今後の方針は
私とサンドラが雑談をしながら待つが時間になってもヒルデがログインして来ない。
どうしようかと思ってたら約20分遅れでヒルデがログインしてきた。
「ごめん。掲示板を覗いてたら少し遅れた」
「少しじゃないから。リアルでの5分はこっちでの20分だからね?」
「20分あったら・・・えっと、色々と出来るからね?」
「何も例えが浮かばなかったのかい(笑)」
とりあえずヒルデが素直に謝ったので本題に入る。
「とりあえず色々と調べてきたよ。とりあえず私は3つかな」
ヒルデが自信満々に語る。
「まずこの王都の南側の公園でプレーヤーが青空市を開いてるってさ。運が良ければプレーヤーの作ったポーションがNPCの店より安く買えるって」
「えっ、もうプレーヤーがポーション作れるようになったの?」
「【調薬】ってスキルを持ってれば簡単みたいよ。薬草2つとクルクルって木の実を1つをすり潰してそれに水を加えて、調薬スキルを使って液の濁りが無くなるまでかき混ぜると出来るみたい。それをポーション瓶に入れて完成だって」
ヒルデがドヤ顔で語る。
「もうレシピまで出回ってるんだ。秘匿しないんだね?」
「なんか商業ギルドや調薬ギルドに聞けば簡単に教えて貰えるみたいよ?秘匿するまでも無いみたい」
「しかもね凄いのが材料費はポーション瓶を含めても500マニぐらいなんだってさ。つまり1つ1000マニで売れれば500マニの儲け」
「結構良い儲けになるんだね・・・」
「ヒルデ、エリザも原価厨?材料を集める手間や作成失敗もあるんでしょ?そこまで儲からないと思うよ?」
サンドラの発言に現実に引き戻される。
「確かに。それに青空市で販売するのも手間だしね。調薬道具も初期費用として掛かるだろうし・・・」
私がそう続けるとヒルデが思い出したように新しい情報を出してきた。
「あ、販売は商業ギルドや冒険者ギルドで委託販売が出来るって。自動販売機みたいなのがあってそこに品物を補充して販売価格を設定すれば、欲しい人が勝手に買っていくって」
「それは良いね」
「でも売り上げの10%をギルドに取られるって」
あぁ・・・そのパターンね。
10%か。高いのか安いのか判断に迷うな。
「次は・・・じゃあエリザ、何調べてきたの?」
「私は採取系のスキルに付いて調べてきたよ。観察スキルで採取ポイントが多く見付けれて、採取や採掘スキルでそのポイントから多くアイテムを獲得出来るようになるみたい」
「えっ、それだけ?」
ヒルデが驚いた声を上げる。
隣でサンドラも微妙な表情をしてる。
「そ、それだけじゃないよ?あとは【収納術】ってスキルがあれば収納できる数が増えるのと、収納しなくても、アイテムは実際に手に持って運べるのも調べたし」
「エリザに調べ物を任せるのがそもそもの間違いだよヒルデ。エリザは野生の勘で生きてるんだから」
サラッと毒を吐くサンドラ。
流石にそれは言い過ぎ。
「じゃ、サンドラは何を調べてきたの?」
「ふっふっふ・・・。私は出費を抑える方向で色々と調べてきたよ」
いつになくサンドラが自信満々だ。
「まずは私達が1番お金が掛かってるのは何でしょうか?はいエリザさん答えて!!」
んっ?何か始まった。
「はい先生。それは宿屋代です」
「エリザさん100点。それではヒルデさん。なぜ私たちは宿屋に泊まってログアウトしてるんでしょうか?ヒルデさん」
「えっと・・・ログアウト中に悪戯されない為?」
「ヒルデさん残念でした50点。あとは宿屋がスキルを変更できる数少ない場所だからです」
あ、これ点数制なんだ。
と言うか何?この茶番は。
「でも、私たちはまだ交換するスキルを持ってません。なら私たちは宿屋に泊まる必要性が無いんです」
えっ、馬小屋?馬小屋に泊まるの?確かに宿代の4000マニは浮くけどそれは最終手段だよね?私は断固判断するよ?
そんな事を考えてるとサンドラが私を見てニヤリと笑った。
「そこで私達はこれからキャンプをします。まずはテントを買って、お弁当を数日分買い込み【収納】に保管します。そしてフィールドのログアウトポイントで寝泊まりして、アイテムが持てないぐらい溜まったら街にアイテムを売りに来ます」
キャンプか。馬小屋よりは悪くないかも。
ヒルデを見るとヒルデも納得した顔をしてる。
「と、言う訳で採取系スキルは取らずにスキルポイントは温存してキャンプをしましょう。これで宿代と食費で1日約6000マニから、1日2000マニ弱の支出になります」
あ・・・色々と頑張って考えたのはスキルポイントを無駄にしたくなかったのね。
ちょっと納得した。
「なるほど天才あらわる。私達の装備は初期装備だから耐久値は減らないから都合が良いかも」
ヒルデがサンドラの意見に賛同する。
「街とフィールドとの行き帰りの移動時間も節約出来るから、その分だけ狩りの時間が増えるね」
私もサンドラの意見同意する。
「じゃ、決まりね。スキルは取らずにテントで狩り三昧って事で」
スキル変更の可能を考えて宿屋で話していたのだが結局スキルは変更しない事になったので宿屋を出てテントを買いに向かう。
テントを売ってる店が分からなかったので、とりあえず装備を揃えた[日陰屋]に向かった。
「こんにちは。やってますか~」
店の中に入り声をかける。
やっぱり今日も客は居ない。大丈夫なのか?この店。
「はいよ。お、この間のお嬢さんたち。今日は何が欲しいの?」
「あのここにテントってありますか?」
ヒルデの質問に店主さんが困った顔で答える。
「おいおい、ここは装備屋だよ?テントは置いてないな」
「あーそうですよね。テントを売ってる店でお勧めはありますか?」
軽く事情を話しお勧めのお店を聞く。
「あ、そう言う事情なら馬耳亭の女将には聞けないわな。宿代を節約したいからテントを売ってる店を教えてくれとは(笑)」
完全に店主さんに呆れられてる。
でも背に腹はかえられないのさ。
ない袖は振れないのさ。
「なら、この道をずっと進んで四つ目の路地を右だ。[諸手屋]って古い問屋だがテントぐらいの在庫は抱えてるだろ」
店主に礼を言い[諸手屋]にやってきた。
ここら辺は細い路地も多く言われないと足を踏み入れたくないようなちょっとした危険な雰囲気すらある。
とりあえずヒルデを先頭にして[諸手屋]に入る。
「いらっしゃいませ~」
扉を開け入ると、少しやる気の無さそうなお姉さんが対応してくれた。
「すいません。[日陰屋]の店主さんに紹介されて来たんですが、テントって売ってますか?」
「あら、日陰屋さんの紹介?珍しい。あのお店にお客さんが入るなんて。テントですね。1人用、3人用、6人用とありますがどれにしますか?」
人数は私達を見て聞いてくれたんだろう。
3人用もあるらしい。
「野営するなら他に寝袋やランプはあった方が良いですよ。光魔法の光源が使えるなら要らないですが」
私達は少し相談して答える。
「一人用のテントを3つ。あと寝袋とランプもお願いします」
「はい。テントは設営が面倒だけど安い三角テントと、設営は楽だけどちょっと高い自立式テントがありますが・・・」
「安い方でお願いします」
「ランプは普通のランプと腰にぶら下げられる小型ランタンがありますがどうします?値段は同じですよ?」
「私は大きい普通のランプで」
ヒルデは大きい灯りを選んだ。
「私は腰にぶら下げられる小型ランタンを下さい」
「私も腰にぶら下げられる方で」
私とサンドラは戦闘でも使えるランタン。
「はい。テントが一人用の三角テントで20000マニ。寝袋とランプがそれぞれ5000マニ、それを3セットなので合計90000マニですね」
「うっ・・・1人頭30000マニの出費。財布の中はいよいよ火の車目前だ」
だからと言ってここで支払いを拒否する訳にはいかない。
私達はもう引き返せないとこまで来ている。
「ありがとうごさいました」
やる気のないお姉さんの心なしか嬉しそうな挨拶を受けて店を出る。
「あ、朝ご飯とあと買えるだけのお弁当を買わないと」
サンドラの声を聞き、次々と財布の中から出ていくお金に軽く絶望した。