北、飛竜キタル
続きモノ
書き方変えたら読んでる人増えた?
…気のせいか…
ではどうぞ?
東門でオークと冒険者達が戦闘を始めた頃
「ワイバーン1頭確認!距離は…約2000!」
「今日はどんな厄日だよっ!バリスタいいか!?」
「準備完了!いつでもどうぞ!」
北門では、山岳地帯から流れてくる飛行型モンスター対策で城壁の上に設置された攻城用大型弓弩の発射準備を街の兵士たちが行っていた。
飛行型モンスターはせいぜい頭の悪い鳥型くらいしか相手にしてこなかった兵士達は大騒ぎだった。
「四方八方からモンスターの大群か……そういや今姐さんは外だったか?さっきの光の柱は、もしかしたら危機を知らせるために姐さんが何かで狼煙を上げてくれたのかもな?」
「それにしたってワイバーンですよ?……俺この街の北門配置になってから一度も来たことないのに…」
古参の兵士が、南門の先の砦を破壊した光は何かの合図だったのだろうと呟くと、横にいた新米兵士が顔色を青くさせて、震える手をバリスタに押さえつけながら口を挟む。
「そりゃおまえ、賢いモンスターってのは強い奴の縄張りには入ってこねぇからな?うちの街にゃロイテストの姐さんとノルアドの嫁さんが居るから滅多な事じゃ近付きもしねぇよ。」
「先輩…さっきから姐さんって言ってるのオーランドの旦那の看板娘のロイテストちゃんの事ですか?可愛いですよね、彼女…あの笑顔見てるだけで1日生きていける……」
エームの街の古くから住んでいる者なら当たり前な事を先輩兵士が言うと、事実を知らない新米兵士は熱に浮かれたように語り出す。
「真実をしらねぇってのはときに残酷だなぁ…おい新米!いい感じに緊張解れたろう?おいでなさったぞ!」
「へっ?リョ、了解!」
バリスタの射程距離に入ったワイバーンに向けて全バリスタが照準を定め、射つ。
「…………なぁ……今全部直撃したよな?」
「…そうですね……あのワイバーン……なんかおかしくありません?」
バリスタは、北の山岳地帯から滑空してくるワイバーンに全弾命中したのだが、全てカカ、カンッと硬質な音で弾かれてしまう。
驚きで呆然としながら先輩兵士が新米兵士に確認すると、新米兵士が何かに気がつく。
「あのワイバーン…鎧着てますよ!しかもアレ、飛竜用のマジックアーマーです!王都で飛竜隊の精鋭がつけるような上等なやつです!」
新米兵士が指差したワイバーンの所々に、黒い鱗のような物が付けられている。
それは正しく飛竜用のマジックアーマーでそれを着ていると言うことは、誰かがこのワイバーンを操っている事の証明で…
「俺たちの火力じゃどうやっても倒せない!新米!他の所に増援要請だ!急げよ…いつまで持つかわからんぞ…」
バリスタくらいでは倒せない事が確定した為、古参の兵士は急いで救援要請を出した。
*****
「ローテは大丈夫だろうか…あまりはしゃぎすぎていないといいが…」
ロイテスト達と冒険者ギルドで分かれたゴラムは不安そうに顎ひげをさすり、また修繕費が…経費がかさむ…とぼやきながら歩いていた。
「ん?じーちゃん、何か困りごとか?ロスは協力するぞ?」
「ずるいー、リルも!リルも!」
がっしりとしたゴラムの両肩には、赤いスプリングカットで目つきの悪い紅眼の娘が右肩に、青銀のサイド縦ロールでとろーんとした大きな蒼眼の娘が左肩に装備されていて両サイドから同時に聞かれたゴラムは、嫁が引き起こすであろう惨事を忘れて苦笑を浮かべる。
「そんな事言っても直ぐにおやつはやらないぞ?良い子にしてたらノルアドの店で何か買ってやるが?」
「ふんふん!ロス良い子にしてる!」
「リルも〜〜!」
ゴラムがそう声に出すと、2人はゴラムの肩にしっかりと座り直して膝に手をつく、今は見えていない筈の犬耳と尻尾が幻視出来そうな喜び方ではあったが。
「重くありませんか?歩かせても大丈夫だと思いますが…」
「デュフフ、よ、幼女は可愛いですな、まぁ、ぼ、僕の嫁が1番ですがの…デュフフ。」
2人を見たねねがゴラムを気遣っている横で、ノルアドが太った腹を震わせながらニタッと笑う、周りの人達がそのノルアドの笑顔を見て後ずさっていく。
「「っ?!」」
「?!」
「…む?」
「デュフフ…ふ…?」
そうしてノルアドの店まで歩いていると、双子、ねね、ゴラム、ノルアドの順に何かの気配を感じ立ち止まる。
「皆さん、今何か…感じました?」
「あぁ、確かに……こりゃ修繕費の心配どころじゃねぇかな?」
「そうですぞ…う、うちの嫁の出番ですかな?」
ねねが気配を感じたか聞くと、ゴラムとノルアドが真剣な表情になってうなづく。
「ロスも感じたぞ?弱そーだけど…」
「うん、よわそー…」
ロスは紅いキリッとした目を細めて不満そうに呟く
リルは本当に分かっているのかわからないが、ロスと同じ様な事を欠伸をしながら答える。
「ゴラムさん?僕はヨルドさんを……西に連れて行きます…恐らくリバーゼさんが向かってますが太刀打ちできないかと…」
「……じゃあ俺は…北か?…気配的にはドラゴンだろうが、俺は手数は多くても火力が無いからな…」
「申し訳ありませんが私は南に、お嬢様が心配ですので。」
目の奥に澄んだ表情を覗かせたノルアドが気配を辿りながら状況を掴もうとすると、南側に1番強力な気配を感じたノルアドだったが南側にはロイテスト達がいる筈、西側にリバーゼの気配も感じたが、勝てないと判断したノルアドは嫁のヨルドを連れて応援に行くと言って、弛んだ腹を揺らしながら自分の店に駆けていく。
ゴラムが北に、ねねが南に行く事を決めると、ゴラムの両肩から、
「ねね、ママを迎えに行くのか?じゃあロスも行く。」
「りるもりるも〜…むかえいく〜。」
退屈そうにしていた双子をどうしようか?と、ねねとゴラムは先に考えることにした。
*****
ノルアド魔法道具店入り口付近で1人の肥満体の男が倒れていた…ノルアドである。
「ぶひぃー…ぶひぃー…た、たしゅけ…て、い、息が…」
はひゅー…はひゅーと、気管に異常をきたすように息を吐きながら手を伸ばすが気味が悪くて誰も助けない…そこに、
「ノルアドさん!?大丈夫ですか!ギルド長からの伝言を…」
「と、とりあえず…店に…」
リバーゼから伝令を受けた職員がリバーゼを抱き起こしながら話しかけると、ノルアドが息も絶え絶えに自分の店の入り口を指差した。
ーカラーン…ー
「いらっしゃいませ、どの様な御よ…ぅ?………御主人様!如何なされた!敵襲か……何処じゃ!妾の愛しイ御主人様をこンナ目に合ワセたヤツは!……貴様カ?」
ノルアド魔法道具店に入ったノルアドを担いだギルド職員は、白い着物を着た紫色のロングストレートの綺麗な髪の美女に迎えられ惚けていると、息がきれたノルアドを見た女性が恐ろしい剣幕になり、一瞬の内にノルアドを抱き抱えてふよふよとしたノルアドの腹にその綺麗な顔を埋める。
そしてギルド職員の方を見ると、また一瞬の内にギルド職員の目の前に現れ、瞳孔が爬虫類の様に開き、紫の髪が重力に逆らって不規則に動き出す。
「ち、違います!倒れていたノルアドさんを運んだだけです!」
「で、ですぞ…ぼ、僕を助けてくれた……恩人ですぞ…」
「何じゃ…そうならそうと早く言わんか!危うく縊り殺すところじゃったわ。」
異様な気配を感じたギルド職員が怯えた表情で否定すると、気がついたノルアドが肯定する。
それを聞いた白い着物の女性は表情をころっと変えて、怖い事をさらっと言う、そしていつの間にか手にしていたお茶を差し出されたノルアドとギルド職員は大人しくそれを飲んだ。
「ヨルドさん、さっきの気配感じた?」
「…気配?あぁ、とるに足らん弱々しいあれのことかの?妾にとっては……ほれ、そこの羽虫の如しじゃ。」
お茶を飲んで一息ついたノルアドが、嫁のヨルドに質問をすると、何でもない事の様に視線の先でブンブン飛んでいる羽虫を指差す。
「ヨルドさんにとってはとるに足りない存在でも僕らには脅威なんだよ…それにヨルドさん、リプシンさんと仲良いよね?西に向かったリバーゼさんが怪我したらリプシンさん悲しむだろうなぁ…」
「むむ、確かに…リプシンには街に来たときから買い物やご近所付き合いで世話になっておるし、あのゴツい朴念仁の小童が居なくなれば確かに………。」
ノルアドが副ギルド長のリプシンを引き合いに出すと、仲良くしているヨルドが悩み出す。
リプシンがリバーゼの事が気になっている、というか恋しているのを知っているヨルドが、仕方ないのう…と呟いて、
指輪を1つ外す
「御主人様よ、西の転移符を…ちとリプシンに恩を売ってくるでな?」
「じゃあコレ、整備終わってるからリバーゼさんに渡しといてよ…あっ!リバーゼさん助けたらそのまま東に送ってね?僕もこの後出るけどたぶん必要だから。」
ヨルドが着物の胸元に外した指輪を仕舞い込むとそう言ってノルアドに転移符を求める。
そこにノルアドが転移符2枚と指輪を渡す
「御主人様の魔具は人には過ぎた装備な気がするがのう……まぁよい、しかと承った。」
そう言ってヨルドは転移符を使わずに消えて行った。
「あ、あの…?今…消えて?」
「僕らも行きますぞ?あぁこれ、一緒に持って来ていただけますかな?」
ギルド職員が信じられない光景を目の当たりにして驚いているのを気にせず、ノルアドは幾つかの袋を渡す。
「これは一体?」
「ポーション類の入ったマジックバックですぞ?東は怪我人多そうですからな?」
ギルド職員の給料3年分と言われる高級品を幾つも渡されてギルド職員は訳が分からず、ぽかーんと呆けた表情で立ち尽くした。
*****
「じーじはリルおもくない?」
「あぁ、軽いもんだ、っとアレか……デカいな…俺じゃ致命傷は難しいかな?」
北に向かったゴラムの左肩にはリルがちょこんと座っていた。
ゴラムは上空のワイバーンを確認するとローテが居ればなぁ……と無い物ねだりをしていた。
「ちめいしょー?」
「おう、そうだ致命傷、削って拘束してが俺の戦闘スタイルだからあそこまでデカいのはローテが専門なんだがな…そうも言ってられんか。」
「ろーちゃんおおきいのたおすの?」
「そうだ、ローテはあぁ見えて力持ちだからな!」
ゴラムが指輪に魔力を通してキラリと光らせる、するとゴラムの周りに10本の魔剣が浮遊して現れた。
リルが不思議そうにロイテストの事を聞くと、ゴラムが最後に「馬鹿力……がつくけどなっ!」と言って駆け出す。
北門に現れたワイバーンは不幸中の幸いか、直接攻撃しかしてこない個体だった。
バリスタで牽制しながら何とか持ち堪えていた守備隊だったが隙をつかれて街への侵入を許してしまった。
「不味い!この先は避難所が…って…誰か居る?」
「こんな時に誰が……おおっ!アレは!」
「"魔剣の"ゴラムだ!助かった…姐さんは見えねぇが…ゴラムが来たなら百人力だ!行くぞお前ら!弓と魔法使える奴は援護、他は念のため避難誘導だ!」
街に入ってしまったワイバーンだったがワイバーンの前に2人の人影が…現役は退いたが現在でもこの街の5本の指に入る実力者、"魔剣の"ゴラム元S級冒険者の登場に北門の兵士は気合を入れ直して、ワイバーンを倒すべく準備を始めた。
「……硬いな…装甲飛竜って誰かの差し金か?…いよいよローテが居ないと倒し切れねぇかな…」
ゴラムが浮遊する剣を操作しながらワイバーンを足止めして、傷つきはするが未だに致命傷を与えられず苦戦していた。
「むーー…じーじ、つまんない……みゅ!このこたおしたらままよろこぶ?」
「む?あぁ、倒せれば喜ぶと思うぞ?ドラゴンは亜種でも肉も旨いしな?」
左肩で大人しくしていたリルが頬を膨らませながら文句を言い、ワイバーンを倒すと言い出す。
それを聞いたゴラムは苦笑しながら肉も美味しいと言うとリルがゴラムの左肩から飛び降りてワイバーン目掛けて走り出す。
「おい!嬢ちゃん!」
「…おにく…おいしい…ままよろこぶ…………………………ウォオォォォォォォォォォン……」
ゴラムが駆け出したリルを止めようと手を伸ばすが、想像以上に速いリルが先にワイバーンの足下にたどり着いてしまう。
ワイバーンの足下でぶつぶつと呟くリルが、だんだんと青白い毛皮に覆われ辺りを冷気が覆い出す。
どんどんと大きくなり、ワイバーンと同じくらいの大きさまで巨大化した狼姿のリルは遠吠えをあげる。
そして…
「ままとろすとりるのごはんっ!」
「ギャーーー!…………。」
ワイバーンが、リルの遠吠えにたじろぐと、リルが大きな口でパクりと一噛み、ワイバーンは叫び声を上げてパクリとも動かなくなる。
「こ、これは…」
大きな青白い狼姿のリルをゴラムが見上げていると、ぽんっ…と気の抜けた音と共に一瞬で大きな狼が消え、中心部に幼女姿のリルが現れる…全裸で…
とりあえず駆けつけた兵士達に服を着せてもらったリルは、嬉しそうにワイバーンの肉を持ち帰ると話していて、その背後、かなり離れた所ではゴラムが兵士達から裸の幼女を連れていた罪で尋問を受けていた。
「ままとろすとろーちゃんよろこんでくれるかなぁ♪」
兵士からフリフリのついた服を着せてもらったリルはただご機嫌そうにニコニコしながら出されたお菓子とお茶を堪能していた。
とある鍛冶屋の末路
「だから違うって!あの娘はうちの息子の知り合いの子で…」
「ランテルの子だって?じゃあ孫じゃないか!ゴラムの旦那、何でこんな事を…」
北門の収容施設に収監されたゴラムが、ランテルの友人で思い込みの激しい面倒くさい兵士に弁明している。
「旦那がロイテストさんみたいな幼女趣味だとは知っていたが…まさか本物のロリにまで手出すなんて!…ロリババアは良いが、ロリは駄目だ!、YESロリータ!ノータッチだぜ!」
兵士が力説していると、ゴラムが顔を朝真っ青にして兵士を指差す。
「旦那…俺もロリは好きだが手は出さない…あの子達は可憐な花…見ているだけで癒される……だがロリババアは駄目だ!アレはロリの皮を被ったバケモノだからな!それが分かったっ…ら…?」
ゴラムがガタガタと震えながら指を刺すのに気がつかない兵士は拳を握りながら力説する。
が、最後の良いところで不意に誰かに肩を掴まれる。
良いところだったのに!と憤慨しながら手の主に振り向いた兵士はこの後一生後悔した……
「ふぅん……ロイテストさんは〜…ロリババアで〜…バケモノなんだ……ふーん…そうかぁ……そうなんだぁ…?」
その後とある兵士はロリに見える全ての住人にジャンピング土下座をして回ったらしい…
何故そんな事をしたのか聞かれると、
「金の悪魔が……ひいっ!いや、か、神が…女神が降臨された…あは…あははは…」
と、笑い出して要領を得なかった。




