突然の・・・
意識が現実に戻り、装具を外し身体を起こす。
机の上の時計を見ると夕方の5時を少し過ぎたぐらい。
「うーん~」
身体を伸ばし身体のコリをストレッチで軽くほぐす。
キッチンで水を飲み水分補給を済ますと、既に外で散歩の催促をしている犬の助六の元に行く。
1時間ちょっとの散歩を済ませ、家族と夕飯を食べると自室に戻り、FEOの情報検索をする。
「ん・・・、私も軽く廃人みたいだな・・・」
独り呟き自嘲する。
公式掲示板や非公式の攻略サイトなどに軽く目を通して4つある第2の街の情報を得る。
「ん・・・何処も興味あるけど、これだって決め手に欠けるな・・・」
お風呂が空いたので検索を終了し、お風呂に入る。
待ち合わせログイン時間まで余裕が無かったので手早くお風呂を済ます。
何とか髪を乾かしログイン準備に装具を付ける。
こんな時は時間ギリギリにログインした方が都合がいいこのゲームの仕様に感謝する。
「ごめん。まった?」
「ううん。私も今きたところ」
私の謝罪をテンプレの台詞で返すサンドラ。
何気に毎回1番早くログインしてるのはサンドラだ。
「よし、間に合った!!」
そして待ち合わせ時間ギリギリで現れるヒルデ。
「じゃ、ご飯食べながらどの街に行くか話す?」
1番最後に現れていきなり仕切り出すヒルデ。
本当に良い性格をしてると思う。
ま、私は誰かが仕切ってくれた方が楽なのでそれで良いんだけど。
「夕飯を食べてログアウトして、リアルで夕飯を食べて、またログインして朝ご飯食べてって食べてばかりだよねぇ」
サンドラが宿の食堂で朝ご飯を食べながら話す。
「ゲームの中では太らないからいくらでも食べられるけどね」
「でも、食べては横になってゲームやっての繰り返し生活だと太るんじゃない?」
「あ・・・それはあるかも」
「あ、その事なんだけどね」
サンドラが何か言いにくそうに言い出した。
「どの事?」
「明日なんだけど家族で出掛ける事になってログイン無理っぽいんだよ」
「えぇ・・・ってそりゃそうだよね。夏休みだからって毎日昼夜問わずログイン出来る訳ないよね」
「そうだね。私も夏休み中ずっとはログイン出来ないだろうし問題ないよ」
「じゃ、明日は私とヒルデの2人で狩りだね。しっかりレベル上げてサンドラより強くなっておくから(笑)」
「ねぇエリザ、それなら明日は私たちも別行動にしない?」
突然ヒルデが提案してくる。
「え、なんで?」
「1度、野良パーティーに混ざって狩りってやってみたかったんだよね」
「野良パーティーって、あんた人見知りは大丈夫なの?」
「ん・・・知らないグループの中に入るのは苦手だけど、全員がそれぞれ初対面なら何とか大丈夫だと思う」
ずいぶんと都合の良い人見知りだなぁ・・・。
「でも野良パーティーって、2人組で参加とかそう言うのもあるんじゃない?」
なぜかサンドラがヒルデの心を折りにいく。
「あ、大丈夫。野良パーティーの募集の段階でそう言うのは避けれるから」
予習バッチリだなヒルデ。
となると私はどうしよう?
スキル編成が完全後衛職だからな・・・。
王都の回りの原っぱだったらソロでも狩れるかな?
「じゃ、私は明日はソロで狩りしてみる。狩りの時の立ち回り方の練習になるかも」
2人にソロでやると宣言する。
「話がまとまった所で本題ね。何処の街に行きたいか決まった?」
「特にこれだって要素が無かったのよね」
「ちょっとエリザ、ちゃんと調べてきたの?」
北の街は穀倉地帯、更にずっとずっとずーっと進むと別の国に行ける。
東の街は山の麓の街で、そこから私たちが籠もってた森の奥や鉱山に行ける。
南の街は別の森と大河があり、街から西に行くと砂漠もあるらしい。
西の街は海に近くの漁村と王都の中継地点となってる街。
「強いて言うなら西の海の街かなぁ・・・」
「えっ海?海の街じゃなくて海との中継地点の街なんでしょ?だったら装備の事を考えて東の山でしょう?新鉱石で新装備」
ヒルデが私の案を直ぐさま却下する。
「いや、装備を更新するお金が無いでしょう?1つ上の装備でも10万マニぐらい掛かるよ?」
直ぐさま私もヒルデに反論する。
「じゃ、間を取って南の街は?」
サンドラが折衷案(?)を出す。
「いや、間を取ってって何よ(笑)」
「北の街は無視?(笑)」
速攻で私とヒルデのツッコミが入る。
「いやだってね。北の街はその内に隣の国に行くのに必ず通るでしょ?海も山もなんだかんだで行きそうだし、南の街が1番行きそうに無くない?」
「なるほど・・・それはあるかも」
ヒルデがサンドラの意見に納得してる。
「いやいや、そんな事は無いと思うよ?ゲームなんだからバランス良くイベントやダンジョンとか配置してると思うよ?」
でも、ヒルデとサンドラで意見が一致したようで、元々私は何処でも良かったので目指すのは南の街に決まる。
「あとはアイテムの買い出しだね。地図や方位磁石とか冒険に役立つアイテムを」
「あとレジャーシートみたいなの欲しい。地ベタにそのまま座ってご飯もあれだし」
「リュックサックは絶対だよ?アイテムを持てる量が増えるんだから」
「じゃ、青空市に行って適当に見て回って、売ってなかったら、テントとか買った[諸手屋]で買い揃える感じでいい?」
「いいよ。はじめから[諸手屋]に行けば全て揃いそうだけど(笑)」
「青空市を見て回るのが目的だからね」
宿屋[馬耳亭]から出て王都を東西に横断するらしい大通りを王都の中心地に向かって歩く。
私たちは基本的に王都の東側の一部しか知らない。
「王都の中を歩いて回るのも初めてだよね」
「ここはゲームを始めた時に歩いたはずだけどスタートあんまり記憶に無いね」
「私は街で全ての人の話を聞いてから街を出る派だったのになぁ・・・」
サンドラがボヤく。
この王都、始めの街なのに滅茶苦茶広い。
王都と言うくらいなのだから広いのは当然何だろうけど、2日や3日ぐらいでは絶対に全てを見て回れないのが漠然と分かるぐらいには広い。
NPCも大勢居て宿屋や武器屋とかだけでなくそれに品物を卸す問屋やNPCが買う服屋や医者や学校なんかもあるらしい。
「流石に全員の話は聞いて回れないでしょ?たぶんNPCの数は万はいるよ?」
「いや、万では一桁足りないでしょ?都市よ?都市。王都だからね?」
「定番だと街のNPCから話を聞いてユニークイベントが始まるのよね」
「あ、実際にユニークイベントを起こしたプレーヤー居るみたいよ?」
ヒルデはどれだけ情報収集してるんだろ?
私と同じ時間ゲームをやって、更に掲示板で情報収集とか。ちょっと心配になる。
「で、どんな?イベント」
「お使いイベントが殆どみたいよ?店が忙しいからと親に変わって学校まで子供を迎えに行く送迎イベントとか、冒険者ギルドを通さない素材採取イベントとか」
微妙なイベントだな・・・。
「へぇ、宿に帰ったら女将さんに何か用事はないか?と聞いてみる?(笑)」
サンドラはなんかやる気だ。
「病気の子供の為に特別な薬草を3日以内に・・・とか依頼されて、依頼失敗して子供が死んだらトラウマものだよね・・・」
私がボソッと呟く。
「流石に成功するまで何度でもやり直しできるでしよう?」
サンドラの発言をヒルデが否定する。
「ユニークイベントはやり直し不可なのよ。失敗したらそれで終わり。鬱ENDもあると思うよ?」
「えっ、じゃあ王都を襲うドラゴンの群れ撃退イベントとかあって、それを失敗すると王都は壊滅したままになるの?」
「流石にそこまで思い切ったイベントを運営はやらないと思うよ?王都をここまで作り込むの手間だったと思うし、それを廃棄するようなイベントはやらないでしょ?」
「それもそうだよね」
そんな雑談をしながら大通りを歩き続けると、今歩いてる王都を横断する大通りと、王都を縦断する大通りとの交差点にたどり着く。
近くにはゲームスタート時に居たコロッセオが見える。
そこから南に向かって少し歩くプレーヤーらしき人を見かける数が増え、更に歩くと開けた場所に色々な屋台が無数に見える。
「ここが青空市か・・・」
「結構、時間が掛かったねぇ」
宿屋を出て青空市に着いた頃にはお昼を過ぎていた。




