お金の使い道
残って居た紅茶とクッキーを完食し喫茶店を出る。
時間を見ると喫茶店で1時間も時間を使ってしまっていた。
ゲーム時間は現実の1/4だから現実時間だと15分しか経ってない事になる。不思議だ。
街の中は昼を少し過ぎたあたり。
街の中はプレーヤーかNPCか見分けが付かないが大変賑わっている。
「さてと、装備を買いに行く?」
2人に声を掛ける。
「そうね。初期装備ならどこも値段は一緒だろうけど、生活費も残しておかないとね」
「生活費って幾らあれば大丈夫?」
「さぁ・・・」
率先してイニシアチブを取る癖に肝心な事が分かってないヒルデがサンドラの質問を受け流してる。
「生活費って食事代と宿泊費ぐらい?何日分があれば良いんだろ?」
「とりあえず街ブラして宿屋を探して宿泊費を尋ねてみようか?」
私の発言にヒルデが答える。
「さっきの喫茶店で聞いとけば良かったね」
私の呟きに
「今から誰か捕まえて聞いてみる?」
とアグレッシブな発言をするサンドラ。
さっそく通りを歩くNPC風のオバちゃんに声をかける。
「すいません。この街、初めて何ですがお勧めの宿屋とか知りませんか?」
「あら、あなたたちは今日沢山現れたって異界人?」
「はい。そうです。あの建物の中に出ちゃって右も左も常識も分からなくて・・・」
とコロッセオを指差しながら答える。
「えっと宿屋かい?宿屋ならこの通りを真っ直ぐ行って2つ目の交差点を右に。ずっと真っ直ぐ行くと東門が見えてくるから、その東門近くにある[馬耳亭]って宿屋がお勧めだよ」
親切に教えてくれたオバちゃんに更に質問してみる。
「1泊って1人幾らぐらいか分かりますか?」
「素泊まりなら4000マニぐらいだね。金が無くても馬小屋には泊めて貰えるよ」
突然不吉な事を言い出すオバちゃん。
金が無いと馬小屋に泊まる事になるの?
そりゃ古き良きRPGからの伝統だろうけどさ・・・五感で感じるVRゲームで馬小屋に泊まるのはリアルで馬小屋に泊まるぐらいの抵抗感がある。
私がそう考えると
「馬小屋か・・・そりゃお金がない時の救済措置ぐらい運営も用意するよね」
とヒルデが1人納得してる。
いや、嫌だよ私は。馬小屋に泊まるのは。
オバちゃんに御礼を行って[馬耳亭]に向かってみる。
言われた通り歩いて行くとテイクアウトのお弁当屋さんみたいな店も幾つか目に付く。
値札を見ると450マニから750マニぐらい。
1泊4000マニに食事が1食450マニ×3食で1350マニ。合計5350マニ。
つまり1日でそれぐらい稼がないと飯抜きとか馬小屋暮らしになると言うわけだ。
「ねぇ、1日で幾ら稼げると思う?」
「3日分ぐらい手持ちを残す感じで20000マニ弱は使わず取って置きたいよね」
私とサンドラが話してるとヒルデが呆れたように言い放つ。
「あんたらこれはリアルじゃなくゲームなんだよ?冒険しないでどうするの?」
「その日暮らしを冒険とは言わないでしょ!!」
サンドラが即時ツッコミを入れる。
「ほら[馬耳亭]に着いたよ。サンドラ、料金を聞いてきて」
「エルザ、なんで私に押し付けるのよ?3人で行けば良いじゃない」
「私、人見知りするから・・・」
「私も・・・」
私の意見にヒルデが乗っかる。
「馬鹿言ってないで行くよ。可能なら早めに宿を取っちゃった方が良いかもだし」
結局、サンドラに引っ張られて宿屋に連れ込まれる。
スキルのステータス補正か私もヒルデも力でサンドラに勝てなかった。
宿屋の受付に行くと如何にもって感じの肝っ玉母さん風な女将さん(多分)が対応してくれた。
「すいません。1泊いくらですか?」
「はい。いらっしゃい。1泊素泊まりで4000マニ。食事は朝昼晩関係なく1食500マニだよ。今ならまだ部屋も空いてるよ」
お、オバちゃんに聞いた通り。
ありがとうオバちゃん。
「部屋が満室に成る事もあるんですか?」
ヒルデがサラッと現実でしたら失礼な質問をする。
「今日は異界人が沢山現れたみたいだからね。暗くなる頃にはどこの宿も満室になるだろうね?どうする?」
女将さんはヒルデの質問に気にした様子もなく聞いてくる。
「じゃ、宿決めちゃおうか?」
「「賛成」」
「それでは3人、素泊まりで1泊お願いします」
「1人部屋と3人部屋どっちがいい?」
「じゃ3人部屋でお願いします」
ヒルデが勝手に決めてしまうが、異論は無い。
女将さんにそれぞれ4000マニ払い部屋の鍵を受け取る。
「それじゃ私たち、外出してきますね」
女将さんに一声かけて外に出る。
そろそろ本気で装備を買いに行かないと。
開幕ダッシュした組と差が付いてる気がする。
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