決着
「あっ!?」
魔法ギルドでお爺ちゃんお婆ちゃん達の猛特訓を受けて5日目、私の頭の中にシステムメッセージが届いた音がした。
『スキル【連続発動】を習得しました』
「あ、チーノ婆ちゃん!!【連続発動】を覚えたよ!!」
ちょうど指導をしてくれていたチーノ婆ちゃんにその事を告げる。
「おお、そうかい!!よく頑張ったね。聞いとくれ!!エリザちゃんがスキル覚えたよ!!」
チーノ婆ちゃんは我が事のように嬉しそうに他の休憩中の爺ちゃん婆ちゃん達に報告して回ってる。
「うむ・・・1番はチーちゃんに取られてしまったか・・・」
「チーノさんは前からエリザちゃんに教えてたから、教え慣れてた部分もあるから当然かも知れんな・・・」
「よ、ようはビリに成らなきゃ良いんじゃからのぅ」
「やっぱり教える人が上手いと生徒の伸びも変わってくるんじゃな?」
爺ちゃん婆ちゃん達はそれぞれに悔しがり、チーノ婆ちゃんは年甲斐もなく勝ち誇ってる。
「ほらエリザちゃん、まだワシの受け持ち時間じゃから、ジュースでも飲んで休憩しときな」
そう言ってわざわざ魔法で氷を作って、コップに入れてジュースを注いでくれる。
この5日間、お茶しか出てこなかったのになぁ。
よっぽど爺ちゃん婆ちゃん達との勝負に勝ったのが嬉しいのかな?
・・・うん、1番最初にスキル習得したのがチーノ婆ちゃんの指導の時で良かった。
もしチーノ婆ちゃんがビリにでもなった時は今後の関係に悪い影響が出たかも知れない。
その後、残りの爺ちゃん婆ちゃん達に指導を受けたんだけど、1番をチーノ婆ちゃんに取られたのが悔しかったのか、もうスキルを習得出来る段階に来てる事に触発されたのか、ビリには成りたくなかったのか、それまでより厳しい指導を受けたがその日はスキルを覚える事は無かった。
魔法ギルドに通い始めて6日目。
「みんな早くしてくれ。なんか1人だけトランプで早あがりをしてしまって、その後でみんなが盛り上がってるのを輪の外から1人寂しく眺めてるような気分がするよ」
魔法ギルドではチーノ婆ちゃんが1人寂しくボヤいていた。
チーノ婆ちゃんの受け持ったスキルは昨日習得したのでチーノ婆ちゃんは今日はやる事が無い。
他の爺ちゃん婆ちゃんは指導できるのが少し羨ましくなってるみたいだ。
「ほら、チーちゃんは今日はやる事が無いんだから脇で大人しく見ててね」
「勝負だから余計な口出しは厳禁じゃぞ?」
「今日はまた新しい練習法を考えてきたからのぅ」
そんなチーノ婆ちゃんを他の爺ちゃん婆ちゃんがからかう。
そしてその日の練習が始った。
指導に熱の入った爺ちゃん婆ちゃんの叱咤激励もありその日は【発動待機】と【MP消費減少】を習得する事が出来た。
「う、嘘だ・・・ワシがビリだなんて・・・あれだけ色んな方法を毎日試してたのに・・・」
「いやそれが敗因じゃろ?練習法に成れる前に次々と新しい練習をさせられたんでは練習に成らないだろうに」
「エリザちゃんは根性があるから、1つの練習をみっちりやらせた方が習得が早くなるのはチーノさんの見てれば分かっただろうに」
「次期王都魔法ギルド会長内定おめでとうさん。色々あるが頑張っとくれ」
それぞれがビリになったお爺ちゃんに声をかけ勝負を振り返っている。
【連発発動】【発動待機】【MP消費減少】か・・・あと覚えてないのは【並行詠唱】か。
【並行詠唱】はスキルリストからポイントで習得出来るんだよな・・・取っちゃおうかな。
考え方によっては4つのスキルをスキルポイント1で取ったと考えられるし。
「どれまだ時間があるから、残り1つを4人で教えて習得させちまおうかの」
本日何もしてないチーノ婆ちゃんがそんな事を言い出して、それから3時間みっちり4人の指導を受け【並行詠唱】もポイントを使わず習得した。
・・・結局、今日も約12時間特訓とか廃ゲーマーみたいな事をしてしまった。
まぁ、冷静に考えるとやってる事はミニゲームをクリアしてスキルを手に入れる感じなんだよね。
RPGゲームのクリア後のやり込み要素的な。
「エリザちゃん、スキルは今日で全て覚えられたけど、次もまた来るんだよ?スキルを取っただけでスキルの使い方や注意点はまだ何一つ教えてないんだからね?」
「そうじゃよ?メリットも大きいけど少し癖があるスキルもあるからのぅ」
いつも通り夕飯を御馳走にり帰り際にそう告げられた。
ヒルデとサンドラと決めたソロ期間は1週間だからまだ1日余裕があるけど、結局魔法スキル習得だけで終わりそうだ。
アインとラメドとの水入らずでの狩りもしたかったんだけどなぁ・・・。
いや、レアなスキルをこれだけ手に入れたのにそれは欲張り過ぎかな。
翌日、ログインし魔法ギルドへ向かってるとその道中でまた魔法ギルドを探してた2人組と遭遇した。
「あ、この間の子だよね?どう魔法ギルドの情報は何か聞いた?」
私を見付けるとやはり馴れ馴れしく女性の方が話し掛けてくる。
むぅ・・・やっぱりこのノリは少し苦手。
知らない人と馴れ馴れしくするのはどうなんだろ?
ネットマナーとかネチケットなんて言葉もあるんだからさ・・・いきなり距離感ゼロで話し掛けられるのは抵抗がある。
しかもそう言う人に限ってこっちもタメ口を話すと不機嫌になったり逆ギレして罵ってくる人も居るからなぁ・・・。
「いぇ、魔法ギルドの話は聞かないですね。あの後に掲示板で既出情報を見たぐらいで」
「王都の南東側の街にあるって情報なんだけどな・・・ガセネタ掴まされたか?」
男の人の方が独り言を言ってるのが聞こえた。
「えっとそれは何処情報なんですか?」
「んっ?あぁ西の街で魔法ギルドに行った奴がそこのギルド職員から聞いたらしいぞ?まとめサイトに載ってるから見てみたら良いよ」
「ところで貴女は今回はここで何してるの?」
「あ、私は・・・前回と同じお使いクエストなんですよ。八百屋で良い材料見繕って持って帰ると料理教えて貰えるんです」
とりあえず適当に嘘を吐いて誤魔化しとく。
間違っても魔法ギルドで4つ、いや【魔力操作】を入れて5つもスキルを教えて貰ってるとかは言わない方が良い気がする。
「お前、魔法使いじゃないの?」
「あ~一応は魔法使いなんですけど、生産スキルも取っててそっちのクエストなんですよ」
「ふ~ん、そうなんだ。それじゃ何か魔法ギルドの情報が分かったら教えてくれ」
「それじゃね」
私の話を興味が無さそうに聞き流すと、2人は去って行った。
更に魔法ギルドを探すんだろうか?
探す暇があるなら他の街の場所が判明してる魔法ギルドに行ってスキルを習った方が良いと思うんだけど。
まぁ、幹部の人に上手く知り合えて入会を推薦されるかは分からないけど。
とりあえず自分に被害が出なかった事を安堵して、八百屋の奥から魔法ギルドに向かった。
魔法ギルドに入ると相変わらず4人の爺ちゃん婆ちゃんは既に揃っててお茶を飲んでる。
「おはようございます」
「おお来たか。それじゃさっそく習得したスキルの講習を始めるかのぅ」
「よっ、次期会長!!頑張れ!!」
「わかり易く簡潔にじゃぞ!!」
立ち上がって黒板に向かうお爺ちゃんはビリになったお爺ちゃんだ。
そして残りの3人がそのお爺ちゃんを囃し立ててる。
ビリに成ったお爺ちゃんだったから少し不安だったけど、お爺ちゃんの講義は分かり易く上手く今風に噛み砕いて話してくれてとても良かった。
もしかしたら、実践派ではなく理論派だったのかもこのお爺ちゃん。
お爺ちゃんの話によると・・・。
【連続発動】は発動させた魔法を連発させるスキルでスキルレベルが上がると連発出来る数が上がるらしい。MP消費は1発毎に普通に撃つ魔法1発の1.5倍とコスパは悪くMP切れを注意された。
【発動待機】は魔法を唱えた後に発動させるまでの時間を遅らせる事が出来るスキルで待機中は徐々にMPが減るらしい。
【MP消費減少】はそのまま1発の魔法のMP消費がスキルレベルに応じて少し減るスキル。
【並行詠唱】はスキルスロットにセットした2つの魔法スキルの魔法を予め設定しておく事で同時に発動出来る事になるとか。
しかし私の持ってる【精霊魔法】は1つの魔法スキルと判定されるらしく、【精霊魔法】1つで2つ同時に発動させるのは出来ないとの事。
・・・私的に死にスキルかな?
講習を聞いて、お爺ちゃんお婆ちゃん達に御礼を言うと魔法ギルドを後にした。
ふっふ。これで正統派魔法使いとして盛り返せる。
・・・しかし1度にこれだけスキルを増やしてスキル編成をどうしよう?
スキルスロット10枠を15枠や20枠に増やせるスキルがあれば良いのに。
・・・いや、ゲームバランス崩れるから駄目か。




