サイクロプスロード対??
続きモノ
主人公?そんなモノは飾りです……
ではどうぞ?
東門の守備部隊は冒険者を中心に配置されている
今やまともに動けるものはBランク以上の上級に分類される数名だけだったが…
「リプシンさんを守れ!」
「怪我人は門の中へ!急げ!突破される!」
怒号が響き渡る東門前の戦場ではたった一体のモンスターに苦戦していた。
「おいおい?俺はそこの綺麗なネーチャンに用があるだけなんだわ、お前らはっ!お呼びでっ!無いんだっ!よっ!……と…」
赤い大鬼にしか見えないオークロードのオロークは次々に現れる冒険者を手にした巨大な柱で1人づつ吹き飛ばして、気丈にも震えながら支援魔法を唱える金髪聖女のリプシンに近付いていく。
「な、なんとか耐えれば、西からリバーゼさんが応援に来てくれます…それまでは…此処は死守します!」
一度目の前まで接近されたリプシンは大盾をもった冒険者に助けられてオロークと距離を離したが、守ってくれた冒険者は支援魔法をかけていたにも関わらずに盾ごと吹き飛ばされて壁に叩きつけられて戦闘不能になってしまった。
リプシンはゾッとしながらも必ずリバーゼが助けに来る事を信じて必死に立ち向かっていた。
「んん?西か〜〜…そりゃ残念だったなぁ…」
「リバーゼさんを舐めないでください!リバーゼさんは昔邪竜の亜種を倒したこともあるんですから!」
オロークがリプシンの言葉を聞いて西側に視線をチラッと動かし、残念、と言うと、リプシンが大声で反論する。
「いや〜でもな〜……あっちにいるのが…サイクロプスだけってのは……誰が決めたんだ?」
ーズッッッドオオォォォォォン……ー
西側から聞こえた大きな音…それを聞き、「なぁ?」と笑いながら言うオロークの言葉に不安を感じたリプシンだったが、
「それでもリバーゼは必ず来ます!そう約束したんです!あの人はどんな時だって私との約束を破った事は無いんです!」
「ほぅ、そうかいそうかい…じゃあそいつが来るまでにお前を犯れば…楽しい事になりそうだなぁ…」
ニタァと嗤うオロークに対して、冒険者達は必死の防戦を始めた。
*****
少し前、西門
「あー、お前さん方は俺の撃ち漏らしを頼む、ありゃあ姐さん戻ってくるまで俺以外のやつじゃ死にに行くだけだからな……」
頼んだぞー、と軽い感じで歩いていくリバーゼを、西門の兵士達は歯痒い気持ちで見送ったが、言葉通り撃ち漏らしだけでもなんとかしようと気合を入れて守備についた。
「…ちっ、やっぱ強えのいんじゃねぇかよ、貧乏くじ引いたかな…アイツらに伝言届いてりゃいいが……」
リバーゼが愚痴りながら歩いていると、遠くの方から地響きと木の倒れる音が響いてくる。
「おいでなすったか……んじゃあっ!剛撃のリバーゼ!いざ参る!」
リバーゼは3体のサイクロプスを確認すると、自らよりも数倍は大きなサイクロプス目掛けて大斧を投擲した。
「グオオォ…」
「っと!コイツは返してもらうぜ?」
リバーゼの投げた斧はサイクロプスの眼に当たり、大きな一つ目のサイクロプスは眼と頭部を一撃で損傷してドシンッと木をなぎ倒しながら倒れ、眼に刺さった斧をリバーゼに抜かれて生き絶えた。
「さぁ!次だ!早くしねぇとリプシンにドヤされるからな!」
リバーゼはサイクロプスの血が付いた大斧を一振りして血を飛ばすと、味方を殺され気が立っている残り2体のサイクロプスへと駆け出す。
*****
「うへぇ……結局6体もいやがんの…血塗れで気持ち悪りぃ…」
リバーゼは瞬く間に残りの2体を倒すと、更に追加で現れた3体を瞬殺して一息つく、そろそろ東門の応援にでも…と腰を上げた時、背後から気配を感じて大きく後ろに飛び退く。
「…………ふむ、某の気配に気がつくとは……瞬く間に同胞6人を屠った強者だけはある。」
「……テメェなにもんだ?みょーな気配しやがって…」
リバーゼが寄り掛かっていた大木を音も無く斬り払った謎の人物が木陰からゆっくりと歩いてくる。
日の光が当たる場所に出てきたその人物は、東の国の民族衣装の"キナガシ"を身に纏い、170cmくらいのすらっとした、しかしながら筋肉質な異様な男だった。
「名乗りが遅れた、某はサイクロプスロードのサイロと申す…同胞を屠りし強者…そちらは?」
「チィッ!上位亜種かよ……俺はエームの冒険者ギルドギルド長のリバーゼ、元S級冒険者だよ…」
睨み合い、相対しているだけで気力と体力がどんどん削られていくのがリバーゼにはわかった。
「圧倒的…それこそアイツらレベルの奴じゃなきゃ即死だな…」
「イキやよし!では…あの方より賜りし我が剣…存分に照覧あれ!」
愚痴りながら構えるリバーゼに気を良くしたサイロは、自身の全力を持って相手をすることを決め、腰に構えた東方の武器"カタナ"を腰だめに構え、最後の言葉と同時に連続で放つ。
「っ!!くおっ?!…が…グハァッ!!……」
リバーゼは大斧で防ごうとしたが斧がサイロの刀に触れる度削れていき遂には斧が砕け散り、リバーゼも吹き飛ばされてしまう。
「ふむ、人族にしては勿体ない実力……オローク殿よりは強者であろうが某相手には力不足のようだな?」
ザッザッ、と地面に足を擦りながら近づいてくるサイロを顔だけ向けて見るリバーゼ……既に指一つ動かすのも辛い
「苦しまぬようとどめを刺してやろう、人の強者…リバーゼ殿よ…」
「…………………………やっと…………きやがった…か……」
サイロの刀がリバーゼに迫り諦めかけたその時、リバーゼがよく知った気配を感じて目に光が戻る。
「っ!?……何奴!」
ナニカの気配を感じたサイロが全力で後ろに後退すると、先程まで立っていた場所が弾け飛ぶ。
サイロは、あまりに唐突に感じた気配を探る、そしてリバーゼの真横に誰かが居るのが分かりそちらに視線を向ける。
「ふん、あの忌々しい小娘め…肝心な時に役に立たんとは街の守護者が聞いて呆れるわ…のう小童?…む?あぁそうか、人とは脆い生き物よのう?」
リバーゼの横に立っていたのは、白い蛇柄の着物を着た長い紫色の髪をストレートに流した妙齢の女性で、リバーゼに向かって愚痴を言い何かに気が付いた女性は「ほれっ!」と言って着物の胸元から出したポーションをリバーゼにかける。
「…できればもうちょい早くきて欲しかったんだがな?ともかく助かった、ヨルド…礼を言う。」
鎧や武器はボロボロだが、傷は全て回復したリバーゼが白い着物姿の女性ヨルドに礼を言うと、
「小童が気安く呼ぶでないわ!妾をヨルドやメス豚と呼んでいいのは御主人だけじゃ!」
全く!と可愛く怒るスタイル抜群の美女が残念な怒り方をするとリバーゼが安心と飽きれからため息を吐く。
「……強者リバーゼ……そやつ…いや、その方はいったい……」
「ほぅ…妾の気配が分かるか?小童にはちと荷が勝ちすぎたようじゃのう…此処からは妾が遊んでやろう………おっとそうじゃ!小童、おぬしは今から東門へ行け…リプシンの奴がぴんちだと御主人様が言っておった。」
ヨルドから並々ならぬ力の波動を感じたサイロが、後退りながら質問すると嬉しそうに笑ったヨルドは、笑みを深めて更に強い波動をサイロにぶつける。
そして思い出したかのようにリバーゼにリプシンの危機を伝える。
「そいつを早く言ってくれよ!またドヤされちまう!」
「案ずるでない、御主人様から転移符とコレを預かっておる……持っていくが良い。」
「ありがてぇ!じゃあ…悪りぃが此処は頼んだ!」
リプシンの危機を伝えられたリバーゼが焦って走り出そうとすると、ヨルドが1枚の符と指輪を渡す。
感謝を言うのとほぼ同時に転移符を起動してリバーゼの姿が消える。
「……転移アイテムだと……貴方様はいったい……」
「さてと話は終わりじゃ……せいぜい妾を楽しませてみせよ…さもなくば……その命戯に屠ってやろうぞ?」
多大な魔力を消費する転移符を使用して、尚且つ強大な魔力を漂わせるヨルドに、サイロは決死の覚悟で挑む事にした。
*****
少し前、東門
「コレでっ!最後っ!……と。」
「ひっ!……みんな……そんな……。」
東門に集まる上位の冒険者達が応戦していたが力及ばず1人づつ吹き飛ばされていった。
今、リプシンの前に味方は誰も居らずオロークが他のオークを下がらせていた為東門の周りには、片腕が粉々に砕かれた者や壁に叩きつけられてめり込んでいる者、蹲ったまま身動き一つ取れない者達しかいなかった。
「んん?おまえさん自体はそんなに強くねぇんだなぁ?ただ…さっきの雑魚ども強化してたの…おまえの魔法か?アレ良いなぁ…アレが有れば忌々しいサイロの野郎をぶっ飛ばせるかもしれねぇ…」
「…こ、来ないで……」
欲しいなぁ…と言いながらゆっくりと獲物を追い詰めるように近づいてくるオロークに完全に怯えて腰が抜け、尻餅をつき眼に涙を浮かべたリプシンが後ずさって逃げる。
「……いや…来なっ!?…あ…。」
「ざーんねん、行き止まりだなぁ?……完全に心を折ったら俺の為にさっきの魔法使うようになるかなぁ?」
リプシンが後ずさって壁に背中がつくと、オロークがその大きな手をリプシンに向けて頭を掴み顔を覗き込む
「まぁ…犯ってみれば分かるか…とりあえずその邪魔なもん脱がすか!」
片手で頭を掴んだままもう片方の手でリプシンのローブや装備を紙のように引き裂いたオローク
一糸纏わぬ姿を晒されたリプシンが両手で必死になって局部を守ろうとすると
「隠すな!隠したらその場でまだ生きてる奴を1人ずつ殺す…」
「…うぅ……」
「そうそう、それで良いんだよ…じゃあ頂きまーす♪」
オロークに脅しをかけられたリプシンが両手をだらんと下げて抵抗の意思を捨てると、オロークがいやらしい顔でニヤニヤしながら金髪の聖女を辱めるために動き出した。
「ごめんなさい…ごめんなさいリバーゼっ!」
オロークの手がリプシンの裸体に触れようとした時、
「おいおい聖女がそんな格好してると痴女と間違われるぜ?」
オロークのリプシンの頭を掴んでいた手を大斧で切り裂き、リプシンの前に立ったリバーゼが、自分の着ていたぼろぼろの上着をリプシン被せて茶化すように言う。
「遅い…ですよ…」
「悪りぃ悪りぃ…ヨルドの奴が遅くてな?あっちで俺も死にかけたんだわ。」
被せられたぼろぼろの上着の中から恨めしそうな目を向けるリプシンに死にかけたと軽く言うリバーゼ
「キサマラ…ゼンイン…ミナゴロシダァァァァ!!!!」
「…そりゃこっちのセリフだクソ野郎…生きて帰れると思うなよ?」
片腕を切り落とされて激昂したオロークが雄叫びを上げるとオークの大群も動き出すが、リプシンを撫でていた手を離したリバーゼが怒りに燃えオロークの数倍はあるオーラを放つとオークの大群は背を向けて逃げ出す。
「ヒトゾクゴトキガァァァァァァッ!」
「テメェはサイロよりも数倍弱ぇよっ!」
怒りに任せて突進するオロークを避けたリバーゼが大斧を一閃すると、オロークの首が宙を舞った。
そして東門の戦いは呆気なく終了した。
東門あふたー
「リバーゼ、良かった……でもみんな……やられて…」
「おい!デブ!いんだろっ!さっさとコイツら治しやがれ!」
「!?リバーゼ…何言って?」
リプシンがオロークが倒れて安心したのか、無事を喜ぶ
しかし多数の犠牲者が出てしまい、手当が遅れれば更に被害が増えるだろう
そんなことを考えていると、リバーゼが急に大声を出す、リプシンが驚いていると、
「り、了解ですぞーー!」
ギルドの問題児、変態、キモい等散々馬鹿にされていたノルアドが何処からか飛び出してきて倒れている人々にポーションをかけていく。
「あ、アレは?」
「あーー…まっ、そういうこった。」
リプシンの疑問にリバーゼはそう言って誤魔化した。
その日エームの街は、大規模なモンスターの襲撃があったにも関わらず死人は1人も居なかった。