御茶会再び
乗合馬車が東の冒険者ギルドに到着し、私たちはそこから[日陰屋]まで歩いて移動する。
「こんにちわ!!やってますか!!」
[日陰屋]の玄関の扉を開けてヒルデが挨拶する。
扉が開くのだから当然営業してると思うんだがそこはスルーしとく。
「はい。いらっしゃいって嬢ちゃん達か。今度はなんだい?」
奥から[日陰屋]の主人が出てきて対応してくれる。
「今日は装備の耐久値の回復をお願いしに来ました。3人分なんですけど大丈夫ですか?」
「あぁ、年中暇だから幾らでも構わないよ。どれ装備を見せてくれ」
私たちは装備を解除して、私服姿になると装備を渡した。
「こりゃヒデェ・・・。壊れる寸前だぞこれ。嬢ちゃん達もう少し装備のメンテナンスは小まめにやった方が良いぞ?戦闘中に装備が壊れて丸腰で戦うようになるとか笑えないぞ?」
親父さんが半ば呆れ気味に忠告してくれる。
「いや、思わぬ連戦続きになっちゃいまして、実質3日でそれですよ。本当に笑えない状況になりまして・・・」
ヒルデが釈明する。
「3日で!?いったい何と戦ったらそんな短期間にこんなに耐久値が減るんだか」
「あ、それじゃついでに魔物の素材の買い取りお願いします」
私はゴーストとシャドーのドロップ素材を【収納】から出して渡す。
「こんなにかい!?随分と狩ったな・・・これだけの数を見付けるだけでも大変だろうに」
「いゃ・・・頑張りました。スキルのレベルも面白いように上がりましたよ」
私が冗談交じりに答える。
「それじゃ装備の耐久値の回復は3日ってところだな。料金は・・・残りの嬢ちゃん達もこの素材を持ってるなら買い取るぞ。耐久値回復の料金を差し引いてもこっちが払うようになるだろうな」
「えっ、3日も掛かるんですか?」
驚くサンドラにおっちゃんは言葉を続ける。
「ここまで耐久値が減っちまうとな。しかも3人分のフル装備だろ?これでも早い方だぞ?」
そこまで言われると反論のしようがなく[日陰屋]の店主のおっちゃんの言うがままに素材を売り差額を受け取る。
「どれ、仕事を依頼してくれた御礼にサービスするか。そこに座りな」
おっちゃんはそう言うと私たちを店の脇にある椅子に座るように促す。
以前、私が棍を買った時におっちゃんとお茶を飲みながら話したスペースだ。
促されるままに椅子に座ると、おっちゃんがお茶と御茶菓子を出してくれた。
客がほぼ来ないのに御茶菓子まで出してこの店の経営は大丈夫なんだろうか?
「どーれ。嬢ちゃん達は武器スキルはスキルレベル30まで到達したのかい?」
自分用の湯飲みにお茶を注ぎ、それを1口啜るとおっちゃんは話を始めた。
「えっと・・・もう少しですけど、えっと何の話ですか?」
私が代表しておっちゃんに話の意図を聞く。
「いやなに、この店を御贔屓にしてくれてるお嬢ちゃん達に老婆心ながらアドバイスしょうかと思ってね」
「はぁ。それでスキルレベルが30になってると何があるんですか?」
サンドラが話に食い付く。
サンドラはもう何かスキルレベル30に到達したんだろうか?
「スキルレベルが30になると、スキルのランクアップが出来るのは知ってるかい?」
「はい。それは一応」
「それでさっき嬢ちゃん達の装備を預かった時に気付いたんだけどな。赤い髪の嬢ちゃんは片手斧のスキルと投げ斧のスキルを持ってるだろ?エリザの嬢ちゃんは長杖と棍のスキルを取ってるのは知ってる」
「はい。ここで私は棍スキルをお勧めされ取りましたから」
私が答える。
「今は長杖スキルと棍スキルでスロットを2つ使ってるだろ?このスキルを1つに統合する事が出来るって言ったら挑戦するかい?」
[日陰屋]のおっちゃんがドヤ顔で話す。
「あ・・・杖術と斧術にスキル統合してみてはって話ですか?」
サンドラが質問する。
「なっ、既に知ってるのかい!?」
おっちゃんがドヤ顔から驚きの顔に変わる。
「はい。集会所でやった老人会の時にマッテオと言うお爺さんに教えて貰いまして」
「あのジジイか!!・・・まさか既に知ってるとは思わなかったよ。それでどうだい?統合するかい?」
そう聞かれて私は迷う。
私が持ってる【長杖】【棍】を統合するにはLv.30までスキルレベルを上げる事だけじゃなく、杖系スキルの【短杖】と【棍棒】スキルのレベルを30まで上げる必要がある。
【長杖】と【棍】はそれぞれ両手装備だから一度には装備出来ないけど【短杖】と【棍棒】はどちらも片手武器だから、それぞれ左右の手に持って装備する事が出来る。
つまりレベル上げは多少楽なのは分かるんだけど・・・。
「斧術にするにはあと何のスキルが必要なんですか?」
私が考えてるとサンドラがおっちゃんに質問する。
「んっ?それはマッテオの爺さんから聞いてないのかい?【片手斧】【投げ斧】の他には【鎚】と【両手斧】だな」
「【鎚】も【両手斧】も両手武器なので盾と併用出来ませんよね?私一応このパーティで前衛をやってるので盾が使えないと都合が悪いんですよねぇ」
サンドラがやんわりと斧術にスキルを統合するのを断る。
「あぁ、確かに盾役が居なくなるのは問題だな。だが金髪の嬢ちゃんも盾を使ってるんだから盾役できるんじゃないのか?」
「えっ?あ、あたしは必要に応じてサブタンクやるぐらいで。回避盾みたいな役割と回復役をやってるんでメインタンクはちょっとキツいと言うか」
自分は関係ないと半分聞き流してたヒルデが突然話を振られて軽くパニックになりかけながら答える。
「そうか・・・それじゃ無理か。あとは【力up】スキルの派生で【剛力】ってスキルがあれば両手武器を片手で扱えるようになるんだが今から【力up】スキルを取って上げるのは非効率だしな・・・」
「・・・」
あれ?これは。
「あの・・・私【力up】スキル持ってます・・・」
「お、そいつは都合が良いな。レベルはちゃんと上げてるんだろ?」
「えぇ、まぁ」
「それなら準備万端じゃねぇか。前もってスキルを統合する為に準備してたようなもんだ。武器が必要なら今使ってるのと同じランクの武器をこっちで格安で準備してやるぞ?」
このオヤジ、狙いはそれか!!
言葉巧みに私たちを誘導して武器を売り付ける魂胆か。
「う~ん。格安で?」
とりあえず聞いてみる。
「あぁ、お得意様割引するよ」
「今使ってる武器と同ランクの短杖と棍棒の2つで10万マニぐらいですか?」
これでもかってぐらい値切ってみる。
今使ってる武器は根は9万マニ、長杖は15万マニだったから半額以下だ。
「おい・・・それは流石に厳しい。原価割れしちまう。この店を潰す気かよ?」
「なら・・・15万マニぐらいですか?」
「いや、17万マニは欲しいな。その代わり有益な情報をサービスとして付けよう」
有益な情報か。
確かにスキル統合などの話はまだ掲示板では出てないはず。
おっちゃんの言う有益な情報は凄く興味ある。
「分かりました。私の分の短杖と棍棒、サンドラの両手斧と鎚で34万マニ。それに有益な情報を2つで手を打ちましょう」
「えっ、私も!?勝手に決めないでよ・・・と言うかエリザの奢り?」
サンドラがちゃっかり私に払わせようとしてくる。
「奢りません。割り勘に決まってるでしょ?【力up】スキルを運良く持ってるって事はつまりやれって事でしょう?それに情報も気になるじゃない?」
「あの・・・それじゃついでに私も今使ってる片手剣と同じランクの片手剣を1本注文して良いですか?10万マニで。あと情報を貰えると嬉しいです」
ヒルデが尻馬に乗ってくる。
「ヒルデ、何言ってるの?」
サンドラが軽率なヒルデをたしなめる。
「いや、二刀流は前から考えたのよ。それに私も有益な情報を欲しいし」
ヒルデがオマケ欲しくて御菓子を買う子供のような事を言い出す。
あんた片手剣と盾、長弓、回復、魔法と色々と手を出してるのに更に二刀流まで手を出すのかい。
私たちが話し合ってるとまとまるようにおっちゃんが場を制するように声を出す。
「3人とも毎度ありがとう」




