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馬車の中に居る・・・

時計で時間を確認する。

計算が正しいなら南の街に着く少し前にログイン出来るはず。


意識がハッキリするとそこは馬車の中。

ログアウトしたまんまの態勢だった。

とりあえず魔物に襲われて全滅し王都の神殿のベッドの上と言う訳じゃなくて良かった。


まわりを見渡し他の乗客を見てみる。

私の他に乗客は9人。いつの間にか満員になってたみたい。

その内、目を瞑って寝ている様に見えるのが6人。きっとログアウトしてるのだろう。

目を開け起きてると思われる人は、空中を指先で弄ってる姿が見える。メニューを見てるのか、誰かとメッセージをやり取りして時間を潰して居るのだろう。

他にも本を読んでたり、何か小さなアイテムを弄ってる人もいる。


「暇ですよね」


突然声を掛けられる。

身体の大きな熊のような体格のスキンヘッドの男の人。

鎧ではなく神官服のような物を着てる。

プレーヤーの生産者が作ったものなんだろうか?

流石に無視するとこの後の馬車の中の雰囲気に耐えられなさそうなので返事をする。


「はい。暇ですね。時間を計って街に着く頃にログアウトしたのですが計算をミスったみたいです」


「あぁ、今朝の出発の時に野営地で魔物に襲われたんですよ。それで出発が遅れてそのまま到着が遅れる感じですね」


「えっ、魔物に襲われたんですか?」


「と言ってここら辺の魔物ですから護衛の冒険者が難なく討伐したので客の私達は何もする必要がありませんでしたよ」


へぇ・・・この人詳しいな。

まさかログアウトしないでずっとログインしたままなのかな?


「あ・・・えっと・・・」


私が聞くかどうか迷ってると何か勘違いしたのか自己紹介をしてくれた。


「あ、名乗ってませんでしたね。私は『大師坊』といいます。前衛も出来るヒーラーって感じのスキル編成をして居ます」


「たいしぼうさんですか。私はエリザと言います。純魔法使いだと自分では思ってます」


名乗られたからには私も自己紹介をする。

ネットでは些細な事で粘着されたり、変な噂を流されたりするから礼儀には気を付けないと。

特に紳士的な印象を受ける人ほど内心はドロドロしてたりするらしい。


「純魔法使いでソロなんですか?」


「いぇ、南の街の南側でパーティーで狩りをしてたんですが狼に不意打ちされて私死んじゃいまして・・・」


「あぁ、それはパーティーの人達も待ってるでしょうね」


「いゃ、私のパーティーのメンバーは今日は自由に行動してるみたいですよ。今日合流できるなら合流したいんですけど」


嘘は言ってないぞ?嘘は。

私は事実だけを言ってる。

ただ野良パーティーに誘われたり、着いてこられたら怖いからやんわりと予防線を張ってるだけで。


「大師坊さんはお一人なんですか?」


一応、探りを入れてみる。


「はい。ログインが安定しないのでその時その時で野良パーティーに参加する感じですね」


「そうなんですか。私はリアルの友達たちとずっと固定パーティーなので野良パーティーはちょっと怖いですね」


「たまには変な人は居ますけど、VRで顔を合わせて話すからか酷い人にはまだ遭遇してませんね」


それはあなたの見た目が怖いからじゃ・・・と思ったけどそれは言わないでおく。怖いから。


そんな世間話をして時間を潰して居るとNPCの御者の人からもう直ぐ南の街に到着する。

寝てる人は馬車ごと馬車の停留所で寝かされると説明があった。

いや、それ起きてる人に説明しても意味が無いと思うんだけど。ログアウトしてる人のパーティーメンバー向けのアナウンスなのかな?


無事に街に到着し、停留所で降りる。

大師坊さんとは軽い挨拶をして別れた。

とりあえず無難に乗り切ったかな。


私はそのまま冒険者ギルドの近くに出店してる屋台を巡りお弁当を幾つか買かった。

更にHPポーションとMPポーションをギルドで仕入れて、さっそく街の北門を出る。


手には長杖ではなく棍を持った。

久しぶりの棍だ。動きを忘れてないと良いけど。

今回のターゲットは豚ネズミ。

ソロでも数的不利にならないよう単体で出る事が多いのが理由。

逆に数の暴力で襲ってくる羽ウサギは見付けたら全力で逃げる。

そんな作戦で行こうと思う。


そんな事を考えながら草原を進んで行く。

すると側面の草がいきなり揺れた。


「うっ、カエルかい!!」


飛び出して来たのは多足のカエル。

プレーヤーが間近に来るまで草の中に隠れてジッとしてて、そこから体当たりをしてくる奇襲戦法を使うカエル。


脇腹に体当たりを受け早々にダメージを受ける。


「ファイアボール!!」

「ソイルボール!!」


直ぐに魔法を放ちカエルの正面から逸れようと移動すると、別のカエルが草の中から奇襲の体当たりをしてくる。


「何匹いるのよ!!」

「ウォーターサークル!!」

「ウインドサークル!!」


範囲魔法を放ち牽制し周囲のカエルを炙り出す。


「5匹かい!!こんの!!」


棍を構えてカエルに近付き目いっぱい棍を振り下ろす!!

更に棍を引き戻し後から体当たりしてくるカエルを突く。


「【受け流し】」


棍の技を使い別のカエルの体当たりを受け流す。


「ファイアサークル!!」

「ソイルサークル!!」


範囲魔法でカエル3匹が光に変わり消える。


「うりゃ!!」


棍を片手で持ちカエルに片手突きを放つと更に1匹のカエルにトドメを刺す。

しかし突きで身体が伸びたところを最後のカエルに狙われダメージを受ける。


「あぁ、もう!!」


「ウォーターボール!!」

「ウインドボール!!」


魔法を放ち最後のカエルにトドメを刺して戦闘は終了した。


「初っ端からカエルはツイてないなぁ・・・。思いっきりダメージ受けちゃった」


【収納】からHPポーションを取り出し飲む。

身体がほんのり温かくなりHPが回復する。


「ん・・・片手突きは少し離れてても攻撃が届くけど隙が大きく出来るから使いどころが難しいな」


棍での攻撃は片手突きを除くと上から振り下ろすか、野球のバットのように振るか、あとは薙刀の石突きでの攻撃の様に棍の逆側で叩くか、両手で持って突くか。


「やっぱり棍は攻撃より防御メインに使って魔法の待機時間経過を待つしか無いのかな?」


1人でブツブツ呟きながら草原を歩くと、戦闘するパーティーを見付けた。

相手は羽ウサギ。空から物量で襲ってくるこの辺りでは一番遭遇したくない魔物だ。


「すいませーん!!助けてください!!」


戦闘してるパーティーの1人がこちらに向かって叫んでる。


えっ?私?

私ソロなんだけど?

物量で襲ってくる羽ウサギを何とかしろと?


「助けてください!!」


私が戸惑っていると更に叫ばれる。

ここで逃げたらイメージ悪いんだろうな・・・。

顔を見られちゃってるからな・・・。

フード被ってれは良かった。


「もう」


近くまで駆け寄り魔法を乱射する。


「ファイアサークル!!」

「ソイルサークル!!」

「ウインドサークル!!」

「ウォーターサークル!!」


今、私が出来る最大火力。

範囲魔法の4連射。

一気にMPが消費される。


魔法で何匹かの傷付いてたウサギは仕留めれたはず。

残ったウサギが私の方に向かってくる。

羽ウサギ数匹の連続降下キックは棍の受け流しでは捌ききれないので急いで孤を描く様に走り、助けを求めて来たパーティーの盾役の後に隠れる。


「ありがとうございます」


助けを求めてたプレーヤーが御礼を言ってくる。


「終わってないよ!!」


別のプレーヤーの声が響く。


私は棍を構え、盾役のプレーヤーに空から降下キックをしてくる羽ウサギを横から殴り飛ばす。

その殴り飛ばされ転がった羽ウサギに槍を持ったプレーヤーが走り寄りトドメを刺した。

また別のプレーヤーが飛んでる羽ウサギに光魔法のライトスピアを放ち、打ち落とす。

そこに盾役のプレーヤーがメイスを打ち下ろし羽ウサギを光に変えた。


こうして何とか戦闘は終了した。



誤字脱字報告ありがとうございます。

訂正しました。

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