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新装備

翌日の午後にFEOにログインし、目が覚めるとそこはログアウトした時と同じ馬車の中。

まわりを見ると座ったまま目を閉じ寝てるプレーヤーが何人かいる。ログアウトしてるのだろう。


馬車の幌の中から顔を出してみる。

まわりにも何台もの馬車が綺麗に並んで停まっている。

ここが王都の馬車停留所なんだろうか?


馬車から降りて近くの管理小屋の様な場所へ行ってみると警備員のような人に挨拶され出口へ誘導された。

そこは王都の南門近くの乗合馬車乗り場の裏側。


「へぇ、ここで降ろされるんだ」 


1人呟き、これからどうするか考える。

新装備の受け取りは4Qの昼頃って約束。

それに合わせてヒルデやサンドラとの待ち合わせも4Qの昼前に青空市の入口と決めていた。

決めていたんだけど・・・。


あれ?私、ログインしたけど3Qでやる事ない?

王都周辺で日帰りで狩りをしても魔物が弱くて経験値効率が悪いし、かと言って王都の中でやる事も無い。


「南の街なら訓練場で時間潰せたのにな・・・」


とりあえずヒルデとサンドラにメッセージを送る。


『王都に着いたんだけど2人は何してる?1人でやる事なくて暇』


・・・メッセージの反応が無い。

ログインしてないのかな?

諦めて青空市の場所近くの宿屋に宿泊してログアウトする。

そして仕方なく夏休みの宿題をやって夜まで時間を潰した。


夕飯を食べ再びログインし、約束の時間の少し前に青空市の入口まで移動すると既にサンドラが待っていた。


「サンドラ~!!昼間は何処いってたの?独りで寂しかったよ・・・」


「家の用事でログインしてなかったからね。ログインしてメッセージみたのさっきだよ。1人で何してたの?」


「やる事が無かったから、ログアウトして夏休みの宿題やってた」


「えっ、まだ終わって無かったの?私は7月中に終わらせたよ?」


「まだ終わっては無いんだけどね。と言うかヒルデも終わってないと思うよ?」


サンドラの私を見る目が冷たい。

えっ?そこまで落胆される事?


「おまたせ!!さぁ早く新装備受け取りに行こ!!」


なぜ1番遅くやってきたヒルデが私たちを急かすんだろう?

ま、いつもの事なので慣れたけど。


青空市の中を進み[金仁屋]に着いた。

前に来た時と同じでヤットさんが客対応をし、丹奈さんが後で品出しなどヤットさんのフォローをしてる。

別のお客さんへの対応が終わったのを見計らって声を掛ける。


「こんにちわ。装備を注文してたエリザです」


「いらっしゃい。装備3人分できてるよ」


3人それぞれ代金と引き換えで装備を受け取る。


「それでは一度全て装備して見て下さいね。気になる所があるなら直ぐに修正しちゃうから」


丹奈さんに言われ装備を変更する。


私は長杖とローブは別の店で注文したから、上下の服と靴と棍だけ。

厚手の生地の白いポロシャツで襟の部分だけ黒色。

チノパンの様なベージュのパンツに、靴底まで革で出来た濃い目の茶色の靴は踝までカバーされるタイプ。

うん・・・こう言うのはスタイルが良い人がするコーディネートじゃないのかな?

ま、私はこの上からローブを被るから良いけども。


棍は何かの合金で出来てるみたいで少し重みがあり、八角形の棍の両端は八角錐に成っていて尖ってる。突きの貫通力が上がってそう。


自分の受け取った装備を確認して丹奈さんに問題が無い事を告げる。

他の2人を見ると、ヒルデは肩より少し長めの肩パットと両胸の部分だけを守る胸当て、前腕、腰、脛と足を守る皮鎧それぞれ2種類の革が使われてようでその模様がちょっと格好いい。

同じく革の額当ては耳の前から顎の関節部分までカバー出来るデザイン。時代劇で忍者とか下級武士が付けてるやつみたい。

片手剣は直剣ではなく刀のような曲剣で十字の鍔に手を守るナックルガードが付いてる。

短めのサーベル?シミター?そんな感じの名前が頭に浮かぶようなデザインだ。


一方、驚いたのはサンドラの新装備。

全身が真っ黒の金属鎧。しかもツヤ消しされてる。

デザインも装飾は殆どなく完全に実用品と言う感じで、唯一ワンポイントとして兜の後頭部から真っ赤な髪がポニーテールのように生えている。

これは実際にサンドラの髪が出てるのではなくエクステ。つまり付け毛らしい。

縦長の五角形の盾や片手斧も黒く、片手斧の刃の部分だけ色が多少白いかな?と言う感じ。


ヒルデは昔の星座を模した鎧を着て戦うアニメのキャラみたいな感じ。

これはヤットさんの趣味なのか丹奈さんの趣味なのかどっちだろう?

一方、サンドラは片手斧と黒い全身鎧と盾で完全に闇落ちした騎士って感じの雰囲気。まぁ格好良く見えるけどさ。


2人とも一気に強そうに見えるようになった。

一方、私はポロシャツにチノパンと戦いとは縁遠い休日の服装って感じ。何か差を感じる。


「うん3人共とても似合ってますよ。それに性能も金仁屋お墨付きです」


「合金で性能を出しつつこの色を出すの結構苦労したんだよ。武骨なデザインが良いと言うからデザインじゃ無く色に拘ってみたんだ」


丹奈さんとヤットさんが自画自賛してる。

うん。私のこの服だって守備力は上がってるはず。

きっとそうに違いない。


2人に御礼を言って[金仁屋]をあとにする。

ヒルデとサンドラは新装備にニコニコしている。

さぁ次は私の本命のジャネットさんの経営する[七芒星]


「こんにちわ。長杖とローブを注文してたエリザです」


「はい。お待ちしてました。お代と引き換えでよろしいですか?」


ジャネットさんから装備を受け取り装備してみる。

ダークブラウンの頭から被るタイプのフード付きローブに腰には黒い革の幅広のベルトが付いてる。

木製の長杖は私の胸の高さまである長さで全体的に赤茶色で先端が瘤の様に丸く太くなっている。

更に注文してたサークレットは銀色の小さな鎖に涙型に

カットされた100円玉ぐらいの紅い宝石(?)が付いてる。


「ローブは北の街ノブヌーイ周辺に出現するスナイプコーンの髭を錬金加工で布にし仕立てたものです。長杖は南の街サヴァニエミの大森林で伐採された魔檜を削り魔力を付与し魔力の流れを整えました。サークレットに関してはエリザさんの瞳の色と同じ色石を見付けました」


ジャネットさんが少し興奮気味に装備の説明をしてくれる。


「各地から材料を取り寄せてくれたんですね。ありがとうございます」


「いえ。それが私の仕事ですから。あ、ちゃんとローブには刺突耐性、サークレットには魔力アップを付与してありますよ」


「本当にありがとうございます。本気で嬉しいです」


性能は鑑定スキルを持ってないので分からないけど、見た目が現代の町娘から、隠れ住む老練な魔法使いって見た目に変わったのが嬉しい。


「はい。私も初めてのお客様だったので作ってて楽しかったです。拘り過ぎて師匠にそれでは利益を出さないだろと叱られてしまいました(笑)」


えっ、33万マニで利益が出ない装備なの?これ。

私としては嬉しいけど大丈夫なの?それ。


「えっと大丈夫なんですか?」


「はい。一応赤字には成ってないので大丈夫ですよ。私も経験値を積む事が出来て木工、細工、錬金、革加工、付与とか色々とスキルレベルを上げれたので満足です」


「それなら良かったです。赤字に成ってたら申し訳ないなと思って」


しかしガチ生産職の人は幾つの生産系スキルを取ってるんだろ?凄いな・・・。


「それではまたの御依頼をお願いします」


ジャネットさんに挨拶をされ青空市をあとにする。


「さて西の街にさっさと移動しよう。明日から第2陣が参戦するから王都に居ると混雑に巻き込まれるよ」


ヒルデが急かす様に言ってくる。


「で、どうする?歩きで行く?それとも乗合馬車で行く?」


「あ、それなんだけどね。明日13日じゃない?夕方から家族でお墓参りに行くから明日は午前中しかログイン出来ないんだよね」


あ、確かにお墓参りもあるしその後は親戚が集まるから落ち着いてログイン出来ないかも。


「あ・・・お盆では確かにログイン時間を合わせるの難しいかも」


「盆踊りにも参加したいしねぇ」


確かに夏休みの大半をゲームにログインしてたから、たまにはリアルで遊ぶのも必要だよね。


「じゃあ乗合馬車で西の街に移動して、西の街に着いてからは個人行動かな。ログインする前に連絡取って時間が合いそうなら一緒に行動する感じで」


「それしかないよね。あと15日は一緒にお祭りに行くから夜は空けといてね」


「ヒルデ、一緒にお祭り行く彼氏とか居ないの?」


「あなたも居ないでしょ!!」


「居たら毎日ゲームなんてやってないよ・・・なんでそう言う事を言い出すのかなぁ・・・誰も得しないよ?」


なぜかヒルデよりサンドラの方が怒りだしたけど何かあったのだろうか?

3人共恋人居ない歴イコール年齢だと思うんだけど。


ヒルデと2人でサンドラを宥めつつ乗合馬車に乗り込み西の街へと旅立った。

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