新装備注文
[金仁屋]のヤットさんと丹奈さんと話を進めフレンドコードを交換し総額51万マニの半額を手付金として渡すサンドラ。
「ねぇ、私は注文終わったよ?2人は注文しないの?」
「サンドラ、あんた凄いね。ちょっと尊敬するわ」
なんでそこまで物怖じしないのか不思議だ。
「えっと私は長杖とローブ、服と靴。あとは棍を
注文したいんですが」
「あ・・・長杖か・・・長杖は木製じゃなく金属製になっても良いかい?あとローブか・・・」
ヤットさんが困ったような顔をする。
少し端切れが悪い。
「何か不味いんですか?」
「魔法関係の装備は専門外なんだよ。杖とか魔法用の装備は木材の方が良いとされてるし、金属製の杖もあるにはあるんだが宝石をハメ込んだりとかは細工の部類なんだよ」
「はぁ・・・」
「俺は専門が金属加工で、丹奈は革加工。木工や細工も出来ない事は無いが専門にしてる人にはスキルレベルが適わない。ローブも同じ理由でお勧めはしない。魔法加工が必要だから」
「なら服と靴、棍をお願いします」
「はいよ。棍は木製じゃなく金属製でいいんだね?丸棍と角棍があるけどどっちが良い?」
「今使ってるのが八角なので八角でお願いします。長さは私の身長より気持ち長いぐらいで」
「じゃ、服と靴で6万マニ、棍は9万マニってとこかな。合計15万マニだ」
「はい分かりました」
私もフレンドコードを交換して前金を渡す。
私に続いてヒルデも注文する。
注文の受け付けはヤットさん1人でやり取りしてる。丹奈さんはそれを見てるだけ。
口下手なのかな?人見知りなのかな?ちょっと親近感が湧く。髪の色も似てるし。
[金仁屋]をあとにして私の長杖とローブを売ってる店を探す。
周りを見渡すけど杖やローブを売ってる店は見当たらない。
魔法装備屋は人気が無いのか、エリアが違うのか
「お金に羽根が生えて飛んでったわ。私は46万マニも掛かったよ」
「私はまだ15万マニだから、あと20万マニぐらい余裕があるかな」
「それよりもエリザ、棍って何?いつの間にそんなのを?」
「えっ?言って無かったっけ?」
隠しててスッカリ忘れてた。
ソロの時しか使ってなかったしな・・・。
「ちょっとスキルリストを見せてよ?」
「えぇ・・・他人のスキルリストを見るのはマナー違反だよ?」
「良いから。私達も見せるから」
「えっ?私も見せるの?」
ヒルデの発言にサンドラがボヤく。
『エリザ』
【長杖 Lv.18】
【服 Lv.9】
【火魔法 Lv.12】
【水魔法 Lv.12】
【風魔法 Lv.12】
【土魔法 Lv.12】
【MP回復up Lv.16】
【魔力up Lv.16】
【詠唱短縮 Lv.16】
【MPup Lv.14】
『控え』
【棍 Lv.3】
『ヒルデ』
【片手剣 Lv.16】
【軽鎧 Lv.17】
【小盾 Lv.17】
【長弓 Lv.6】
【光魔法 Lv.9】
【闇魔法 Lv.9】
【回復魔法 Lv.17】
【敏捷性up Lv.17】
【スタミナup Lv.16】
【走破 Lv.16】
『サンドラ』
【片手斧 Lv.19】
【重鎧 Lv.18】
【大楯 Lv.18】
【投げ斧 Lv.9】
【投擲 Lv.9】
【力up Lv.14】
【耐久力up Lv.14】
【命中率up Lv.14】
【移動速度up Lv.13】
【調教 LV.2】
『控え』
【HP自動回復 Lv.10】
「へぇ、棍レベル3ねぇ。いつの間に」
ヒルデの目が怖い。
「いやソロの時にね。長杖だと魔物の攻撃を避けきれ無くて。盾を買いに行ったら長杖は両手杖だから盾と併用は出来ないと言われて棍を勧められたのよ」
「なるほど。エリザが最近の戦闘で魔物に殴り掛かるのは棍の影響なのね?」
サンドラが勝手に1人で納得してる。
いや殴り掛かるのは必要に迫られてだから。
「それにしても棍って。両手剣とか長槍とかもっとまともなのがあったでしょ?」
「あ・・・[日陰屋]って覚えてる?初期装備を買った店。あそこの店長に相談したら長杖と相性が良いのは棍だと言われて」
ん?なんで私は尋問されてるんだ?
「それ口からデマカセで売れ残りを売り付けられたんじゃないの?」
失礼な。
私がそんなマヌケに見えるのかしら?
「いやいや、初期装備はどれも同じ値段だから」
それよりも気になる事がある。
「ねぇ、私からも質問なんだけど何で私の魔法よりヒルデの回復魔法はレベルが遥かに高いのよ?」
「あのねぇ・・・私がどれだけ回復魔法を使ってるか。戦闘中も戦闘終了後も。下手なヒーラー職と同じぐらい回復魔法使ってるわよ?特にウチは猪武者が2人も居るし」
あれ?薮蛇だったかな?
ヒルデが何故かヒートアップしてる。
「まぁまぁ、ヒルデ落ち着いて。ほらエリザも反省してるから」
ちょっと待てサンドラ。
あなたも猪武者と叱られてるんだからね?私だけじゃないからね?
更に青空市を奥に進み人通りの少ない場所も見て回る。
木工で作ったテーブルや椅子、FEOの世界で戦った魔物を模った木の置物、原っぱの草を乾燥させて編んだゴザのようなものなどそれ誰が買うんだよ?とツッコミたくなる物を扱ってる店もあって中々面白い。
「あ、あれ杖じゃない?」
ヒルデが指差す方を見ると青空市の一番外れにひっそりと出店してる店があった。
杖や水晶玉やコウモリの羽根?とか如何にもな物をシートに並べてあるだけの簡素な店。
私達はその店の前まで行き品物を眺める。
品物の良し悪しは分からないけど確かに魔法用の杖が長杖、短い杖それぞれ売っている。
「いらっしゃい。魔法使い御用達の店[七芒星]にようこそ」
初期の緑色の服を着た女の子が出て来た。
女の子ってより同い年かな。黒髪のおかっぱ姿。
あれ?ハズレかな?この店。
「えっと・・・実用に耐える長杖とローブはありますか?」
「失礼な。全部実用品ですよ?」
「えっ、あ、すいません。第2の街以降でも通用するレベルのはありますか?」
「私が今作れる最高品質だとこれですね」
そう言って1本の長杖を見せてくる。
いや、見せられても私達は誰も鑑定系のスキルを持ってないので分からないのよ。
「あぁ、見ても分からないなら実際に試して見て下さい」
そう言って屋台の裏のちょっとした空き地に誘導される。
「じゃ、今あなたが使ってる長杖であそこにある杭に魔法を撃って、その次はこの杖で撃ってみて感覚の違いを試して下さい。あ、魔法は初期魔法でお願いしますね?範囲系とか撃たれると周りからガチギレされますんで」
「あ、私たち今デスペナ中でスキルが全部外れてて何も出来ないんですよ」
裏に来る前に説明しとけば良かった。
「そうですか。では私が魔法を撃ちます。その杖をお借りできますか?」
言われるままに長杖を渡すと、彼女が私の長杖を構えウォーターボールを撃つ。
流石に街中でファイヤーボールは撃たないか。間違って火事にでもなったら怒られそうだし。
いや彼女が火魔法を使えないだけかも知れないけど。
彼女の撃った魔法を見ると差は明白だった。
私の長杖って撃った時と彼女の店の長杖で撃った時とで目標の杭に当たった時の威力が違う。
これは欲しい。
「これ幾らですか?」
「これは見本なので非売品です。ここからその人の身長に合わせて長さを決めたり太さを決めたりするので。同じ品質だと15万マニですね」
「高っ!!」
サンドラの片手斧やヒルデの片手剣でも10万マニだったのに。
鉱石を多く使うサンドラの全身鎧並の値段とか。
「そうです。高いですよ?なんせ魔法使い用の長杖ですから。お年寄りの杖とは作る工程が段違いですから」
「えっ?削って終わりじゃないんですか?」
「違いますよ?そこから魔力付与して魔力の流れを整えますから。技術料が高いんです」
「じゃ、ローブも高いんですか?」
「ピンキリですけど良い物は高いですよ?打撃耐性や斬擊耐性や魔法耐性とか付与しますから」
「耐性付与?」
「金属鎧や皮鎧は材料そのものに耐性が付いてて防御力がありますがローブは布製ですから、耐性付与しないと装甲紙ですよ?」
いや、そうじゃなくて耐性を付与する事が出来るんだ?って事が疑問だったんだけど・・・。まぁいいか。
「なるほど。あのアクセサリーにも耐性付与とかできますか?」
ダメ元で聞いてみる。
「付与はアクセサリーでも武器でも金属鎧でも何でも出来ますよ?素材で向き不向きはありますが」
「実はサークレットが欲しいんですよ」
「付与は何が良いですか?耐性系だと装備してる部位付近でしか効果ありませんよ?」
「えっ?そうなんですか?」
オデコだけ斬擊耐性が付いても流石に意味はなさそう。
「そうなんですよ?盾に魔法耐性を付けたとして、背中を魔法で撃たれてその効果があったらおかしいでしょ?」
確かにそれでは盾の意味が無いな。
いや、ゲーム的に効果があっても良いと思うんだけど。
「あ、申し遅れました。私[七芒星]の店主のジャネットと言います」
少女の遅い自己紹介を受けた。
作者の勘違いで『付与』を『寄与』と表記してたのを訂正。
20200923