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逆ナン?

「ねぇ、葵。聞いてる?」


「うん。なんとなく・・・」


「なんとなくって。隣のクラスの藤田もFEOやってるみたいなんだよ?」


私達は今、学校に来ていて特別教室を掃除をしてた。

今日は夏休み中の登校日。前日に母親に言われるまでスッカリ忘れていたのは秘密。


あれからずっと南の街の北側で棍と魔法のスキルのレベル上げを延々とやって、やっと遠距離攻撃魔法を覚えた。

新装備を受け取る期日が近付いたので王都に死に戻るの前提で、屋台のおっちゃんから聞いた街の南の奥にあると言う旧神殿を探しに突撃しようとしてたのに。

突然の登校日で予定が中止されてしまった。

いや、登校日は夏休み前から決まってたんだけどスッカリ忘れてた。


「それでね。藤田が何か情報を持ってないかあとで話を聞きに行かない?」


凜が結構無謀な提案をしてくる。

たぶん自分じゃ声をかけられないから私か祐奈に声を掛けさせるつもりだろう。


「しかし、どこでその藤田君がFEOをやってるって情報を仕入れてきたの?」


「さっき廊下を歩いてたら藤田と他の男子が話してるのがチラッと聞こえて、近くで盗み聞きしてた」


なんの悪びれもせずに凜が答える。


「凜、あんたね・・・」


掃除が終わり教室に戻ると祐奈を見付け、告げ口する。


「ねぇ祐奈。凜ったら廊下で別のクラスの男子の会話を盗み聞きしてるんだよ~」


「ちょっと葵。言い方。わざと誤解するように言ってるでしょ?」


「えっと・・・2人とも何言ってるか分からないんだけど?」


「あのね。隣のクラスの藤田君もFEOやってるんだって。だからね何か良い情報を持ってないか聞きに行こうって葵と話をしてたのよ」


「ん・・・私はその藤田君を知らないからちょっと・・・」


「私も知らないから抵抗あるな・・・」


藤田君を知らない祐奈に私も同調する。


「大丈夫よ。私も話した事は無いから。でも3人で話し掛ければ何とか成りそうじゃない?」


3人の中で一番人見知りをする凜が何を言ってるのか。


「それにゲームの中で会おうとかになるの嫌だし?」


「エッ?なんで?」


「だって願望丸出しのキャラを同級生に知られるの嫌でしょ?画像を撮られて他の同級生に晒されたりとか軽い生き地獄だよ?」


「あ・・・それはちょっと抵抗あるかも」


「えっ?2人ともキャラを見られるの嫌なの?」


祐奈が不思議そうにこっちを見てる。


「えっ?祐奈は知り合いにキャラを見られて平気なの?」


凜が驚いてる。

いや私も驚きだよ。


「別に見られて恥ずかしいものじゃないでしょ?普段からそれでプレーしてるんだし」


「えぇ、どこの誰とも知らない人に見られるのと、同級生に見られるのは違うでしょ?」


「そうなの?」


「じゃ、祐奈が藤田に話し掛けるの決定ね」


「なんで私?」


「そりゃ、羞恥心がない人の方が逆ナンパするの向いてるでしょ?」


「ちょっと!!キャラを他の人に見られるのは抵抗ないってだけで、知らない人に声を掛けるのは抵抗あるからね?」


「祐奈、そう言うのはいいから」


「何?そう言うのって?聞いてる?」


凜が強引に決定してしまう。

私としては自分に被害が出ないなら声を掛けるのは凜でも祐奈でもどっちでも良いんだけど。


ホームルームが終わり下校時間になった。

私たち3人は廊下に出て隣のクラスから藤田君が出てくるのを待ち伏せする。

と言っても私と祐奈は藤田君の顔を知らないんだけど。


「あ、出てきた。あの髪の毛を真ん中から分けてる人だよ。ほら祐奈!!」


凜が1人で興奮してる。

気分は犯人を待ち伏せする刑事とかの気分なんだろうか?


「もぅ。なんで私が」


文句を言いつつも声を掛ける為に近付く祐奈。

なんだかんだでお人好しだよね。


「藤田君!!で良いんだよね?ちょっといい?」


なんの躊躇もせず声を掛ける祐奈。

いきなり声を掛けられ戸惑う藤田君。


「あ・・・えっと佐久間さんだよね?隣のクラスの。そっちは小野さんと・・・」


「遠藤です」


一瞬『佐久間祐奈の取り巻きAです』と自己紹介しようか考えたが我慢する。

こいつ・・・祐奈と凜は知ってて私は知らないのか。

なんか凜と祐奈に負けた気分。

そりゃ祐奈は長身で顔も整ってるから目立つだろうし、凜は胸がホルスタインだから別の意味で目立つんだろうけどさ。

どうせ私は平均値ですよ。没個性ですよ。

私の中で藤田君の好感度が1つ下がった。


「えっと、それで何か用?」


「えっとね。藤田君はFEOやってるんでしょ?凜がね藤田君がFEOの話してるのをたまたま聞いてね。私たちもFEOをやってるから情報交換出来たらと思って」


祐奈が淡々と説明する。やっぱり祐奈は頼りになる。

そして一言も話さない凜。筋金入りだ。


「えっ?3人ともやってるの?この学校に他にプレーヤーが居るとは思わなかった」


第1陣の参加人数は5000人。その中で同じ学校に他に3人も居るとは思わなかったんだろう。

私たちだって3人以外にプレーヤーが居るとは思わなかったもの。


「私たちは王都と南の街で細々とスキルのレベル上げをしてるんだけど、藤田君は何してるの?」


「俺は東の街イタプルで鉱山に潜って素材集めて装備の強化してるところ。一応『龍翼』ってクランに入って活動してるよ」


「何か面白い情報ある?」


私がストレートに質問してみる。


「面白い情報って言ってもユニーククエストっぽいのは街のNPCに素材調達を頼まれるとか、鉱山に魔物が大量発生ぐらいで特にこれと言ったのは無いよ?」


「えっ?魔物大量発生とかあるの?」


「そんなに頻繁じゃないけどたまにある感じかな。岩人形とか、ウィプスとか鉱山内に大量発生する事があるよ」


「大量発生とかスキルのレベル上げが捗りそうね」


「鉱山の中は狭いくてパーティーで戦いにくいから大変でそんなに効率が良いもんじゃないよ?そっちは何か面白い情報は無いの?」


「私たちはスキル上げしかしてないから掲示板で出てる情報以外だと何かあるかな?」


「あ、葵。神殿があるとか言ってなかった?」


ちょっ!!祐奈それは秘匿しようって言ってたじゃん。バラしてどうするのよ・・・。


「街の人の噂だよ。放棄された旧神殿が南の街の更に南にあってそこで汲める水は生産素材とに使えるって噂」


「あ、噂で良いならこっちもクランのメンバーが聞いてきた噂があるよ。東の街の近くにダンジョンがあるとか」


「ダンジョン!?なにそれ凄い!!」


これまで一言も話さなかった凜が興奮気味に声を出した。

うん。藤田君も軽く引いてる。


「えっと噂だからね?まだ発見されたって話は聞いた事がない。どこかのクランが情報を秘匿してるのかも知れないけど」


「それでもダンジョンだよ?RPGの王道でしょ?」


「いや、凜。私たちのスキルレベルではまだ無理だと思うよ?」


「佐久間さん達はレベルどれくらいなの?」


「私は、1番レベルが高いのは片手斧で22に成ったところだよ」


「私は魔法がやっと15レベルに成ったところ」


祐奈に続いて私も答える。


「えっ、佐久間さんは斧がメインウェポンなんだ。しかもレベル高いね」


「藤田君は?」


あれ?私はスルーされた?祐奈にしか興味が無いのかな?藤田君は。私の中の好感度がまた1つ下がったぞ。


「俺は機械弓を使ってるけど、まだ機械弓のレベルは16だよ。パーティーでは斥候職みたいな事をやってる。サブウェポンは短剣の二刀流でこっちはまだレベル11」


「機械弓?」


私が疑問に思って聞き返すと藤田君の代わりに凜が答えてくれた。


「弓系は大きく4つに分かれてて、私の使ってる遠距離向きの長弓、連射向きの短弓、射程は短弓並みだけど威力が高い機械弓。FEOでは機械弓ってクロスボウの事ね」


「へぇ・・・あれ?あと1種類は?」


「あと1つは投矢。弦を使わないで矢を投げるやつ。ダーツの矢みたいなのをそのまま手で投げたり、投矢器って道具を使って槍みたいな矢を投げたり」


「それってネタ武器?」


「否定はしないよ」


鎌とか、投矢とかネタ武器も用意されてるんだよな・・・このゲーム。

まだ馬を手に入れられるか分からないのに突撃槍、いわゆるランスとかもあるし。


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