。ヒルデの親から私たちが一緒にFEOやってるせいだと思われたら、私たちの印象が悪く成るじゃないの」


サンドラの言い分も何気に酷い。


「それじゃ、馬車に乗ってログアウトしたら2人とも宿題を持って私の家に集合ね。お昼ご飯に素麺ぐらいは御馳走するからさ」


いや私とサンドラは宿題終わってるからね。写すから見せろって事?

しかも私たちがヒルデの家にまで行くのか・・・。

でもたまには3人でリアルで集まって遊ぶのも悪くないかな。


「ん・・・まぁいっか」


「私、死んだ曾々祖父ちゃんの遺言で素麺を食べるのはお盆までと決められてるんだよねぇ」


サンドラが訳の分からない事を言い出す。

ただ素麺に飽きてるだけじゃないのか?


「なにそれ?」


「あのね。曾々祖父ちゃんが死ぬ時にね、私の枕元に立って私の手を握って『いいかいサンドラ。素麺はお盆過ぎてからは食っちゃなんねぇぞ』そう言い残して曾々祖父ちゃんは・・・ううっ」


訳の分からない事を言いはじめ、更には泣き真似までする始末。


「あ・・・じゃあ、私とエリザは素麺を食べるけどサンドラはそれを見てるだけでいいよ」


「えぇ・・・ヒルデの意地悪・・・」


そんな話をしながら乗合馬車乗り場まで行き馬車に乗り込むとログアウトした。


そして翌日、再びログインする。

乗合馬車は第2の街に既に到着していて馬車置き場に停留されてた。

馬車を降りてそこから見える街並みを見渡す。

王都よりは質素だがレンガ作りの街並みが続いている。


「なんか久しぶりな気がする。南の第2の街サヴァニエミ。ふふふ・・・大蛇と狼にリベンジを果たす為に私は帰ってきた!!」


「・・・ヒルデ、他人のフリしよう。テンション高い時のエリザは言葉が通じないから」


こら。聞こえてるからね?サンドラ。


「さっそくご飯とポーションを買い込んでから、狼にリベンジしに行こうよ?私も昨日エリザに教わった魔法剣を使ってみたい」


昨日、ヒルデの家に集まった時に魔力操作を使って武器に魔法を纏わせて殴るやり方のコツを教えたのでそれを試したいみたいだ。


「もう。2人でそんな話をしてるからヒルデは宿題が最後まで終わらなかったんでしょ?」


サンドラが私たち2人を批難する。

だってヒルデの家で掲示板を覗きながらワイワイ話すの楽しかったんだもの。

それにサンドラだって一緒に成って楽しんでたんだから同罪だと思うんだけどな・・・。


「だってエリザが使ってた時は棍の先っちょに火魔法を纏わせてただけだったから、マッチ棒を振り回してるみたいで格好悪いなと思ったけど、私が光魔法を片手剣の刃全体に纏わせたら光る剣になるんだよ?映画の主人公みたいで格好良くなる気がしない?」


「ちょっと誰の武器がマッチ棒よ!!やり方を教えてあげた恩を忘れてコイツは!!」


「闇魔法を剣に纏わせたら闇落ちしたアンチ主人公みたいだねぇ。二刀流なら片方に光魔法を纏わせて、もう片方は闇魔法を纏わせるとか出来るのかな?」


なんでヒルデよりサンドラの方が食い付いてるんだろ?


「あっ待って。ねぇ、私は片手斧のスキルとか色々とレベル30に成ってるから、スキル変更して両手斧や鎚スキルを装備したいな」


「ちょっとサンドラ。スキルをレベル1の両手斧や鎚に替えたらステータスが一気に落ちるじゃん。1回狩るまではスキル替えちゃ駄目でしょ?」


1度全滅させられてるんだから万全の状態で戦闘を行いたい。

あの頃よりは各スキルレベルが上がってるのだからステータスは大幅に上がってるはず。


「それでどうする?日帰りで狩りする?それとも更に南下して第3の村到着を狙う?」


掲示板の情報でこの街の南東と南西にそれぞれ村がある事が判明してる。


「村は距離が結構あるし乗合馬車で行った方が良いみたいだよ?馬車なら3日で着くらしいけど、徒歩だと7日ぐらいかかるって話だし」


「それにスキルを変化させたり入れ替えて一旦弱体化するのが確定してるんだから、魔物が更に強くなる村に向かうのは危険でしょ?」


「それじゃログアウトポイントを拠点に数日狩りしようか?ログアウトポイントならスキル変更できるから、少しづつスキル変更して様子見しながら」


「うん。それで良いんじゃない?」


「私もそれで良いよ。イベントを経由してどれだけ強くなったか試してあげるわ」


こうして私たちは南の街を縦断して街の南の門から出て、狼リベンジへと向かった。

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