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森の奥へ

「シールドスラップ!!」


ヒルデが裏拳の要領で小盾で魔物を殴り付け、続けて片手剣で斬りつけトドメを刺す。


「ヒルデ、お疲れ~」


「どう?見た?【軽業】と【跳躍】スキルを併用した私の踊るように舞う私の活躍♪」


ヒルデが自分の戦闘が満足したのか得意満面で語ってるがちょっと何を言ってるか分からない。


「エリザもヒルデももう行くよ!!今日中に目的地に着くのが目標なんだからね!!」


基本的に時間に煩くやスケジュール通りに進行したいサンドラが軽くイライラしてる。


リアルで食事休憩をして今は午後の部の3Q。

夜の4Qで東の街に戻る事を考えれば時間的にはもう直ぐ折り返し地点。

・・・なんだけど。

フォレストキーパーの4人は頻繁に採取休憩を挟むので行軍速度はかなり遅くなってる。

もしかしたら最初から4Qで到着すれば良いと考えてるのかも知れない。


『魔女の庵』の3人で狩りをして回ってたり、村に移動してる時とは行動パターンが違うのが新鮮と言うかストレスと言うか。

良くも悪くも私たちだけなら優先順位の1位を1つ決めてそれを最優先で動くから、狩りと決めたら狩り優先で徘徊したり、移動優先で魔物を避けて移動したりする。

しかしフォレストキーパーの面々は採取と目的地までの移動の両方を優先順位の同率1位にしてる感じでどっちつかずの行動に成っててモヤモヤする。

まぁ依頼人の意向だから従うしかないんだけど。


「このセルサンザの葉は魔力抵抗が高いので繊維を取り出して布に織り込んでそれで服を作れば魔力抵抗に補正がかかる防具を作れるので高く売れるんです」


「この鉱石は染料に加工できるので絵を書く人からも喜ばれるんですよ」


採取休憩の時の魔物警戒もだんだん慣れてきて、採取するノッチさんやレイレイさんと雑談する余裕も出てきた。

まぁ、その分アインとラメドとシエロの従魔たちが頑張って周囲の警戒をしててくれるんだけど。


そんな感じで森の中を目的地に向かって進んで行く。

既にログアウトポイントを出発して数時間。

日は完全に昇りあと少しでお昼になる時間なのに森の中は葉で日射しが遮られ薄暗い。

その中を順調に目的地に向かって進んで行く。


「ねぇ、なんか気分的に魔物との遭遇率が落ちてきた感じがしない?他のプレーヤーが増えたと言うか」


気になった事をサンドラに聞いてみる。


「あ・・・この近くにダンジョンがあるみたいだからそこに向かってるプレーヤーが多いんじゃない?・・・と言うかエリザは護衛任務なのにフィールドの情報を検索してきてないの?」


おっと薮蛇。

良かれと思って気になった事を共有しようとしたら、サンドラから白い目で見られた。

情報収集はヒルデの担当と全面的に任せてたからな・・・。

サンドラも色々と調べて来てたとは。


「ダンジョンってあれだよね?この間、見付けたクランがあらかた探索してお宝を獲得し尽くしたから公表したってやつ」


「そうそれ、でもダンジョン内に出て来る魔物の素材がそれなりの値段で売れるのと採掘でもそれなりに収穫あるとかで今人気あるみたいよ?」


「ふーん。それならなんで情報隠蔽しとかなかったんだろ?」


「あれじゃない?ほっといたらその内、他のプレーヤーにも発見されて情報隠蔽しといたの叩かれるから、先に公表してクランの名声を高めるのに利用したとか?」


「なーる。そりゃ初のダンジョン発見クランとかトップクランの仲間入りだよね」


「・・・私たちだって【魔力操作】を公表すれば『魔女の庵』もトップクランの仲間入り出来たのかも知れないのに」


サンドラが試すように私を見てくる。


「その頃『魔女の庵』はまだ結成してなかったじゃない。それにチーノ婆ちゃんにも迷惑掛かるからって話をしたじゃないの?魔女の庵は表舞台のクランじゃなく、陰で暗躍する秘密結社で良いのよ」


「秘密結社と言っても3人しか所属していけどねぇ(笑)」


「人が増えたら人間関係とか面倒臭そうだもの」


「エリザ、それ以前に人が集まらないから大丈夫だよ?」


「なんかちょっと悲しくなってきた(笑)」


サンドラとそんな話をしながら歩いていると、後方からヒルデの声が上がった。


「サンドラ!!エリザ!!敵襲!!右後ろ側!!」


ほぼバックアタックを受けたような感じで隊列が崩れてしまう。

私とサンドラは急いで指示された前線に走る。


「ヒルデ!!魔物は?」


「土の中だよ!!突然、土が噴き出したの!!」


「エリザ、先制攻撃で魔法を撃ち込んでみたら?」


「ねぇサンドラ。魔物がまだ土の中に居るなら走って逃げれそうじゃない?」


「よし回避しよう。今回は護衛だし。エリザとサンドラは走って戻って先頭を走って。私が殿(しんがり)を受け持つから」


ヒルデが指示を出し、私とサンドラはまたもや走って先頭に戻り急いで現場から離れる。

うーん、後方に行ったのは二度手間だった気がする。

と言うかヒルデが殿(しんがり)は私がと言いたかっただけじゃないのか?


更に先に進むとまた魔物に遭遇した。


「多いね」


「カマキリだよ。でも小さい」


現れたのは小さなカマキリ。

いやリアルのカマキリと比べたら充分に大きいのだけど、この森で出て来る熊ぐらい大きなセミとか、カタツムリとかと比べたら遥かに小さい。

30センチ強ぐらいの大きさのカマキリ。それが十数匹。羽根で飛びながらこちらに向かってくる。


「・・・虫の集団ってそれだけでグロだよね」


「シエロ!!範囲魔法お願い!!」


私の発言をスルーして、サンドラはシエロに先制攻撃となる範囲魔法をお願いする。

因みに私はまだ【精霊魔法】のレベルが低くて範囲攻撃魔法を使えない。


「耐久力アップ!!」


私はサンドラに耐久力アップの授与魔法をかける。

アインとラメドが後方から前線にやってきて先頭のカマキリに飛び掛かる。


「ホーリーショック!!」

「イービルショック!!」


後衛のヒルデが魔法を放つ。


「ウインドボール!!」


私も魔法を放ち、サンドラが止めきれなかったカマキリにメイスを叩き付ける。


あまりにも数が多かった為にフォレストキーパーの4人も【収納】から武器を取り出してカマキリを牽制して自衛をしてる。

フォレストキーパーに向かって攻撃を仕掛けるカマキリを私とヒルデで討伐する。


数の暴力、更に空中を飛んでる的には魔物の注意を引くスキルを使っても壁役、俗に言うタンクは上手く機能しない。

特に護衛対象者が居ると戦いにくい事この上なかった。


「すいません。大丈夫でしたか?」


ヒルデがフォレストキーパーの4人に回復魔法をかけて回る。

フォレストキーパーの面々は幸いにも誰も死ぬ事は無かったがダメージ0と言う訳にはいかなかった。


「いえ、気にしないで下さい。あの数では仕方ないですから」


ノッチさんが気を遣ってくれる。


「出る魔物の種類が変わってきましたね。ここからが大変かも知れませんね。まさか数で来るとは思っていませんでした」


「でももう直ぐ到着するからあと一歩だろ」


アーヤさん、キョウさんも今回の戦闘はビックリしたようだ。


「エリザ、回復は全員終わったよ!!でもMPが怪しいから回復するまでは戦闘は回避して!!」


「了解!!魔物との遭遇率自体は落ちてるから大丈夫だと思う!!」


更に進むと森が開けて、湖が姿を現した。

湖面から(がま)の様な草がまばらに頭を出して湖と言うよりは沼に近いイメージを受ける。

まぁ、大きさから言えば間違いなく湖なんだろうけど。

水の透明度はそこまで高くなく軽く濁っている。

その中をレイレイさんが覗き込み中の植生を確認している。


「ありがとうございます。ここが目的地で間違いないと思います」


レイレイさんに御礼を言われ、フォレストキーパーの残りの3人も採取する為に目的の物を探し始める。


「ん・・・ここで間違いはないと思うんですが、目的の物の採取はもう少し散策しないと駄目みたいです」


「はい。帰るまでが護衛ですから最後まで付き合いますよ」


ヒルデが調子よく答えた。







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