予定変更
「ふぅ。まぁ何とかなったね」
ヒルデが光となって消えていくアイアンゴーレムを見ながら感想を漏らす。
「大型のゴーレムは私たちでもドジらなければ安定して倒せる事が分かったねぇ」
「そうだね。エリザが【授与魔法】と【剥奪魔法】をもう少し使いこなしてくれればもう少し楽になると思うし」
ヒルデが気になる事を言い出した。
「えっ?私、駄目だった?あんなもんだと思うんだけど?」
「ねぇエリザ、【授与魔法】と【剥奪魔法】を使うタイミングおかしいよ?なんで最初にファイアボールを撃って、その後に【剥奪魔法】の耐久力ダウンを使ったの?普通は逆でしょ?」
「あと私が魔法を撃った後で魔力アップを掛けて来たでしょ?」
あれ?2人から思いっきりダメ出しされる。
「いや・・・戦闘開始に攻撃魔法を放つのは、いつもの癖で。ヒルデが魔法を使った後に魔力アップを使ったのはヒルデが悪いんだよ?」
「えっ?なんで私が悪いの?」
「だってヒルデが使った魔法、私は初めて見たもの。【精霊】のボールがヒルデの回りに飛んでなかったから今日は魔法をセットしてないんだなと思ってた」
とりあえず言い訳してみる。
「それは【精霊(光)】と【精霊(闇)】は勝手に魔法を撃つからガチの戦闘ではダメって分かったから今回の狩りでは自分で撃てる【聖魔法】と【邪魔法】をセットしたのよ?」
「それは言ってくれないと反応できないって」
「じゃ、次からは大丈夫よね?バフとデハブで支援するバッファーは縁の下の力持ちなんだから。バッファーの腕次第でパーティはかなり強くなるんだからね?」
「そうだねぇ。エリザには私たちが戦い易いようにサポートして貰わないと」
んっ?おかしな話の方向になってきた?
「そうそう。エリザは石垣、サンドラは城。天守閣に座るはこの私。2人にはちゃんとして貰わないと」
「なんで私たちがヒルデの配下みたいになってるのよ?それにお城の天守閣ってお殿様の部屋じゃ無いからね?」
「エリザ、天守に居るのは鬼女だからヒルデの言ってる事は間違ってないよ?」
「ちょっと!!誰が鬼女よ!!」
「じゃ、やっぱり間違ったんだ?」
「・・・はいはい。間違いました。ゴメンナサイ」
「天守閣に座るはこの私。キリッ」
「悪かったって。もうやめて!!」
アイアンゴーレムを倒して満足した私たちは、このまま荒野でアイアンゴーレム狩りをするのは混んでて効率が悪いと判断し荒野をあとにした。
まだログアウトまでは時間があったので一旦街道まで戻り、そこから更に北上し街道の北側の森で狩りをする事に。
「ここなら空いてて安定して戦闘が出来るでしょ?お金儲けは出来なくても経験値稼ぎは出来ると思うし」
「・・・ねぇ、なんか私たち森での狩りが多くない?」
「その間まで南の大森林を歩いてたからでしょ?」
「あっ、そう言えばこの森、王都の東門から出た所にあった森と繋がってるのよ?あそこから北東に進めばここに到着するの」
「えっ、そんなに広いの?もしかしてこの森は南の大森林より広い?」
ふと思った事を口にしてみる。
「ちょっとエリザ、常識的に考えて1番大きいから大森林って呼ばれるのは分かるでしょう?」
ヒルデが呆れた目を私に向ける。
「えっ?だって王都から第2の街を通り過ぎてここまで広がってる森だよ?相当大きいでしょ?」
「大森林はもっと広いみたいよ?横幅も奥行きも。私たちのクランハウスのある第3の村のその奥もずっと大森林らしいから」
「へぇ・・・そこまで大森林は広いんだ・・・」
そんな話をしながら私たちは森の中を散策し、魔物を見付けては倒して回った。
魔物は、魔法を撃ってくる熊のように大きなセミ、酸を飛ばすカタツムリ、木の上から魔法を撃ってる蓑虫など遠距離攻撃に特化した昆虫系の魔物が多かった。
「昆虫って小さいなら可愛いけど、人間並みに大きいと存在そのものがグロだよね?」
「そうだねぇ。顔とか良く見るとエイリアンって言われても納得できるレベルだよねぇ」
「私、蝉の顔をジックリ見たの生まれて初めてかも。夢に出るレベルでインパクトあったわ・・・」
昆虫の魔物の強さより、その見た目のグロさに参ってた私たちは運よくログアウトポイントを発見し、丁度良い時間になってた為その日はログアウトした。
翌日、ログインするとログアウトポイントには他のプレーヤーも多く野営していた。
「あれ?プレーヤー増えてる?」
「あ、エリザ遅いよ!!」
既にログインしていたヒルデが私を呼ぶ。
待ち合わせ時間より早くログインしたのに遅いと言われるとは。
「ねぇ、この森の北上にある湖の近くでダンジョンが見付かったんだって!!今、掲示板は軽く祭りになってるよ!!」
「えっ?ダンジョン?」
「そう。情報公開したパーティによると、先月のお盆の頃には見付けてて独占して探索してたんだって。それで探索が終了したから情報公開したみたい」
なるほど。
独占して美味しい所は全て手に入れたから情報公開か。
あれ?それって・・・。
「ねぇ、そのパーティがダンジョン探索終了したって事はそのダンジョンのお宝はそのパーティが独占したって事じゃないの?」
「まあね。それでもそのパーティが見付けられ無かったお宝や隠し部屋とかがあるかもしれないとそこに向かうパーティが通り道のここにも居るって訳」
なるほど。
ダンジョンまで行く経由地がこのログアウトポイントなのか。
「ヒルデ。他のゲームだとダンジョンは宝箱をとっても時間が経つと宝箱が復活したりするけど、このゲームの仕様はどうなの?」
「宝箱が復活するなら、そのパーティが情報公開すると思う?」
もう。質問に質問で返されても。
「ん・・・ダンジョン内が混みあうのを防ぐ為、パーティ毎に別のダンジョンに飛ばされるインスタンスダンジョンなら公開しても不利には成らないかも?」
「このゲームはわざと単一サーバーで運営してるぐらい複数サーバーとか、インスタンス化は否定的なのよ?」
「だよねぇ。とすると今からダンジョンに言ってもお金になりそうにないよね?」
「ん・・・たぶんダンジョンの中は混みあってて大変な事に成ってると思うよ?魔物狩りすら難しいんじゃない?」
「ねぇ、話はまとまった?」
膝にシエロを乗せてモフモフしてて、こちらの話に混ざって無かったサンドラがやっと話に入ってくる。
「もうサンドラ。気になるならちゃんと話に混ざってよ!!」
「待ち合わせ時間まではプライベートな時間だからね?私のシエロとの癒やされタイムは譲れないよ?」
「サンドラ・・・リアルでなんか悩みあるの?」
ちょっとサンドラが病んでるように見える。
「なんでそんな話になるのよ?リアルでペット飼ってないからこっちでペットと戯れてるだけだよ?毎日のルーティンにしようかと思ってるんだから」
「あ、そうなの?まぁそれは好きにやって」
うん。真面目に心配して損した。
「それで話はどうなったの?ダンジョンの話をしてたんでしょ?」
「そう。私たちには3つ、いや4つの選択肢があるの」
ヒルデが指を4本立てて宣言する。
「1つはこのままこの森で狩りをする」
うん・・・昆虫グロは昨日でお腹いっぱいかな。
まぁ私たち3人とも魔法系スキルを持ってて魔法耐性を上げれるから、魔法攻撃が多いここの昆虫との相性としては悪くないんだけど。
「2つ目はダンジョンを目指して、ダンジョンに挑戦」
お宝は期待できないし、混んでるからまともに戦闘出来るかも怪しいんだよね。
ダンジョンがどんな感じか1度は見てみたいけど。
「3つ目はダンジョンの情報で人が減る事を期待して、南の荒野でゴーレム狩り」
本当に人が減ってれば良いけどね・・・希望的観測なんだよね。
でも減ってるなら当初の目的のゴーレム狩りでお金儲けが出来る訳で。
「そして4つ目は、東北か東南の第3の村に行ってみる。鉱山もあるみたいだし面白いかも」
鉱山か。
でも私たち誰も【採掘】スキルを持ってないなら意味がないんだよね。
それにここから村まで何日もかかるだろうし。
しかしまだ言った事の無い村ってのは気にはなる。
ん・・・悩むな・・・。
「ねぇ、ヒルデ。その4つどれも魅力を感じないんだけど・・・」
・・・サンドラがぶっちゃけた。




