ゴブリン最後の日?
続きモノ
書き方ちょいと変えてみました。
物理特化型幼女ロイテスト出陣
ではどうぞ?
その日ゴブリン達の集落は最盛期を迎えていた……
ゲギャ!ゲギャ!ゲギャ!……
広い洞窟の一面を埋め尽くす三千匹、いや五千匹に届くゴブリンが奇声を上げている。
「ワレワレガコノチヲセイスルトキガキタ!コロセ!ウバエ!オカセ!」
ゲギャ!ゲギャーー!!!
一部には上位個体と思われるゴブリンウォーリア、ゴブリンマジシャンの姿も確認できるその一群の視線は立派な剣を掲げて演説する1匹のゴブリンに向けられていた。
ゴブリンロード
上位個体の中でも更に強力な最上位のモンスター
知能が高く、戦闘力も魔力も高く並の軍隊では一体だけで蹂躙される恐ろしい魔物である
推奨討伐ランクS以上(複数パーティー推奨)
と、冒険者ギルドに規定されている災害クラスの魔物が、エームの街のすぐそばの洞窟で同胞に向かってゲキを飛ばしていた。
同胞からの歓声に言い知れぬ昂揚感を味わうゴブリンロード
そこに…
「ゲギャゲギャゲャ!(敵襲だ!)」
「オロカナ、マチヲオソウゼンショウセンダ、ソノテキヲツレテキテ、セイサンナシヲアジアワセテヤロウ。」
ゴブリンロードが敵襲の報告を聞くと手にした剣を洞窟の出口へと向けた、それを見たゴブリンの大群が1体、また1体と洞窟の出口から外に出て行く。
「ゲギャ、ワタシノジダイガハジマル……」
地下に潜んで約30年…大槌を背負った悪魔から逃げ延びてここまで勢力を拡大させた…今ならば物量であの金の髪を持つ悪鬼を倒してこの地域の覇者となれる。
そう考えていた…
ードゴーーン…バチッ…バリバリバリーーーンッ!!ー
ゴブリン軍団が半数程出て行った頃、ゴブリンロードの顔が愉悦に歪む、侵入者が自分の目の前に引き摺り出されてくるのを心待ちにして。
男なら逆さ吊りにして四肢を少しづつ削り落としてやろう……女なら思いつく限りの凌辱を与えて繁殖器として壊れるまで使ってやろうなどと考えていると、外から洞窟内へ轟音と砂埃、そして目の眩むような眩い光が入ってきて、同時に起きた揺れにより思いもよらず膝をつく。
「あら?……ここにもゴブリンさんがいらっしゃいますね…ゴブリンの巣というのは本当にいっぱい居るんですね?……多いです。」
「あれー?昔にお袋と倒した時はこんな数居なかった気がするんだけど……なぁ?お袋……?」
眩い光が落ち着いた時、洞窟の外から中に入ってきたのは、2人の人型生物……1人は、松明の火に照らされ銀に輝く髪を持つ女性…神官?僧侶?だったか昔に捕まえた同じような服の女はいい繁殖器として同胞を量産してくれた。
もう1人は金髪の男…何処かで見たような気がするが、同じような格好の冒険者は幾度となく殺してきたのでそれと勘違いしているのだろう…
ゴブリンロードはその2人を見て舌舐めずりをして捕まえるように指示を出そうと剣を構えると、男の背後から金髪の大槌を背負った少女が現れる。
「イイメスガキタ、ハラミブクロニ………?!マッ…マサカキサマハ!?アノトキノ⁉️」
ゴブリンロードは金髪の少女の事を思い出す…約30年前、ゴブリンジェネラルに率いられ街を襲撃する直前に現れた3人の冒険者
1人は、浮遊する剣を何本も自由自在に操るがっしりしたおよそ魔法使いには見えない魔法使い
もう1人は、ゴブリンと対して背の変わらない小柄な…ゴブリンジェネラルの一撃でかすり傷しか付かない異常な打たれ強さを持った冒険者
そして最後の1人は……
「あれあれ?そこの奥にいるゴブリンくんは昔に私が仕留め損ねたゴブリンくんじゃないかな?……その変に凹んだ兜と鎧、それとその片目に走る一本線はゴラム君の魔剣で付いた傷だよね?」
サラサラとした金髪をたなびかせ、大槌で肩をトントンと叩きながら洞窟に入ってきた……30年前と少しも姿の変わらないロイテストだった。
*****
少し前、エームの街門の外
「取り敢えず!メディナちゃんがはじめてのクエストという事でベテラン冒険者のロイテストさんが見本を見せます!」
「「パチパチパチ…」」
大槌を片手で器用に持ち、もう片方の手の人差し指を立ててメディナとランテルに自信満々で告げるロイテストに、メディナとランテルが、おお〜…と言いながら拍手する。
「先ずは………あっ、ちょうどいいや…こっちに来てね?」
ロイテストが目を瞑り集中して、何かを感じたのか気配の元へと歩き出し少し進んだ木陰で立ち止まるとランテルとメディナに手招きをする。
「アレはこの辺りに生息するちょっとだけ硬いトカゲなんだけど今からロイテストさんが小突いてくるからトドメを……メディナちゃん雷魔法使えたよね?それで仕留めて?」
木陰から先を覗き込むと、鈍く光る灰色の甲殻を持つ巨大なトカゲが大きな猪を食べていた。
ロイテストは行ってきまーす!と、軽いノリでその…民家一軒ほどはありそうなトカゲに近づくと、エイッ!っと気の抜けそうな掛け声と共に手にしたハンマーを振り下ろす。
ードッッゴーーーーーン…ー
「よいしょっと…さぁ!メディナちゃん!とどめを!」
「……お袋…ありゃぁトカゲじゃなくて、ランドドラ…ムグ…」
ロイテストのハンマーを文字通り叩きつけられたトカゲは、全身の甲殻を吹き飛ばされピクピクと
動く瀕死の状態に見える、いい笑顔でメディナに向かいトドメを刺すように促すロイテスト
ランテルが呆れたように何かを訂正しようとするが、ロイテストに口を塞がれてしまい大人しくなる。
「何だかかわいそうですが…御免なさい!」
ロイテストに言われるがまま、メディナは瀕死のトカゲへと右掌を向け渾身の一撃を放つ
ー…ピカッッッッッ!!ー
辺り一面を光が包む…光が晴れた時にロイテストとランテルが見たのは巨大なクレーター、そして右掌からパチパチと雷光を発するメディナ…そして真っ黒に炭化したトカゲの成れの果てだった。
「おかしいですね…あの時と違って溜めは無かったのですが…うーーん、謎ですね?」
クレーターの中心部から少し離れた場所でメディナは、土埃を浴びて少し霞んだ自身の銀髪から砂を落としながら首を傾げて悩んでいた。
こう?こうですかね?と、魔法を放つ練習をしているメディナに冷や汗をかきながら見ていたランテルとロイテストは、
「…あれの真横に俺居たんだよなぁ…よく死ななかったよなぁ…………」
「あはは……さすがにロイテストさんもこれは予想外だったよ………リバー君になんて言おうか…………ん?アレは……」
しみじみと生きていることに感謝しているランテルを他所に、ロイテストが何かを発見して近づく。
「…ゴブリンの巣だね…結構大きそうだけど…うわっ、黒焦げのゴブリン大量生産してる…まだ居そうだけど……この数は…」
ロイテストが近づくと、入り口付近はメディナの雷魔法で真っ黒に焼け焦げ、その周りに大量のゴブリンの死体が散乱していた、見るからに死体だけで100体は超えていそうだったがこの2人なら大丈夫かな?と、考えたロイテストが、
「ランテル君、メディナちゃん、2人とも準備はいいかな?これからが本番のゴブリン狩りツアーだよ?」
と、良い笑顔で言うとメディナがクレーターからロイテストの方に歩いてきて、
「うわぁ…コレ私がやったんですよね…いくらゴブリンがモンスターだからと言っても…ごめんなさい。」
「ひゃー…こりゃすげぇ…ってかお袋、この数はヤバくないか明らかに大規模な集団化してるんじゃ……」
メディナは自分のやらかした凄惨な光景を目の当たりにして罪悪感から手を合わせて祈りを捧げ、ランテルはゴブリンの規模を見て軍の管轄じゃないかな?とロイテストに確認を入れる。
「大丈夫大丈夫!ロイテストさんはベテランさんだから何かあったらこの辺りの地形ごと片付けてあげるから♪」
そして…冒頭に至る。
*****
昔?あぁ…そういやオーク狩り初体験の時にもゴブリンの集団を当時まだ現役だったゴラムとロイテストが殲滅してたなぁ…あーー…そういやあの時の鎧着込んだゴブリンの一撃は痛かったなぁ…お袋に小突かれた時と同じくらいの痛みだったもんなぁ……。
などとランテルが回想していると、ゴブリンロードが部下に指示を出してロイテストに魔法攻撃を集中させる。
約30年前の戦いでロイテストは、魔法攻撃は普通に通って怪我をしていた筈、その為に魔法攻撃部隊を組織したのだから…炎、氷、土、風、闇と無数の魔法がロイテスト達に命中する。
「…ククク、コレデウレイハナクナッタ、シタイをミセシメニカカゲテヒトドモノマチヲジュウリンシテヤル。」
魔法が壁や地面にも当たり洞窟内に砂埃が蔓延していたが、ゴブリンロードは勝利を確信して生きていたら存分に恨みを晴らしてやろうと考えていた。
しかし……
「ゲホッ、ケホッ!…何ですか突然、流石に私も怒りましたよ………慈悲は与えません!」
視界が晴れてきた時にゴブリンロードをはじめとする多くのゴブリンが見たのは埃まみれの銀の精霊と驚愕の表情でその精霊を見つめるランテルとロイテスト
3人の前にはバチバチと荒々しい光と音を立てる光の壁がそびえ立ち、その壁の背後で銀の精霊がこちらに右手をを向ける動作
「…いきますよ?…レールガン…発射ぁぁっっ!!」
*****
同時刻 エームの街検問所
「おーい、ロイテストの姐御が外行ったから何か騒ぎがあると思うぞ?」
「あぁ、さっきランテルとすっげぇ綺麗な姉ちゃん連れてゴブリン狩り体験のツアーしてくるって言ってたな?ついでにあの辺りに出たランドドラゴン狩ってきてくれねぇかな…来週討伐隊組んで行くんだろ?」
めんどくさいからなぁ…と検問所の衛兵が軽く愚痴を言っていると、
「お前ら……いくら姐さんが強くても一応一市民だからな?まだ現役冒険者だと!?わっ!!……何だ?何があった!!」
メディナ達の対応をしたアサゲが愚痴を言っている兵士に釘を刺していると、大きな揺れと地上から空へ向けて一筋の巨大な閃光が奔り、光の一部が門の外れにある砦の屋根の部分を消失させた。
「おいおいおい、姐御魔法は使えないんだったよな?…………じゃあアレは何だ?明らかにヤバいやつだろ……」
「ボーッとすんな!とりあえず完全装備!第一小隊が先行して偵察!その他は最大レベルで防衛待機!急げ!何かあってからじゃ遅いぞ!」
愚痴を言っていた兵士が呟くのと同時に、警備責任者のアサゲは指示を飛ばし、自身も急いでフル装備を取りに向かった。
「冒険者ギルドのリバーゼにも通達しとけ!何が起こるか分からない…」
メディナが放った魔法はエームの街を1発で大混乱に陥れた。
*****
「いやー、まさかゴブリンがこんなに魔法使いを準備しているとは予想外だったよ…メディナちゃん居なかったらロイテストさんちょっとやばかったかもね?」
「俺もお袋も物理特化だから魔法はそこまで強くないもんな…ありがとうございますメディナさん、お陰で命拾いしました。」
レールガンという名の極太レーザーを放ったメディナ
生き残った僅かなゴブリンを、ロイテストとランテルが倒し終わると感謝を述べる。
「いえ、そんな…やり過ぎてしまったようですが……アレ、大丈夫ですよね?」
謙遜しながらメディナが指差す方向に有るのはレールガンが撃ち抜いた洞窟の先、街の外れにある砦……その頂上の一部が抉り取られ、白煙を上げている。
「だ、大丈夫じゃないかな?…ロイテストさんも昔はよく城壁とか門とか橋とか壊しちゃったし?」
「お袋が何か壊すたびに俺、学校でみんなに文句言われたんだよなぁ…大人は感謝してたけど子供はモンスターの脅威なんて分からなかったしなぁ……」
「えっ!?聞いてないよ?」、「だって言ったらお袋本気で凹むし…」と、親子の会話をメディナが大人しく見ていると外の新しい気配に気がつく
「だれですか!」
メディナが勢いよく振り返るとそこには…
「あー……無事みたいだから状況を聞かせて欲しいんだが…?」
完全装備の兵士が4名、そのうちの1人は警備責任者のアサゲだった。
「姐御が無事みたいだから良いんだが…早くしないと街が大混乱になっちまうから、あの2人止めてもらえねぇかな?」
そう言ってため息を吐いたアサゲの視線の先には素手で揉み合う親子喧嘩が映っていた。
「だいたいお袋が!……」
「ランテル君だって!おかあさんに内緒でベッドの下にエッチな本を……」
「ばっ!バカな!絶対に見つからない……」
「全部銀髪お姉さん系だったからメディ……」
「止めろ!それ以上は……」
拳を振るえば空気を切り裂きパンッという音が時折聴こえ……
蹴りはブゥンッと唸り、壁が風圧で削れ…
「アレを止めろと?」
メディナを含めた5人は止めることを諦め、自然に収まるのを待つことにした。
文字数増えた?
気のせいですよ…
ではまた次回、